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内定取り消しとただ働きについてひとことだけ

手短に。なんだか知らないが、「ただ働き」論議が盛り上がってるらしい。といってもいくつか見た、という程度なんだけど。どうも震源地はこちらの方らしいのだが、その中の「ただ働き」部分に対して小飼弾さんがかみついて、で、それをさらに楠正憲さんがあさっての方向に広げてて。いやそもそもこの議論はただ働きが主眼なんじゃなくて、内定切りをどう考えるかって話だったんだよね?

このお2人方が「ただ働き」にこれだけ反応したのは、「ある種」の仕事にはなんらかのかたちで「ただ働き」がそれなりに重要な役割を果たすからなんだろう。まあこのお2人はどちらもかなり「特殊」な例なので、一般の方にはあまり参考にならないだろうが、私程度の人間でもただ働きをすることはあって、それが重要な役割を果たすこともあったりするから、けっこう一般的なことかと思う。

それはそれとして、問題は内定切り。経営不振で内定を撤回された学生に対して、「そんなに入社したきゃただ働きしろ」という議論は、どうみても乱暴だ。本人がそうしたいというならすればいいが、そもそもそういうスジの問題じゃない。じゃあ現役の全社員に向かって「経営環境が悪化したからただ働きしろ」と言えるのか?と考えてみればいい。そのうえ「糞学生ザマー」とはいったい。たとえ本人の不注意ゆえであったとしても、途方に暮れている見ず知らずの人に「ザマー」と言い放つ神経は、私には理解できない。当該会社の方も含め、圧倒的多数の会社員の皆さんも、そうは言わないはずだ。

元記事で引用されてた新聞記事は、NPO法人労働相談センターの理事長の言を引いて「内定の取り消しは解雇と同じ。企業が責任を取るべきだ」と結んでいる。最後にもってきたということは、記者も同様の考えなんだろう。

私はというと、ちょっと前に書いたので繰り返さないが、内定切りそのものに対して必ずしも反対ではない。新卒社員を雇うということは、単に給与を支払うというだけではなく、教育訓練のための有形無形のコストを負担するということでもある。よほど優秀な学生でない限り、たとえただ働きでも、新卒社員を入れることにはコストが伴うのだ。経営に余裕のない多くのベンチャー企業が新卒を採用したがらないのと同様、経営に余裕のない会社にとってもそうした「新卒のコスト」は重いはず。具体的な事情はわからないが、そのあたりも含め、むしろ責任(学生に対してだけじゃなく、現役社員に対しても負ってる責任ね)を負いきれないがゆえに内定を取り消したのではなかろうか。

企業というものを知らない学生の中にはいろいろ言う者もいるだろう。それは無理からぬことで、私は「ザマー」などとは微塵も思わない。なんとかしてくれといいたい気持ちもわかる。ただ一方で、ここで内定取り消しが撤回されて雇用されたら果たしてそれはめでたしめでたしなのか?とも思う。記事に取り上げられた学生も、そのあたりがわかっているからこそ、「雇用継続は求めず、現在は別の業界で就職活動を行っている」のだろう。むしろ理解していないのは、この元記事を書いた記者のほうだ。会社の経営が危なくなるなんて事態を想像したことがないんじゃないだろうか(他人事じゃないだろうに)。

その記事に釣られて「ザマー」とか書いたりするのも同じ類なのではないかな。そもそも、新卒でも20年目のベテランでも、優秀な社員はごく一部で、大半の社員は平凡なのだ。中には平凡な学生よりも「実力」で劣る社員だっているだろう(経験上言いきってしまうと、ちょっと大きな会社ならたいていいる)。そういう人たちを含めた現役の社員を法で手厚く保護した結果として(それが必ずしも悪いとはいわないが、もうちょっと柔軟でもいいんじゃないかと思うぞ)、学生が雇用の機会を奪われたかもしれないという点に対して無自覚なのであれば、それはちと痛すぎる。

※追記
「元記事を書いた記者」がわかってないのではないか、と書いたのだが、ちょっと思い直した。ひょっとしたら、記者はわかっていたのかもしれない。「雇用継続は求めず、現在は別の業界で就職活動を行っている」ことに触れているのは、そのことを婉曲にあらわしたものである可能性がある。もしそうだとすれば、なぜはっきり書かなかったのか?「炎上」を避けるため、という解釈もありうる。新聞読者に少なからずいるであろう「企業憎し」一派の人たちに「誤解」を与えないように、と。考えてみれば、「ザマー」派(というのがあるとすると)というのは、「企業憎し」派の正反対のようで、実は背中合わせの対の存在なわけで、片方に気を使ったがゆえに反対のほうが「釣れちゃった」ということなのかな。

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Comments

技術系で、ただ働きがいいなら
http://www.kyuujin1.com/volunteer.html
こんな会社もありますが、
ただ働きがいいといっても、法律が許さないし、普通の会社なら、ビビッて、逃げ出すでしょう。
その問題がクリアできたとしても、今の複雑な経済情勢だったら、不当でピンハネする中間業者に利用されるのが落ちなんじゃないかと思います。
したがって、新人がただ働きしたとしても、エンドユーザさんには何のメリットもないし、経済循環すら起きない。逆に不正が蔓延する恐れもある。弱気になって変な方向に突っ走るのは逆に危ない。

最近、ポール・クルーグマンの「格差は作られた」を読んでるけど、アメリカと日本で同じやり方が通用するかわからないけど、クルーグマンは、ニューディール政策を行い、アメリカを福祉国家に移行することを提案している。日本もそろそろ福祉国家を目指すべきなんでは、
そうすれば生活のためにいやいや働く人は減って、ただでも働きたい人だけ働くようになって、景気がよくなるのではないかと思いますが。


Posted by: 水野 立郎 | December 18, 2008 at 09:07 AM

水野 立郎さん、コメントありがとうございます。
「無給」というのは、もし本気でやるならインターンシップのようなかたちをとるのでしょうから、法律的にどうこうという話にはならないと思いますが、いずれにせよそれでは問題の解決にはなりません。学生は「有給」の仕事を探しているのですから。
経済政策は「○か×か」でくくられるような単純なものではありません。どんな「福祉国家」でも競争の要素はあるでしょうし、どんな「自由主義国家」でもなんらか福祉の要素はあります。福祉政策を拡充すべき領域があるというご意見であれば総論として賛同しますが、要は具体論ですよね。福祉を拡充すると必ず生じるフリーライダー問題やらモラルハザード問題に対してどのように対処するかも併せて議論する必要があります。現在の経済の姿は、過去の時点で、それより過去の状況に対して反省した結果として生まれたわけですから。

Posted by: 山口 浩 | December 19, 2008 at 12:04 PM

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