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博士今昔

「博士」という学位がある。一般的には「はかせ」と発音することが多いが、学位としての「博士」は「はくし」と読むのが正しい。このあたりまではWikipediaにも書いてあるものの、なぜそうなのかまでは知らなかったのだが、最近たまたま、1888年6月20日付朝日新聞の記事にその由来が出ていることを知った。

ちなみに。上のリンク先のWikipediaの記事には「国立国会図書館と国立情報学研究所が作成している「博士論文書誌データベース」で国内の大学で授与されている博士論文の検索ができる」とあって、どれどれと見てみたら、ちゃんと自分のもあって安心した。

それはともかく。記事は朝日新聞社編「朝日新聞の記事にみる奇談珍談巷談」朝日文庫、1997年より。学位としての博士は、日本では1887年の学位令によって定められた。最初の「博士」が誕生したのは、1888年5月9日のこと。6月20日付の記事は、それに関する解説として書かれたらしい。

学位令にある博士と云ふ文字の発音方は従来唱へ来りたる如くハカセと読む事と思ひの外ハクシと発音する事になる居る由今其所以を尋ぬるに博士と云ふ文字は我邦に於て従来ハカセと読み来りしも是は官名にして学位にあらず其文字を学位に用ふるは今回が始めにて今日の博士は昔の博士と全く無関係なれば其区別を明かにせんため斯くはハクシと読むことなりと尤も此の発音方は主務大臣の厳命なりと云ふ

「大臣の厳命」だそうな。このとき学位を授与されたのは25人。まさに「末は博士か大臣か」だった。今の学制による学位はその後、1947年の学校教育法によるものだが、読み方は学位令のときのものを引き継いだのかな。今の博士は明治時代の博士ともちがうんだから、また別の読み方を考えてもいいのかもしれないな。(ちなみにこの人の名は同じ字で「ひろし」と読む。我田引水っぽいがこれなんかどう?)

今日本にどのくらいの「博士」がいるのか知らない。「博士が100人いるむら」では、毎年11000人の博士が生まれると書いてあるが、文部科学省の平成20年学校基本調査をみると、今は毎年16000人ぐらいらしい。昔はもっと定員も少なかったろうし今と比べて学位をとるのが難しかったから、たぶん十万人の単位でそう大きくないくらいの数なんだろう。だとするとけっこうな数だ。

最近は博士の就職難の話がけっこう知られるようになってきた。そもそも今の博士というのは、大学を卒業した「学士」と同じように学位の一種であって、これがなければ仕事ができないという資格ではないし(最近の大学教員とか研究職の一部はそうなりつつあるが)、これがあれば就職できるというものでもない。大学を出たら就職できるという考えが幻想であるのと質的には同じだ。大学院に限らず、教育機関でも「誇大広告」の問題はあるのではないかと思うが、それにしても、ご本人たちの期待が肥大してしまっている部分があることは否定できない。

とはいえ、無駄だとも思わない。人に聞かれたらこう答えているが、問題意識と意欲と覚悟を持った人にとっては、大学院で学ぶ経験は大きな力となる。だから気にしなければならないのは、そこで何を与えてくれるかではなく、そこで自分が何をつかみとるかだ。一部の例外を除けば、誰かが責任をとってくれるわけではないので、進学を検討中の方はぜひご自分でいろいろ考えていただきたい。



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