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「ナンバーワン」でも「オンリーワン」でもない学生の皆さんへ伝えたい3つのこと

最近の大学生の就職活動は3年生の時点で始まるらしい。私の職場は新設3年目なので、最上級生が3年生。いまあちこちの就職セミナーやら説明会やらに飛び回っていて、欠席がけっこう目立ったりする。大きな転換点を前にすれば悩みがつきないのはしかたがないことで、せいぜい悩め若人よ、と笑い飛ばしたいところだが、そうもいっていられない。最もポピュラーなのは「自分の“売り”はどこか?」という点だ。思えば大学時代さしたることもなくすごしてしまった、何かすごい才能やら特技やらがあるわけでもない、これでは競争に勝てるはずなどないではないか、といった感じか。気持ちはよーくわかる。自分自身が今でもよく同じような気持ちになるからだが、とはいえ年の功というやつもあって、そういう焦りとの折り合いのつけ方も多少は学んだ。

そんなあたりを、奔走している学生の皆さんの気休めになるかどうかわからないが、ちょっとだけ書いてみる。似たようなことを前にも書いたような気がするのだが、まあ続編だとでも思っていただければ。

(1)世の中のほとんどの人は「ナンバーワン」でも「オンリーワン」でもない
いうまでもないことだが、確認しておきたい。定義のしかたにもよるが、一般的な意味において、世の中に、「ナンバーワン」ないし「オンリーワン」の能力を持っているような人は、ほとんどいない。野球選手がすべてイチローや松坂というわけではないし、野球選手がすべてプロ並みの水準であるわけでもない。

「誰もが特別なオンリーワン」なんていう歌もあって、一般的な意味ではそれも否定はしないが(あんまり好きじゃないけど)、少なくとも仕事をする場において求められる能力に関していえば、「オンリーワン」というのは、それらの一般的な能力に関する局所的な「ナンバーワン」ぐらいにみたほうが適切かと思う。極端な話、仮に「細菌と話す」なんていう能力を持っている人がいたとしたら、これは「オンリーワン」にはちがいないだろうが、一般的な企業でそうした能力を生かす場はほとんどなかろうから、それ自体では評価もされまい。その意味で、少しだけ「安心」していいのではないか。自分が他人と比べて自慢できるものが何もないからといって、自分はだめだと決め付けてしまう必要はない。たいていの人がさして変わらない状況のはずだからだ。

もちろん、「凡人」の間にも大きな差がある。就職活動に際して、大学名や専攻内容、成績、サークルやその他の活動などで、なんらか「語るべき実績」があればいいが、そういうものがない、あるいはあってもわざわざ語るほどのものではないという場合、いったい何をアピールすればいいのかと途方にくれてしまうかもしれない。本当に何もない場合はしかたないが(そういう場合は、就職マニュアル本によくある「ものごとをポジティブに話すやり方」が必要だろう)、何らかあるのであれば、たいしたものではなくても、それをふつうに話せばいいと思う。理由は簡単で、そういう人はたくさんいるからだ。採用担当者自身も就職のときは同じように悩んでいたかもしれないし、そうでなくても慣れたもので「はいはい」と受け流してくれるだろう。


(2)多くの企業は「ナンバーワン」や「オンリーワン」ばかりを求めているわけではない
企業は、優秀な人材を求めている。しかし、だからといって「ナンバーワン」や「オンリーワン」ばかりを探しているわけではない。職場にはたくさんの人が必要で、求められる能力もさまざまだ。スポーツのチームが四番打者やエースストライカーだけで成り立つのではないように、企業にもさまざまな人材がいる。その中には、「自分には何の取り柄もない」と悩みながら就職した人たちも数多くいるはずだ。彼らはいまや会社をリードする人になっているかもしれないし、足を引っぱる人になっているかもしれないが、多くはごくふつうに、それぞれの領域で企業活動の一翼を担い、企業を支える人材になっているだろう。会社の仕事の中にはとてつもなく難しいものもあるが、多くはそこそこの能力があればふつうにこなすことができるようになっている。会社で働く大半の人は「平凡」な能力しか持ち合わせないから、そうでなければ会社の仕事は回っていかない。

一応企業にも勤めた経験から考えると、そうした世の中の大半の企業がほしいのは、ずば抜けた能力の持ち主より、まずは「ふつうにきちんと仕事をしてくれる人」、「上司の指示をまじめに聞いてくれる人」、そして何より「職場の仲間として受け入れられる人」ではなかろうか。学生の皆さんには想像もつかないかもしれないが、企業で活躍している人たちも皆、かつて学生だった。おそらくそのうち少なからぬ割合の人たちは、「自分にはさしたる取り柄もない」と悩んでいたはずだし、職場の先輩諸氏(※誤字訂正)から「頼りない」「凡庸」「こんなんで大丈夫なのか」と思われていたのではないかと思う。企業の面接担当者だって、そのころの自らの姿を思い出せるなら、学生にそんな高い水準を求めたりすることなどできないはずだ。

もちろん、人気の高い企業には、平均してレベルの高い(より企業にとって望ましい属性を備えた)人が集まるだろうから、学生間の競争も厳しくなる。大学生の人気ランキング常連の企業群をはじめ、より規模の大きな企業、業界順位が上の企業、初任給の高い企業、旧財閥系企業、マスメディアでしばしば取り上げられる企業などでは、自然と採用枠をはるかに上回る人数の学生が押し寄せることになる。結果として、そのうちの多くの学生は、「遺憾ながら貴意に添いかねる結果となりました」(学部卒の採用でこの文言を目にすることは少ないかもしれないが、そういう文書を山ほど受け取った身にとってはほんとに身震いするぐらいこわいんだよこのことば)という結果になる。だからもちろん、学生時代をのんべんだらりと過ごすよりは、いろいろやったほうがいいと思う。いくら面接で口だけ「こつこつやる性格です」といってみたところで、それをそのまま真に受けるほど採用担当者も甘くはない。

でも、忘れないでほしい。企業の間にも人材の獲得に関する競争があるのだ。プロ野球選手がイチローや松坂ばかりではないように、企業も電通やフジテレビばかりではない。日本には企業がだいたい150万社ぐらいあるそうだが、そのうち99%は中小企業だ(雇用ベースだと7割ぐらいらしい)し、東証の上場企業に至っては、マザーズまで入れても全部でたったの約2400社しかない。高望みできない状況の学生が多いのと同じ意味で、高望みできる状況にない企業もたくさんある。最近は景気が悪くなってきてるが、定年退職だってあるし、人を補充しないわけにはいかない。きちんと毎朝定時に出社して、いわれたことをきちんとこなして、職場の同僚とうまくやっていける人なら、「ぜひ来てください」っていう企業が1社くらいあってもおかしくないのではないか。


(3)時間をかければ、「ナンバーワン」になれるかどうかはわからないが、「オンリーワン」になることはたぶんできる
「ナンバーワン」や「オンリーワン」の能力を持つことは難しくても、職場に溶け込んでちゃんと仕事をしていれば、「オンリーワン」の存在になることはできる。人は、機械の部品ではない。人の価値は、能力だけで決まるのではない。職場は1つのチームでありコミュニティでもある。そこで働く中で培われる人間関係は、企業にとってその人の価値を示す重要なファクターだ。そうした人間関係はその人固有のものだから、時間がたつうちに、その人はチームの中で、自然と「オンリーワン」の存在になっていくだろう。

なんだそんなことあたりまえじゃないかという人もいるかもしれない。そんなのじゃ意味ないとかいう人もいるかもしれない。希望する企業・業界で、希望する仕事をして、自己実現したい。そうでなきゃ働きたくないと。あるいは、世間的に自慢できる企業でなんとなくかっこいい仕事をして、高い給料をもらいたいと。要するに、「普通」じゃいやってわけだ。これもいいたいことはよくわかる。

でもね、と思う。なんで「特別」「自分だけ」じゃなきゃいけないんだろう。「普通」「みんなと同じ」でいいじゃないの。「オンリーワン」志向もそうだが、なんか皆、「特別じゃなきゃ」が強迫観念みたいになってるような気がする。繰り返すが、世の中「特別」な人なんて、実際のところほとんどいないんだよ?よほどの人なら別だが、ほとんどの人にとって、「特別さ」によりどころを求めるのって、かなり不毛だと思う。

いま会社で働いている人たちの多くは「ナンバーワン」でもなければ「オンリーワン」でもなくて、大学時代で自慢できることなど何もなかったごく「普通」の人たちのはずだが、それぞれふつうに働いて、あくせくしたりのんびりしたり、怒ったり焦ったり、しょげかえったり冷や汗かいたりしながら、それなりに「活躍」してる。その一方で、一部には学生時代にいい成績をとったり難しい資格を取ったり、大きなイベントを運営したりアルバイトしたり、サークルのリーダーだったりスポーツでいい成績を挙げたりといった大きな実績のある人もいて、その人たちもやっぱりふつうに働いて、あくせくしたりのんびりしたり、怒ったり焦ったり、しょげかえったり冷や汗かいたりしながら、それなりに「活躍」してる。働き始めて5年もすれば、その人がどこの大学の出で、大学時代どんなことをやったかなんてことは、ほとんど誰も話題にしなくなる。その程度のことだ。

もちろん、就職活動時に、大学時代に何をやったかが問われないというわけじゃないから、その時点で差がつくだろうことは否定できない。特に多くの学生が殺到する人気企業や、そこまでいかなくても条件のいい企業なんかの場合は、自分と同じような志願者が集まるだろうから、それなりの競争は避けられない。特に最近は景気も悪くなってるからなおさらだ。そこで競争に勝てなければ、たとえ正社員として就職できたとしても、それまでまったく名前も知らなかった企業、関心のなかった企業に「もぐりこむ」のがやっとかもしれない。

でも考えてみれば、そもそも学生が名前を知ってる企業、「入社したい」と思う企業なんて、ほんの一部だ。そのほかにもすぐれた企業、すごい企業、ユニークな企業はたくさんある。それに、実際に働いて楽しいかどうかは、企業そのものよりも、具体的な仕事や現場での人間関係なんかで決まってくる部分が大きい。もちろん全員じゃないだろうが、就職は不本意だったけど今ではよかったと思ってるって人は、かなりいるんじゃないかな。だから、学生の狭い視野で就職活動の成功や失敗を語るのって、たぶん、よくある言い方でいえば、文字通り「10年早い」。

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仮に就職活動がうまくいかなかったとしても、そこですべてが終わるわけではない。過去は変えられないが、未来は変えられる。どうしても不満なら、「次」を探せばいい。最近は、転職も以前よりずいぶんしやすくなった。ただし、すぐ転職したくなるほどいやな職場でも、まじめに働いていたほうがいい。転職の面接でも、必ず聞かれるよ。「前の会社でどんな仕事をしていましたか?」って。学生を採用する場合と比べて、転職者の採用の場合には、「可能性」よりも「実績」に着目する部分が大きいはず。

つらい仕事、めんどくさい仕事、つまらない仕事があったとしても、「経験値」を上げて次のステージに移るための「クエスト」と考えてみたらいい。そうやって仕事をきちんとしていれば、より大きな仕事を任せられるチャンスがくるかもしれない。会社で活躍している人の中には、そうやってチャンスをつかんだ人がたくさんいるはずだ。「あの人は○大卒だから」「大学時代に国体出たんだって」みたいな過去の栄光だけで生き残れるわけがない。

就職活動をしているくらいの年齢のほとんどの大学生にとって、大学受験の苦労はもう笑い話になっているだろう。同じような意味で、就職活動のあれやこれやも、入社して何年かたてば、居酒屋の与太話のネタにしかならないくらいの「笑い話」になる。たぶん。そうなる日を信じて、今はがんばってもらいたい。健闘を祈る。


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Comments

あなたの言う言葉にしたがいます

Posted by: kend | November 16, 2008 at 12:31 PM

kendさん
ご賛同いただけるならうれしいですが、参考にする、程度がいいと思いますよ。大人なら最終判断は自分でするものです。

Posted by: 山口 浩 | November 16, 2008 at 08:10 PM

人事採用に関わる身として、とてもためになる記事でした。

Posted by: YK | November 18, 2008 at 02:26 PM

YKさん、コメントありがとうございます。
採用というのは、企業の方にとっても大変な業務だろうと思います。いってみればハイリスクの投資ですよね。ぜひがんばってください。で、私のところのゼミ生の採用なんかもよろしくお願いし・・

Posted by: 山口 浩 | November 19, 2008 at 04:45 PM

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