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February 11, 2009

大人にいいたいこと:だったら成せきも平等にしてください

だったら成せきも平等にしてください 4年1組 山口 浩

きのう、お父さんが、「これ、どう思う?」と聞きながら、ある新聞の記事を見せてくれました。「小学校に「学級委員長」不在の鳥取県、20年ぶり復活へ」と書いてあります。「鳥取県の小学校には、学級委員長がいないんだってさ」と、お父さんは言いました。ぼくはびっくりしました。

ぼくが、「どうして鳥取県の学校には学級委員長がいないの?」と聞くと、お父さんは、「まあ記事を読んでごらん」と言いました。記事には、こんなふうに書いてあります。

小学校でずっと学級委員長を置いてこなかった鳥取県。「リーダーを選ぶのではなく平等を重視すべきだ」との考えが教員にあり、徒競走でも順位を決めないほどだったが、この春、鳥取市の1校で約20年ぶりに学級委員長が生まれることになった。

「じゃあクラスで話し合いをしたりするときはどうするんだろう」とぼくが言ったら、お父さんが、「そういう仕事をするための『運えい委員』はいるみたいだよ」と言いました。「じゃあ、『運えい委員』と『学級委員長』はどこがちがうの?」とぼくが聞いたら、お父さんは『さあ。名前がちがうだけじゃないのかな』と言いました。

ぼくは、「なんでちがう名前にしなきゃいけないの?」と聞きました。そしたらお父さんは、「うーん。たぶん、『学級委員長』ってえらそうに聞こえるからかな。ほら、『平等を重し』って書いてあるだろう?」と言いました。

ぼくは、よくわかりませんでした。ぼくは、3年生のときに、学級委員長をやったことがあります。でもそれは、ぼくが話し合いのときによくしゃべっていたので、みんなに「おまえがやったらいい」と言われたからです。ぼくは、ぼくのとくいなことが役に立つならいいと思って引き受けましたが、他の係りといっしょで、別にえらくありません。ぼくが「わかんないなー」と言ったら、お父さんは「きっと、鳥取県の学級委員長はえらいんだよ。1人だけいい給食を食べたり、他の生徒に命令したりしてさ」とニコニコしながら言いました。お父さんがこういう顔で話すときは、たいていウソです。

ぼくは、「でも、鳥取県では、運動会の徒競走でも、順位を決めないんでしょ?」と、記事を読みながら聞きました。そしたら、お父さんは、「そう書いてあるね。うわさには聞いたことがあるけど、都市伝説だと思ってたよ。ほんとうにあったんだね。こういう学校」と、記事を読みながら言いました。

県内の学校現場の「平等主義」は他にも例があった。運動会の徒競走で、児童の能力にあわせてコース内に「近道」を作ってゴール付近で接戦になるように調整する。学芸会で、一つの劇の主役を複数の児童が途中で交代して演じる――。「うまくできない児童の気持ちを最優先に考えるような時期があった」(同市教委)という。

ぼくが、「平等って、『みんな同じ』ってことだよね?」と聞いたら、お父さんはにやりと笑って、「さて。どう思う?」と聞きました。ぼくが考えていると、お父さんは、「『同じ』ってどういうこと?」と聞きました。それからお父さんは、「きみのクラスメートの大下くんは、きみより足がおそいよね?それってきみと『同じ』じゃないよね?」と言いました。それからお父さんは、「きみのクラスメートのけい子ちゃんは、ピアノが上手だよね?それってきみと『同じ』じゃないよね?」と言いました。たしかにそうです。でも、ぼくは、お父さんが何を言いたいのかよくわからないので、だまっていました。

そしたらお父さんは、「じゃあ、きみは大下くんより足が速いから、大下くんよりえらいの?」と聞きました。ぼくは「そんなことないよ」と言いました。そしたらお父さんは、「たしか大下くんは、きみより、泳ぐのがうまいんだよね?」と言いました。それで、「じゃあ、大下くんはきみよりえらいの?」と聞きました。ぼくは、「それもちがう。どちらがえらいとかそういうことじゃなくて、それぞれちがうだけなんだよ」と言いました。

お父さんは、「そう。だれにでも得意なことと不得意なことがあるよね。それはちがいではあるけど、どちらかがえらいんじゃない」と言いました。ぼくは、「じゃあ、鳥取県の先生たちはなんで学級委員長をなくしたの?それだってちがいでしょ?」と言いました。お父さんは「大人たちの考えはきみとはちがうかもよ」と言いました。ぼくはちょっと考えて、わかりました。「鳥取県の大人たちは、ぼくたちとちがって、学級委員長を『他の生徒よりえらい人』と思っているんだよ、きっと」とぼくは言いました。「でも、それって差別じゃないのかな?」とぼくが聞いたら、お父さんは、「そうだね。大人たちは心の中に差別をかくしているのかもね」と言いました。

そしたらお父さんは、「じゃあもう1つ。鳥取県では、徒競走で、足のおそい子どもは近道させてもらえるんだよね。きみは、『近道』させてもらえるとしたら何がいい?」と聞きました。ぼくはすぐに、「成せき!オール5になりたい!」と答えました。ぼくは、不器用なので、家庭科や図工が苦手だし、走るのは得意だけど水泳とか鉄ぼうとかが苦手なので、体育の成せきもよくありません。勉強も運動も得意で、オール5を取れる人がうらやましいです。

そしたらお父さんは、「そう思っている人は多いだろうね。だったら、みんなオール5にしたらどうかな?」と言いました。ぼくはうれしくなって、「それいいね!」と言いました。でもすぐに、あれ?と思いました。オール5がうれしいのは、それがみんなよりいい成せきだからです。みんながオール5だったら、オール5は別にうれしくありません。

ぼくが考えていたら、お父さんは、「じゃあ、何もしなくてもオール5になるってわかっていたら、勉強する?」と聞きました。ぼくは、「うーん。たぶん、あんまり勉強しない」と言いました。お父さんは、「運動会は、『みんながそれぞれがんばる』のが大事だろ?なのに、みんな同じにしたら、だれもがんばらなくなっちゃう」と言いました。ぼくは、それはいけないことだと思いました。

「もっとあるよ。なんで徒競争では近道させてくれるのに、勉強では近道させてくれないんだろう?」と、お父さんは聞きました。たしかにそうです。徒競争で足のおそい人に近道をさせたり、学芸会でみんなを主役にしたりするのが「平等」なら、勉強のできない人の成績をよくしてあげるのだって「平等」のはずです。なぜ勉強だけ特別なのでしょうか。

「うーん。わからないよ」とぼくは言いました。そしたらお父さんは、「そうだね。お父さんもわからない。きっとその大人たちが勝手に『これは大事で、これは大事じゃない』って決めてるんだね」と言いました。それで、お父さんは、「走ることは大事じゃないから、それが得意な人はえらくなくてもよくて、でも勉強は大事だから、それが得意な人はえらいほうがいいって思ってるのかな」と言いました。

ぼくは、「それはなんかおかしいよ」と言いました。そしたら、お父さんは、「たぶん、そういう大人たちは、きみたち子どもより『平等』をわかってないっていうことなんじゃないかな」と言いました。「じゃあ、聞き方を変えよう。『平等』って何だと思う?」

さっきわからなかったしつ問だけど、ぼくにはもうわかります。「平等」というのは何でもかんでも同じにすることではありません。ぼくたちはみんな、それぞれいろいろなところがちがっています。それをわかった上で、みんながそれぞれ大事にされるのが、「平等」ということなのだと思います。本当はちがいがあるのに、それをないと思いこもうとしたり、無理にかくしてしまったりすることは、実は、みんなの中のだれかや、たくさんある中のどれかが大事で、他は大事じゃない、と言っていることと同じです。そして、それは、「平等」とはぎゃくのことです。

そしたら、お父さんは、「じゃあ、最後にもう1つ。得意なことが何もない人は?大事にされなくていいの?」と聞きました。ぼくは、「ちがうよ。何かが得意だから大事なんじゃなくて、仲間だから大事なんだよ」と言いました。それで、ぼくは、「でも、大事にするってことは、学級委員長を決めなかったり、徒競争で近道をさせてあげたりするのとはちがう。そんなことをしたって、うれしくないよ」と言いました。

お父さんはにっこり笑って、「そうだね」とうれしそうに言いました。ぼくもうれしくなって、テーブルの上にあったりんごを食べようとしました。でも、一足早くお父さんに取られてしまいました。ぼくが「あっ!ずるい!ぼくが食べようと思ったのに」と言ったら、お父さんは、「大人は体が大きいから、いっぱい食べなくちゃいけないんだ。これも平等だね」と言いました。ぼくは、ご飯とかならわかるけど、デザートのりんごまで大人だけたくさん食べるのは、「平等」とは言わないんじゃないかな、と思いました。

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Comments

こんにちは。
最後のリンゴのことで思い出しました。まだ小学生の頃、4つ下の弟と私のおかずの量が違っていたのです。それを弟がなぜ、お兄ちゃんの方が量が多いのかという問いに、私はまさに体が大きいからと答えました。それに対して弟は、「体が小さいからたくさん食べなければいけないんだ」と。

妙な平等を押しつけてもいいことはないと思います。2/14にもらえるチョコレートの数は間違いなく差があると思います。まさか、そこまで教育されてるのかな。。

Posted by: 井伊田竹篦 | February 11, 2009 05:42 PM

井伊田竹篦さん、こんにちは。
今日の夕ごはんのとき、お父さんに、「ぼくは、体が小さいから、たくさん食べなければいけないんだ」と言ってみました。
そしたら、お父さんは「ああ、そうだね。たくさん食べないと」と言って、お父さんのおさらにのっていた玉ねぎを、ぼくのおさらにのせてきました。
ぼくは、玉ねぎがきらいなので、なきそうになっていたら、お母さんが、「すききらいすると大きくなれませんよ」と言って、お父さんのおさらに、もっとたくさん玉ねぎをのせました。
ぼくもお父さんも、なきそうになりながら、玉ねぎを食べました。
デザートだけたくさんもらえる言い方があったら、教えてください。

Posted by: 山口 浩 | February 11, 2009 07:55 PM

今日、学校の先生が言ってたんだよ。

糖分は頭の働きをよくするって。だから、1日1個のケーキを食べると成績が上がるってさ。

Posted by: 井伊田竹篦 | February 13, 2009 10:39 AM

井伊田竹篦さん、こんにちは。
教えてもらったとおりにお母さんに言ってみました。そしたら、「じゃあ、成せきが上がらなかったら、その分のお金はお年玉から返してもらうからね」と言われました。それから毎日、デザートにケーキを食べていますが、成せきが気になって、なんだかおいしくありません。

Posted by: 山口 浩 | February 14, 2009 09:42 AM

お母さんに相談してみてください。

ケーキの種類と成績の向上の関連性を調べたいと。
どのケーキだと成績が上がり、どのケーキだと成績が上がりづらいのか、それに個人差があるのかなど。

これを研究してノーベル賞を取りたいと。

だから、短期的な結果で結論を出さないでって。

Posted by: 井伊田竹篦 | February 14, 2009 02:22 PM

なぜ「学級委員長」と言う係がまず出来たのか,と言う所から考えた方が良さそうかも?

私の経験から考えると,これまでは「学級委員長」に押し付ける的な感じが非常に際立っていたけど,係りに分担することの大事さがこれにて(子供が経験として)理解できる.と,言ったものなんでしょうね.
最終的には委員長を立てることが一番うまくいくのかもしれないですが,こういう枠組みを理解することが一番大事なのかもしれない.

近道=楽をする
ではなく,
遠回り道=自己向上
と,言う風にとらえたりね.
「平等」と言う言葉も難しいところですね.

なんていうか学校は極端な場所ですね.
末端である教職員がこれを理解して,朝の会,道徳の授業などで説明する機会があったのでしょうかねぇ.

きっと色々な試行錯誤があったのだろうけど,ニュース的なトピックだけに着目すると誤解が生まれるんだなぁという良い例

Posted by: Kazushige TAKEUCHI | February 15, 2009 08:21 AM

井伊田竹篦さん、こんにちは。
教えてもらったとおりにお母さんに言ったら、「うーん」とうなって、お父さんに相談していました。そしたら、お父さんは、急にパソコンで何かを調べて、「あまいものを食べすぎると、かえってのうによくないらしいよ」と言いました。
http://www.fi.edu/learn/brain/carbs.html
それを聞いて、お母さんは、「わかった。じゃあ、ケーキは週1回にしましょうね」と言いました。お父さんは、「ケーキを食べなくても調べることはできるよ。ほら」と言って、理科の教科書をさしだして、それから2時間、理科の勉強をさせられました。

Kazushige TAKEUCHIさん、こんにちは。
むずかしいかん字とかがあって、よくわからなかったので、お父さんに聞いてみました。そしたら、「うーん。どうかなあ」と言っていました。お父さんは、「前にも言ったけどさ、学校の先生とか、生徒のほご者が、心の中で、学級委員長でない生徒を差別しているんだよ」と言いました。
ぼくが、「学級委員長を『えらい人』と思っているんだね。だから、だれか1人を委員長にすると、他の生徒がかわいそう、と思うのかな」と言ったら、お父さんは、「むかしは、学級委員長になる生徒はまじめで頭がよくて、みんなのリーダーになるような子だったんだよ。だからそのころのことをおぼえているんだろうね。今はただの役わり分たんなのにね」と言いました。

Posted by: 山口 浩 | February 15, 2009 11:36 AM

山口くん、こんにちは。いつも面白く読んでいます。
3年の1学期の学級委員せんきょでえらんでもらえなかったそうだけど、2学期に学級委員にえらばれていたのですね。
http://www.h-yamaguchi.net/2005/04/post_7712.html
おめでとう & ごくろうさまでした。
でも、学級委員にえらばれたことや学級委員をつとめたときのことは今までお知らせがなかったですし、何だか「でもそれは、ぼくが話し合いのときによくしゃべっていたので、みんなに『おまえがやったらいい』と言われたからです。」って、1学期のときほどには前向きでなかったみたいですね。よかったらそのあたりでどう気持ちが変わったのか、教えてくれるとうれしいです。

Posted by: こうらぼし | February 16, 2009 04:31 AM

こうらぼしさん、こんにちは。
こうらぼしさんは、変わった名前ですね。どこまでがみょう字なんですか?
ぼくは、3年の1学きに、学級委員になろうと思ったのですが、えらんでもらえませんでした。それで、みんなが「この人を学級委員にえらびたい」と思うような人でないとなれないんだなと思って、それからは自分から言わないようにしていました。そしたら、3学きになって、みんなが「おまえがやれよ」と言ってくれたので、やることにしました。
たぶん、1学きのぼくは、学級委員を「えらい人」だと思っていたのかもしれません。

Posted by: 山口 浩 | February 17, 2009 12:15 AM

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H-Yamaguchiさんのところの記事が面白すぎるので紹介。全文は向うで読んでもらうとして一部を引用。鳥取県の公立小学校が学級委員を置いていないことと、徒競争で同時にゴールすることに対してのの記事だ。 「もっとあるよ。なんで徒競争では近道させてくれるのに、勉強では近道させてくれないんだろう?」と、お父さんは聞きました。たしかにそうです。徒競争で足のおそい人に近道をさせたり、学芸会でみんなを主役にしたりするのが「平等」なら、勉強のできない人の成績をよくしてあげるのだって「平等」のはずです。なぜ... [Read More]

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