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なあんだ「裁判員候補に選ばれちゃったらどうしよう」なんて悩まなくていいんだ

手短に。裁判員制度のスタートとなる2009年5月が次第に迫ってきているわけだが、国民の間では、期待というよりむしろ、不満や不安が高まってきているようにみえる。ある人がこの制度について「裁判を早く終わらせて裁判官の仕事を軽減するために、国民を人質にとるしくみ」と評していたが、それが適切な評価かどうかはともかく、正直なところ、「なんでそんなことしなきゃいけないの」というあたりが平均的な評価ではなかろうか。

先日いっせいに発送された裁判員候補者名簿記載通知書に対しても、辞退希望などを伝える調査票が、送られた数の約1/3も返送されてきたらしい。裁判員の辞退手続きを代行するという詐欺まで登場したとかで、そんなに皆さんやりたくないのかとむしろ面白く思ったりする。

実際に候補者通知が自分のところに来たかどうかは念のため公表しない(通知が来たことを公表するのは法的にまずいが、来ていないことを公表するのはいいのではないかと個人的には思う。ただ専門家じゃないから自信はないし、なんか言われたらいやなので一応、ね)のだが、個人的には、実はそれほど心配していない。

裁判員選任の流れをみると、通知が届いた後、裁判所に呼ばれて選任手続きが行われるのだが、呼ばれるのはくじで選ばれた人だけ。かつ、裁判所に呼ばれても、そこでいろいろ質問とかされて、そのうえで実際に裁判員になる人が選ばれるわけだから、候補者になったといっても、すぐに裁判員にさせられるわけではないし、候補者全員がなるわけでもないのだ。まあ、逆にいえば、数人を選ぶために数十人が巻き込まれるという意味ではた迷惑ではあるのだが。

候補者通知の段階で辞退できる条件というのはなかなか難しそうで、自分の場合あてはまるものがあるのかよくわからない。だから選任手続きの日に呼ばれてしまったら、一度は行かなければならないということになろう。

しかし、まだ選任手続きがある。裁判官が選任手続きでチェックするのは、「不公平な裁判をするおそれ」の有無だ。これまたあいまいな表現だが、それなりの基準というのはあるようだ。最高裁判所刑事規則制定諮問委員会なる委員会があって、その2007年5月23日の会合で議論されてる(議事録)のだが、当日の配布資料に、こんなのがある。

参考資料4「不公平な裁判をするおそれに関する質問の基本的考え方
参考資料5「不公平な裁判をするおそれに関する質問の具体的イメージ

参考資料4のほうでは、「不公平な裁判をするおそれ」がどんな場合かについて、「①当事者と特別の関係にある,②訴訟手続外ですでに事件につき一定の判断を形成している,③法律に従った判断をすることが困難である場合が該当すると考えられる」としている。「特別の関係」はいわゆる親族であるとか直接の利害関係があるとかいうことなので、これは難しいが、「すでに一定の判断を形成」と「法律に従った判断をすることが困難」については、けっこう範囲が広そう。もちろん虚偽の回答をすると罰せられるのだが、本当にそうなら胸を張って答えればいい。

裁判官が具体的にどのようにこれを確かめていくかについては、資料5にある。たとえばこんな質問をするらしい。

今回の事件のことを報道などを通じて知っていますか。
① 知らない。
② ある程度知っている。
③ 詳しく知っている。

報道等ですでに予見をもっているかどうかを聞く質問らしい。で、

第1の3で③と回答した場合→「報道などに左右されることなく,法廷で見たり聞いたりした証拠だけに基づいて判断できますか。」と質問し,その回答によって不公平な裁判をするおそれの有無を判断する(なお,状況に応じ,適宜「どの程度知っているか」,「この事件についてどのように考えているか」,といった質問を交えることも考えられる。)。

のだそうだ。つまり、非常に詳しく、かつ偏った意見を「たまたま」すでに形成してしまった人というのは、裁判官としては選びにくかろう、と思うのだな。

このほか、「事件類型に応じて追加する質問」というのもあるらしい。たとえば、警察官等の捜査官証人が予定されている事件。警察官を信用していない人が裁判員になったりすると、不公平な裁判をするおそれがあるというわけで、それをチェックするのだそうだ。具体的には、当事者の求めがある場合、

「あなたには,警察等の捜査は特に信用できると思うような事情,あるいは逆に,特に信用できないと思うような事情がありますか。」

なんてことを聞くらしい。警察官のいうことなど信用できるか!というタイプの人は、裁判官としても比較的選びにくいのではないかと想像する。あと、死刑の適用が問題となる事件。

「起訴されている○○罪」について法律は,『死刑又は無期若しくは○年以上の懲役に処する』と定めています。今回の事件で有罪とされた場合は,この法律で定まっている刑を前提に量刑を判断できますか。」

なんて聞くらしい。で、もし異論が出た場合にはさらに、


「今回の事件の裁判で,証拠によってどのような事実が明らかになったとしても,評議においては,絶対に死刑を選択しないと決めていますか。」

などと聞くのだそうだ。死刑についての考え方も完全に本人の信念の問題だからねぇ。裁判所の意に沿わない信念の持ち主を裁判員に選ぶのは、裁判官としてもやりづらいだろうからねぇ。

念のためくりかえしとくが、これは「こう答えれば裁判員にならなくてすむ」といっているのではない。第一、虚偽の回答をすると罰則があるからね。ただ、もし本当にそういう信念を持っているのであれば、逆にその信念を曲げて裁判官の意に沿うような回答をするのも違法なわけで、そういうことはしちゃいけないよねぇ。そういう場合なら、結果として裁判員に選ばれる確率は比較的低くなるだろうねぇ、などと個人的に思っているだけだ。

とりあえず今は、実際の現場でどんなことが起きるのか、「興味深く」見守っているところ。戦前の日本で行われていた陪審制は、15年ほどで停止された。はてさて。

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