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January 06, 2009

AERA「2009年『100人の予言』」をいくつか拾ってみる

AERA2009年1月12日号の特集は「2009年『100人の予言』」。いろいろな分野の人がいろいろな分野について語っていていろいろな意味で面白い。内容は本文をお読みいただくとして、特に面白かった「予言」の見出し部分をいくつかご紹介。ひとことコメントも添えて。

予言じゃないっぽいのもずいぶん混じってるように思うが、まあ気にせず。

「株、不動産の次は会社が安売りされる」
藤田晋 サイバーエージェント社長
うむ。「株」は会社の一部、なんだがな。でもM&Aの好機であるという点には注目。
「正社員 VS. 非正規 仕事シェアで解消」
本田由紀 東京大大学院准教授
「非正社員や無業者と、正社員との処遇や移動のバリアを取り払わねばならない」と。ご主張はわかるが、2009年についての「予言」としては無理っぽい。
「GM化した日本を農業が救う」
小池百合子 衆議院議員
これも2009年に限っていえば厳しい。ただ方向性としてアリだと思う。「知識集約型の産業に多くの雇用は生まれない」という指摘は重要。
「米国はドル札を刷りまくれ」
藤原帰一 東京大大学院教授
「ばくちだけれど、そうでもしなければ金融収縮がますます進み、1期で共和党に政権を奪われかねません」と。その前にしなくてはならないことがあると思うんだが。
「テロを求める世論がある」
佐藤優 起訴休職外務事務官
「オバマさんにファシズムの影を見るんです」と。「みんな一緒に」がこわい、と。興味深い視点。
「『底』は10年半ば 日本は政策転換を」
北尾吉孝 SBIホールディングスCEO
「何らかの方法で世界の流動性のコントロールと金融商品リスクの明確化が必要です」と。同意。特に後者は議論の余地なし。
「期待感のない『アラハタ』に注目」
鈴木謙介 社会学者
「新しい若者論が出てくるでしょう」と。期待しない分絶望もない、のだろうか。果たしてそれはどんなものなのか。ようしよく見ていようっと。
「若者は連合の集会に乗り込め」
小林よしのり 漫画家
「今の若者が矛先を向けるべきは、経営者じゃない」「対立構造は資本家と労働者じゃなくて、労働者と失業者」と。単純化した二元論は危険だが、重要な指摘ではある。
「仕事は溢れている 目の前のこと精一杯に」」
国兼亜紀子 インテグレーション(キムカツ・ゲンカツ)取締役
「与えられたことをやり遂げることで、自ずと道は開ける。それが天職と思える仕事になるのではないでしょうか」と。氷河期組の弁であることは重要。ただし当初に「与えられ」るかどうかという視点も忘れまい。
「新卒も中途も氷河期は2、3年」
小笹芳央 リンクアンドモチベーション社長
「選考過程でかなり厳しい現実を店、それでも強い動機を持ち、即戦力になる学生を厳選するでしょう」と。新卒学生にとっての「即戦力」とは何か、対象者はよく考えよう。
「邦画バブル破裂で投資者は消える」
黒沢清 映画監督
地力のある人と、金がなくても平気といえる人は強い。山口流にいえば「へっちゃらだい!」戦略。
「若者の武士語は和語に発展する」
加藤主悦 椙山女学園大教授
「東京では既にかなりはやっており、今年は全国に広がるでしょう」と。初耳でござるな。はてこれは面妖な。
「不安からfunが生まれる」
中村隆紀 博報堂研究開発局主席研究員
「逆風を追い風にして、楽しさや新しい価値を生み出すのが09年ヒット商品のテーマではないでしょうか」と。あの業界の人はこういう語呂合わせが好きだね。
「ミシュランに今年も載らない店」
山本益博 料理評論家
「注目されているのは三ツ星のお店ですが、それがひとつしか増えていないのでは、08年版を買った人は09年版を買う必要がない」と。ある意味、そりゃそうだ。
「テレビとネットは自然と繋がる」
井上雅博 ヤフー社長
「思い切って著作権法を改正して『テレビで流したものはネットでも流していい。以上』とすればいいんです」と。こんな簡単にいくんならそもそも問題になってないんだけどね。
「イノベーション継続が宿命」
辻野晃一郎 グーグル日本法人社長
「ルールブレークが目的ではないが、ルールブレークしないと世の中は変わらない」と。確信犯、だな。
「2ちゃん潰れても2ちゃん的は残る」
ひろゆき 2ちゃんねる管理人
「雑誌も数万部で休刊というじゃないですか。ネットで数万のアクセスをとるのは相当難しいですよ。規模が大きすぎるだけなんじゃないかと思いますね」と。相変わらず的確に、痛いところに塩。
「ネットの次はテレパシー」
堀江貴文 ライブドア元社長
「ネットの世界は、15年くらい前に想定されていたものがほぼ出尽くしたので、今後はどう実用的に使うかが模索されていくでしょう」と。5年前に想定されたものはまだ出尽くしてないってことじゃないのか?
「『ゆとり』が再評価 競争から共生へ」
寺脇研 京都造形芸術大教授・元文部科学省大臣官房審議官
「ゆとり教育によって子どもの学習意欲が高くなれば、学力は自然に上がる」と。「なれば」な。
「国内の大学は『愚者の楽園』に」
榊原英資 早稲田大教授・元大蔵省財務官
「日本の大学生、特に文科系は、勉強しません」「若い人の能力を暫定的に測る客観的な指標は『学歴』なのです」と。少なくとも一部同意。元勉強しなかった文科系大学生として。
「節約進めば経済成長なし」
丸山晴美 節約アドバイザー
確かにそうなんだが、職業柄そんなこと言っていいのか?というか「節約アドバイザー」っていう職があるのか。
「『役立たない』科学が世界の『成熟度』表す」
福岡伸一 青山学院大学教授(分子生物学)
「科学とは本来、『役に立つ』ことを目指して出発するものではない」と。だからといって無条件になんでも、とはいかないよね。
「CO2削減は水力と直流で」
西澤潤一 首都大学東京学長
「水力発電で電力需要を賄い、直流送電することにより、解決への道が開かれると提唱している」と。ふうん。


とりあえずこのへんで。
本文もなかなか面白いのでぜひ。



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Comments

> 「水力発電で電力需要を賄い、直流送電する
> ことにより、解決への道が開かれると提唱して
> いる」と。ふうん。

渇水になったら、新幹線が止まるとか(笑)
個人的には、原子力と直流だと思います。

Posted by: ひろん | January 06, 2009 10:14 PM

ひろんさん、コメントありがとうございます。
当然ながらこの問題は複数の供給源の組み合わせで行くべきですね。原子力発電は出力が安定していますが運用に融通がきかず、また「他の諸問題」もあります。一方水力は運用が弾力的にできるというメリットがあります。西澤氏のご主張は、これまでよりもっと水力発電の利用度を上げるべきであり、そのためにエネルギーロスのおきにくい直流送電を行うべきというものかと思います。

Posted by: 山口 浩 | January 07, 2009 09:32 AM

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