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November 25, 2008

"Do Sports Fans Really Value Uncertainty of Outcome? Evidence from the English Premier League"

Buraimo, Babatunde and Rob Simmons (2008). "Do Sports Fans Really Value Uncertainty of Outcome? Evidence from the English Premier League." International Journal of Sports Finance 2008, 3, pp.146-155.

要旨:
After controlling for a number of plausible influences on matchday attendance in the English Premier League, and with appropriate recognition of the censoring problem in stadium capacities, we find clear evidence that an increase in uncertainty of outcome is associated with reduced gate attendance. The conventional uncertainty of outcome hypothesis proposes precisely the opposite effect. We interpret this as suggesting that fans at EPL games, who are predominantly supporters of the home team, prefer to see their team play a much inferior team (and beat that team) rather than attend a game that is predicted to be close in score. Essentially, home fans prefer to see their team win rather than watch a draw or see the home team defeated.

スポーツの面白さは何で決まるのか?なんて人によってちがうじゃん、というのが一般的な考え方だろうが、プロスポーツの経営者や投資家ともなればそうはいかない。プロスポーツは映画や演劇と同じエンタテインメントビジネスであり、広告宣伝の一環としてコストセンター扱いしてくれるスポンサーがいれば別だが、そうでなければ一般の企業と同様、赤字を垂れ流し続けては存続できない。

日本ではまだまだのようだが、こういう方面の研究は海外ではけっこう進んでいたりする。いろいろなアプローチがあろうが、最もダイレクトなのは、ここに挙げた論文のように、観客動員数で計測するもの。ここではイングランドのプレミアリーグについて、「強さが均衡すると動員数が増えるか」を検証している。

これがスポーツビジネスにとっていかに重要であるかはいうまでもなかろう。たとえば日本のプロ野球にはドラフト制度というのがあるが、これはもちろん、有力選手が一部球団に集まることによって球団間で強さの差ができてしまうのを防ぐためのものだ。その裏には当然、観客動員数に関する考慮がある。アメリカのメジャーリーグで球団収入のプール制があるのも似た理由。つまり、この問題の帰趨によっては、プロスポーツ団体の運営に大きな影響がありうるということになる。

この点に関する仮説はおおまかにいって2通りだろう。1つは「強さが均衡したほうが面白いから観客動員数が増える」("uncertainty of outcome hypothesis"というらしい)、もう1つは「応援するチームが強いほうが観客動員数が増える」だ。それぞれちがう側面を見ているから、どちらもそれなりの説得力がある。じゃあ実態はどうなのよというわけだが、本論文は、プレミアリーグの場合、応援するチームが同じくらいの強さのチームと対戦するときより、弱いチームと対戦するときのほうが観客動員数が多い、と報告している。細かいところは原論文にあたっていただきたいが、それなりにいろいろな条件を考慮してはいて、素人がすぐさま思いつきそうな「とはいってもよーこーゆー要素もあるんじゃねーかー」的突っ込みには一応対処してあるようだ。

とはいえ、これが一般的な傾向というわけでもなさそう。というのも、本論文で紹介している先行研究の結果は分かれているからだ。要するに、試合結果に関して予想される不確実性が増すと当該スポーツへの需要が増えるとするものも、影響ないとするものも、減るとするものもあるということ。もちろん「不確実性」の定義も計測方法もいろいろあるので直接比較できないものが多いようだが、ともあれ結論としていろいろあることにはちがいない。軽く書いとくと、MLBとNBAについては、不確実性が高いほうが動員数が多いとする最近の研究があり、EPLについては本論文で逆の結果が示されたということになる。

ちょっと面白いのは、動員数と「ホームのチームが勝つ確率」との関係で、U字型になるらしい。要するに、ファンは応援するチームが勝つ確率が高いゲームのときと、勝つ確率が低いゲームのときに来場しやすいということ。応援するチームが強いときはいいとして、弱いときも応援に行くってのが面白い。著者はこれを「ダビデvsゴリアテ効果」と呼んでいる。日本だと「阪神効果」かなと思っていたが、今年は強かったのでこれは使えないね。まあ「判官びいき」ということだな。

というわけなので、これをもってプロスポーツ全体に一般化した話をすることもできないし、国ごとにちがうかもしれないので、ひとことではいえないことになる。つまりは、まだ研究が必要ということ。本論文の参照論文リストをみると、それほどたくさん研究者がいるようでもないんだが、それでも論文はずいぶん出てきているようだ。日本ではどうなんだろう?このあたりの研究っていうのはなされてるんだろうか?

ちなみにこのジャーナル、一般の図書館にはなかなかないかもしれないが、電子的に買うこともできる(こちら)。


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