« NHK「日曜討論」に飯田泰之さんが出てる話 | Main | 学習ゲームにおける「古くて新しい」1ジャンルの話 »

December 29, 2008

もしストリートビュー撮影車のスケジュールがあらかじめわかっていたら

グーグルマップの新しい機能「ストリートビュー」に対して、主に肖像権やらプライバシー保護やらの観点からあちこちで議論が起きている。グーグル側は公道から撮影すると言ってるが私道にも入り込んでるし(私の家の前も私道だがしっかり撮影されてる。そもそもある道路が私道であるかどうかのチェックなんて本気でするとは思えない)、顔をぼかしたって服装やら場所やらで個人が特定できる場合は少なからずある。本来、公共の場所を撮影して公開する分には法的に問題ないし実際にも問題にならない場合が多かろうが、それを「点」ではなく「線」や「面」で全国的に行うと「量」ではなく「質」の問題となるから話は別という主張もあって、それなりに説得力がある。とはいえ、それ自体違法というわけでもなさそうだし(違法だという主張もあるようだが素人目にはあまり説得力を感じられない)、これによって恩恵を受ける場合もあるし、将来的に新たな可能性もあろうから、単に否定すればいいというものでもないと思う。

どうすりゃいいんだろうねなんてことをつらつらとない知恵絞って考えていたら、いつもの癖でつい不真面目な方向に妄想が。

もし、もしストリートビューの撮影車のスケジュールがあらかじめわかっていたら、どんなことが起きるだろうか。

想像するに、ストリートビュー(以下「SV」)に対する不安とか不満とかいうのは、隠し撮りに対するそれに一番近いのではないか。どこを撮られているかわからない、という不安。いつ来るかわからないから対策をとれないではないか、という不満。もちろん他にもたくさんあるだろうが、ここではこれが最大のものだと仮定してみる。

しかし、SVというサービスは撮影自体が支障なくスムーズに行われることを前提として成り立っている。たとえば「撮影されるすべての場所の管理者から事前に承諾をとれ」というのでは、どうみても事務コスト的に引き合わないし、拒否する地域を丸ごと「不可」にしてしまっては利便性が大きく損なわれる。どこかでバランスをとることはできないものか。

という発想で、もしグーグル側が事前に撮影スケジュールやコースをすべて公開していたとしたらどうだろう、と考えてみたわけだ。正確な時刻までは難しいかもしれないが、たとえば「○月○日は○○市で想定されるルートはこれこれ」ぐらいならできるのではないか。せっかくグーグルマップがあるんだから、そこに示しておけばいい。SVの撮影は、カメラを装着した小型乗用車(プリウスとか)で行われるらしい(参考)から、あらかじめわかっていれば比較的容易に発見できるだろう。何なら七色に塗って「ストリートビュー撮影中」の大きな看板でも載せたらいい。

そうすれば、少なくとも隠し撮りではなくなる。撮られる側も比較的容易に対策がとれるだろうから、肖像権やプライバシーを主張する根拠はなくなりはしないにせよ、少しは弱くなるかもしれない。グーグルとしても、ほとんどコストをかけずに批判を多少だが減らせるというメリットがあるのではないか、と。

というあたりは実は前置きの言い訳。本題は、もしそうなったらどんなことがおきるだろう、という妄想。これはけっこう面白いのではないか、と。

真っ先に考えられるのが、反対運動。SVに反対する人なら、その車が通るスケジュールに合わせて「反対」だの「帰れ」だのといった垂れ幕を掲げたりするぐらいは当然やるだろう。「本気」で撮影妨害する気なら、撮影車の横を背の高いトラックで挟んだり目隠しを立てたバイクで伴走したりぐらいもやるかもしれない。もし行政レベルで本気なら、その当日に突然一帯で大規模な道路工事をやっちゃうという手もあるぞ。

個人レベルでも、その日はカーテンを閉めるとか外に出ないとか、家の前に臨時に目隠しを立てたりとかする人はいるだろう。もう少し気が利いた人なら、架空の風景を描くね。南仏の海岸地帯の絵とか風呂屋ふうに富士山とか。だまし絵みたいにする手もあるぞ。鏡を立てて撮影車と撮影者を撮影させちゃうなんて遊びをする人もいたりして。他にもいろいろ遊んだりできると思うんだな。なんだか急に面白くなってくるではないか。

そもそも、こういうものを嫌う人たちばかりではなかろう。一度やってみれば、今はよく見えないそのあたりも少しは見えてくるんじゃないか、と思ったりするのだな。

まずまちがいなく出てくるだろうと思うのが、撮影車に向かってピースサインを出す小中学生。自転車で伴走しようとする子もいるだろう。マラソン中継のノリだ。テレビ中継とちがって、SV車に撮影されれば、かなり長いことネット上に自分の顔を「残せる」。「仲間うちで威張れる度」は高いではないか。

となると、大人も黙ってはいないはず。SV撮影車に撮影されることによって、ネット上に無料で、許可もいらずに広告を出せるのだ。となれば話は早い。「創業百年の味 ○○まんじゅう」という立て看板、「街道一うまいラーメン屋こちら」みたいな矢印だって簡単。アルバイトを動員して、サンドイッチマンの要領で、看板を持って道端に立たせればいい。某ファストフードチェーンじゃないが、「行列のできる店」を演出してみてもいい。大通りに面していない企業でも、プライバシーを守りたい人の家の庭先を借りて大きな看板を出すことはできるだろう。

地域振興をはかりたい自治体なら、観光名所への案内を町中に設置してみてはどうか。「○○寺あと300m直進」とか。あらかじめSVで見ておけば、現地で道に迷いにくいかもしれない。いっそ「SV上で江戸時代の町並みを再現」なんてやってみても面白いのではないか。町おこしのために「世界一長いちくわ」みたいなものでギネスブックに申請しようとする人々が、その証拠写真にSVを使うことも考えられる。もうちょっと凝ったことがやりたいなら、町ぐるみでSVを使ったオリエンテーリング、なんてどうか。SV上でポイントを作っておいて、それを探していくのだ。ネットとリアルが連動する、まさに21世紀型の遊び。「電脳コイル」に、道順自体が暗号になってるというものがあったが、ああいうのができたら面白い。

自己実現の場にもなる。芸人の志望者が撮影車の前で、一発芸でポーズ、なんてのもありそう。たくさんの人が1枚ずつ絵を持って並んでリアルパラパラマンガ、なんてやっても面白いんじゃないか。インスタレーションとして、路上に作品を並べ、それをSV車に撮影してもらえば、世界中に公開できる。考えてみれば、撮られちゃった人たちが思わぬトラブルに巻き込まれたのも意識してなかったからで、もし最初からスケジュールがわかっていたら、ひょっとして、「SV撮影車の前でキスしたカップルは永遠に結ばれる」みたいな都市伝説に発展して、むしろ待ち望まれる存在になるかもしれない。

要するに、グーグルがSV車のスケジュールを公開すれば、それが前提になって、人々が行動を変える可能性があるのではないかということ。いってみれば「SVO」(Street View Optimization)というわけだ。グーグルとしては道路の日常の姿が撮影できないとご不満かもしれないが、それはしかたあるまい。ネットにSEOがあるように、道路にもSVOが出てくるのはむしろ自然だ。そのくらいは認めてやらないと。

もちろん「ここでも『グーグル様』のいいなりかよ」という不満を持つ人は当然残るだろう。こっちはネットの世界でなくリアルなだけに、影響はより大きいだろうし。

とはいえ、もし撮影スケジュールが公開されていれば、グーグルだけが特権的な立場にとどまることはできない。日本中のたくさんの人々が手に手にカメラを持って撮影コースに集まり、「たまたま」撮影車の通るそのタイミングで順次シャッターを切っていくことだって「起こりうる」のだ。休憩中の姿も、たまたま近くの公道上で写真を撮っている人のカメラに映って「しまう」かもしれない。それを皆がそれぞれ「自らの意思」で、グーグルマップないし別の地図サイト等にアップしていくかもしれない。グーグルが直接個別に抗議すれば、抗議を受けた人は、「プライバシーに配慮」して、顔にぼかしを入れてくれるだろう。

その考え方を押し進めていくと、似たようなことを、グーグル自体に対してやろうとする人が出てくるかもしれない。ちなみにだが、グーグルの日本法人は渋谷のセルリアンタワーにある。このビルの入口付近を外部の公道から撮影する分には、法に触れることもなかろう。たまたまビルに出入りするグーグル社員が映ってしまったとしても、風景の一部としてであれば肖像権の問題にはならない。グーグルがやっているのと基本的には同じことだ。それに、1人が長期間そればかりやってるのはどうかとも思うが、たくさんの人が1人1枚ずつ撮っているのであれば、そもそも問題にすらならない。仮にそれをすべての人が「たまたま」同じサイトにアップしていたとしてもだ。そういう情報をありがたがる人がどのくらいいるのかわからないが、それはSVも同じことだろう。


大きな地図で見る

情報が公開されることで、少なくとも一方的な関係ではなくなる可能性がある。人々の力が集まれば、個々人の力を超えて大きな力になる。それはネットの世界でグーグルが貢献してきたことそのものだ。そもそも「世界のすべての情報をオーガナイズし、それをアクセス可能にする」ことを目標とする会社ではないか。人々がグーグルに関する情報をオーガナイズし、アクセス可能にしようという活動について感謝こそすれ、文句をいうのは筋違いというものだろう。もし内心いやだとしても、SVがより社会に受け入れられるために、考えてみたらいいのではないかな。

いやもちろんネタだけどね。

※追記
悪ノリついでに動画も作ってみた。

|

« NHK「日曜討論」に飯田泰之さんが出てる話 | Main | 学習ゲームにおける「古くて新しい」1ジャンルの話 »

Comments

「SVO」(Street View Optimization)

ヤバいです。最高です。ありがとうございました。

スケジュールがXMLで配信されたら、それを読み込んでSVカーの現在地(計算による予測)を表示するiPhoneアプリをつくりたいと思います。

UIデザインはド○ゴンレーダー風です。

Posted by: hidetox | December 29, 2008 02:20 AM

中の人たちは事前にスケジュールを知り得るみたいな感じですよね。
GSV に向けてプロポーズを掲げたとか、時間を合わせてパーティーを開いたとかなんとか。
そういうのをきちんと公開するだけで、確かに色々と解決できそうです。

Posted by: n-yoshi | December 29, 2008 05:43 PM

コメントありがとうございます。

hidetoxさん
面白いと思う人にはけっこう面白いでしょうねぇ。季節によって車のデザインとか変えたりして。

n-yoshiさん
不満を持つ人はたくさんいるでしょうから、「解決」とまではいかないでしょうが、情報の非対称性を少なくすることで、少しでも受け入れやすくなれば、ということですね。

Posted by: 山口 浩 | December 30, 2008 11:24 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference もしストリートビュー撮影車のスケジュールがあらかじめわかっていたら:

« NHK「日曜討論」に飯田泰之さんが出てる話 | Main | 学習ゲームにおける「古くて新しい」1ジャンルの話 »