ルールは必要以上に厳しくかつこっそり破れる程度にゆるく、という話
小ネタ、かつしょうもないネタ。こういう記事をひっぱってくると、すぐに「その手」のトラックバックが山ほど来てうっとうしいんだが、つい。
この件、2009年2月2日にFNN系のニュースで流れたらしい。元記事はもう消えてるので引用しとく。
女子高校生のスカートの長さをめぐって、新潟県では2日から、本格的な指導が始まった。
「日本一短い」ともいわれる、新潟の女子高校生のスカートの丈をめぐり、2日、新潟市の高校で、下校する女子生徒の服装チェックが放課後に行われた。
ご苦労さまなことでというかひまだねというか、ああそうですかな話ではある。そもそもテレビ局はどうやってこの件を知ったんだろう?県がプレスリリースでも打ったの?誰かがタレこんだ?
ともあれ。本件、学校単位の取組みではないところがミソ。県ぐるみであるらしい。
県立新潟中央高等学校の眞島智宣部長は「スカート丈を短くすることは、一切禁止という指導をしました」と話した。
今後は、新潟市内だけでなく、県内の100校ほどにもポスターを張り、指導を徹底していきたいという。
なんでそんなことをするかというと、まあ想像がつくわけだが、こういう理由を挙げてる。
新潟市内では、女子高校生のスカートが切られる事件や痴漢行為などが相次ぎ、さらに寒さから、体調を崩すおそれもあることから、「短すぎるスカートの丈を長くしよう」という取り組みを、2日から本格的に始めることになった。
ふうん。なんでも、女子高生のスカートの丈が日本で最も短いのは新潟県なのだそうで、業を煮やした先生たちが「立ち上がった」(!)のだとか。「日本一」については、いったい誰がどうやって(何の目的で)調べたのか謎だが。それを真に受けるテレビ局もどうかと思うが。それを伝えて何の役に立つのかと思うが、それをいえばこのブログもそうだよな、ということでそこは不問にして。
で、しょうもないというのは、そもそもこの問題、本気でどうにかしようと思えば簡単にできるし、一方でどうやったて結局さしたる効果はないし、でもやること自体にはそれなりに意味があるしで、要するに「どうでもいいじゃん」的な話だからだ。
問題点として上げられてるのは「犯罪を誘発する」、「健康に悪い」というあたりだが、昔と比べてこの件と因果関係のありそうな犯罪が増えたっていう話はあまり聞かないし(直感的にわからなくもないし事例らしきものもあるが、実際のところどうなの?ご存知の方ご教示いただきたく)、じゃあ夏はいいのかよ(健康ということでいうなら、衣替えをいっせいに行うのは明らかに不合理だ)という反論には答えられない。まあどうみたって要するに本当のところは「はしたない」っていうところなんだろうな。もちろん「はしたない」か「かわいい」かは価値観の問題だが、問題視する方々の価値観は当然前者なわけで。
で、本気でなんとかしたければ、簡単な解決策がある。制服をスカートでなくすればいい。実際、スラックスの制服を採用してる学校はあるはず。今決めて、来年度入学者から実施すれば最長3年ですべて解決する。でもそれはやらない。なぜか。
入学志望者が減ってしまうからだ。
それって要するに大人の事情だよね?つまり、本気でやるつもりははなからないということだ。こういうのがなんともやだな。
それに、生徒は365日24時間制服を着ているわけではないし、学校の行き帰りだって校門を一歩出たら監視しきれない。学校の中で性犯罪を防ぎたいってこともあるかもしれないが、問題はむしろ外だろう。しょせん学校にできることには限界があるのだ。
「短くしにくいスカートを開発したメーカーも登場した」のだそうだ。「ウエスト部分を折り曲げても、プリーツ部分がくしゃくしゃになって」しまうのだそうで、企業としては正解だろうが、生徒たちはそれなりに「解決策」を見つけるだろうから、「目的」を達することはないとみたほうがいい。
あとは長いスカートを流行らせるか?こっち路線とかどうかな。↓
まあ、この時代は長くすることがルール違反であり、反抗の印だったわけだがね。少なくとも、流行は1つの学校や都道府県単位ではどうにもならんな。D社に動いてもらわないと。
とはいえ、個人的には、スカート丈でああだこうだやること自体には、それなりに意味があるとも思う。この年代の子どもには固有の文化や価値観があって、かつ大人のルールに対する反発もあるから、規則を無視したり破ったりすること自体に価値を見出す考え方というのが不可避的に存在するからだ。ルールを破ってすっとした、という経験は、誰にもあると思う(大人になってもそういうのばっかりだと困るけど)。ルール破りにもいろいろな段階があるが、しゃれにならないことに走られても困る。この程度のルール破りならまだかわいいものではないか。それに、反論しようとして一生懸命頭を使うのも悪くない経験だろう。その意味で、子どもに適用するルールというのは、必要以上に厳しくて、多少理不尽なくらいでいいのではないかと思ったりする。
とはいえ、それをあまりに厳格に適用してしまうと、息苦しくなってしまう。ストレスでどうにかなられたのではそれこそ本末転倒。それなりに努力すれば突破できる程度にしておけば、手ごろな「挑戦課題」になる。そのくらいでいいんじゃないか。つまり子どもに対する「ルールは必要以上に厳しく、かつこっそり破れる程度にゆるく」しておいたらどうかな、なんてことを思うわけだ。あんまり表ではいわないけど。
本件では、県が号令をかけていっせいに、なんていうのがどうも無粋な感じでやだね。これまでだって、学校で指導とかはしてたはず。それでいいじゃん?聞く生徒は聞くし、聞かない生徒は聞かないだろうが、そこから先はそれこそ「生徒の自主性」をふだんどう教育してるかの問題。あと、家庭環境も大きいな。今はともかく、もうちょっとたったら、高校時代にスカートを短くしてた人たちが母親になるんだよ?
むしろさ、指導を強化するんなら、「姿勢」をどうにかしたほうがいいと思う。立ったとき、すわったとき、歩くときなんかの姿勢。あれのほうがよほどだらしなくて気になるし、まさに健康に影響する。それから「言葉遣い」。古文漢文より先に敬語だろうよどう考えても。あと、どうしても服装をどうにかしたいんなら男子生徒の指導もお忘れなく。いるじゃんひどいのがいっぱい。個人的にはあっちのほうがよほど見苦しいと思うんだがね。
まあ小ネタなのでこのへんでおしまい。
※追記
同じ話はこんなあたりにもいえるな。
「学校へのケータイ持ち込み禁止は中学校99%、小学校94%--文科省調査」
「持ち込み禁止」と「持ち込んでない」はちがう。持ち込みを禁止していない小中学校がほとんどないのと同様、生徒の誰も持ち込んでいない小中学校もほとんどないだろうよ。あと、すでにほとんどの小中学校が持ち込み禁止にしてるなら、文部科学省がいまさら「小中学校では携帯電話の持ち込みを原則禁止」するよう打ち出す意味はないじゃん。こういうあたりが上記の新潟県と同じ「官僚的」なやり方。
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