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February 22, 2009

読んでないけど読んでみたい心理学の本を20冊

他分野の本というのは、まったく興味がわかないことも多いのだが、逆にひどくそそられる場合もある。時間もとれないし買うと高いしでなかなか機会がないのだが、たまに猛烈に読みたくなってくる。今回の「発作」は心理学。いろいろなきっかけがあったのだが、直接的には、手元に送られてきた北大路書房の図書目録2009年版。タイトルと数行の紹介を読んだだけなのだが、「あなたはアマゾンに飛びたくな~る、飛びたくな~る・・」と目の前でコインを揺らされてる気分になってしまって。とはいえ、根っから不真面目な性格なので、興味の持ち方も、まじめ方向ばかりとはいかない。

いうまでもないが、ネタ元が元なので、以下すべて北大路書房の本。念のためだが、(一部を除き)中は読んでないからね。では。

本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本」(吉田寿夫著)

いきなり心理学じゃなくてアレなんだが。統計というのは、心理学でもそうだが、他にもいろいろなところで使う。でも、ちゃんと教えようと思うとけっこうめんどくさいしたいへんだしそもそも自分がちゃんとわかってんのか的な話だしで、なかなかうまくいかない。この本がそういう目的で役に立つのかどうかわからないが、なんかそそるじゃない?だって、「本当にわかりやすい」んだよ?「すごく大切なことが書いてある」んだよ?「ごく初歩」なんだよ?これさえあればみんなわかってくれそうな気がしてこない?


若者の感性とリスク―ベネフィットからリスクを考える」(土田昭司、伊藤誠宏著)

「若者のリスクに対する感じ方や考え方に焦点を当て」とある。リスクを考えるときに、金融とかの人たちはついリスクそのものに関心が集中しがちなんだが、リスクがどう認識されてるかってのも重要なテーマのはず。というわけで、こっち分野はやはり要チェック。


未知なるものに揺れる心―不確定志向性理論からみた個人差」(R.M.ソレンティノ、C.J.R. ロニー著、安永悟、大坪靖直、甲原定房訳)

「UO理論」というのがあるらしい。「UO」ってのはUncertainty Orientationの頭文字。「人間行動は、(1)場面の不確定性、(2)不確定志向性、(3)感情要因の3者の相互作用によって決定される」という考え方に基づくものらしい。ぐぐっても日本語のページはほとんど見当たらないが、「先端」分野なんだろうか。なんか面白そう。


生み出された物語―目撃証言・記憶の変容・冤罪に心理学はどこまで迫れるか」 (法と心理学会叢書)(山本登志哉著)

「自分の目で見たんだからまちがいない」とよくいうのだが、目に見えているものが本当とは限らない。目は見たままを映しても、それを認識し、記憶し、思い出すのは脳なわけで、その一連の情報処理プロセスの中でいろいろなことが起きる。結果として、自分が本当だと思っていることが実際とはまったくちがってる状況はしばしば起きる。この本は「記憶の常識を覆す「ウソの生み出される過程」について、分析、検討、さらに、発達論的にも分析する」とある。裁判員制度とかも始まるわけで、人間の「理性」とか「合理性」とかいったものについて、もうちょっとまじめに考え直す必要はあると思う。


常識の社会心理―「あたりまえ」は本当にあたりまえか」(卜部敬康、林理編著)

「従来から、「常識的」ということで吟味されないまま受け入れられていた社会的事象に対して、社会心理学的立場からメスを入れ、どのような思考法が必要かの提言を行う」本だそうだ。どの「常識」を検討してるのかわからないが、なんか面白そうではないか。


人間関係のゲーミング・シミュレーション―共生への道を模索する」(藤原武弘編著)

これは仕事柄要チェック。「仮想空間を舞台に複数の参加者が決められたルールに従って一定の課題解決をめざすゲーミング・シミュレーション」の理論、実施方法、研究適用例を詳しく紹介」だそう。


政治行動の社会心理学―社会に参加する人間のこころと行動」(シリーズ21世紀の社会心理学6)(高木修監修 池田謙一編集)

社会心理学の各領域をまとめるシリーズものの1冊。こういうのは、該当分野の方は必読、なんだろうなぁ。「メディアを通した政治」、「社会階層、価値意識、社会システムへの関心の欠如」、「広い意味での政治参加行動」なんかを扱うらしい。


消費行動の社会心理学―消費する人間のこころと行動」(シリーズ21世紀の社会心理学7)(高木修監修 竹村和久編集)

1つ上の本と同じシリーズ。こっちは「消費」がテーマ。「従来のマーケティングにおける消費者選択理論や経済学における効用理論も援用しながらも、社会心理学的観点から消費行動にアプローチする」と。今ホットな分野だが、経済学とか経営学とか寄りの人が書いたものは、どうも中間を端折って結論に飛びついてる印象がぬぐえない。ちゃんと根っこから理解したいところ。この本はどうなんだろう?


しろうと理論―日常性の社会心理学」(A.F.ファーナム著、細江達郎監訳)

「しろうと理論」ってのがよくわからないがなんか面白そう、と思ったので挙げてみた。「隆盛である帰属理論研究の実験室的な人為性に疑問をもった著者が、より日常的な世界のふつうの人のもつ「理論」や「信念」それ自体を対象としてその内容・構造・機能・使用される過程を明らかにする」のだそう。要するに、実験的なアプローチでは実際の心の動きはわかんないよ、ということらしい。そういうことなら、まあ納得。この考え方は、行動経済学でよく行われる実験についても、似たことがいえるかもしれない。


し忘れの脳内メカニズム」(梅田聡著)

「し忘れ」というのがなんか柔らかい語感で新鮮。一方解説のほうは「実験心理学的アプローチと神経心理学的アプローチから展望的記憶の想起形態に関する検討を行った研究」となんとも堅い。いや自分としては、単にこのもの忘れしまくり状態をなんとかしてほしいだけなんだがね。


日常認知の心理学」(井上毅、佐藤浩一編著)

「1970年代以降「生の人間の経験の中から問題を取り上げ、より日常的状況で研究」する流れが実験室的研究と相互補完的な性格をもつものとして注目され始めた」のだそうで。


集団を活かす―グループ・ダイナミックスの実践」(A. ザンダー著、黒川正流、金川智恵、坂田桐子訳)

挙げときながらなんだが、この説明文がよくわからない。「集団のダイナミックスに関する諸研究の結果の実践的な価値を検討。集団の重要な特性を記述し、集団行動の研究者がこのような特性の源泉と価値をいかに説明しているかを研究結果に基づいて述べている」と読んでも読んでも、さっぱり頭の中に像を結ばない。まあ「集団のダイナミックス」に関することであることはわかるから、それ自体には興味がある。「最近の研究の概要に興味のある研究者のための一冊」だそうなので、ふむふむと。


創造的問題解決―なぜ問題が解決できないのか?」(B. ミラー、J. ヴィハー、R. ファイアステイン著、弓野憲一監訳、南学、西浦和樹、宗吉秀樹訳)

「問題解決学」みたいなものはよく聞くが、心理学からのアプローチというのはよくあるんだろうか。「優れたファシリテーターになるための訓練プログラムとして、創造性にまつわる基礎知識/創造的問題解決に役立つ各種の情報や知識が紹介される」のだそうで、ふむなんか面白そう。


メンタリティの構造改革―健全な競争社会に向けて」(山祐嗣著)

「受験システムが人々にストレスを与えているとすれば、それは日本のムラ社会的体質によるものと捉え、その体質が徐々に変化しつつある今、人々は受験システムのような競争を受け入れる社会的素地はできていると指摘」しているのだそう。これも面白そう。


不思議現象 なぜ信じるのか―こころの科学入門」(菊池聡著)

こういうテーマは個人的に大好き。この著者による他の本は持ってる。想像だが(ひょっとして似たことを誰かから聞いたことがあるかも)、振り込め詐欺にひっかかりやすい人は、超常現象を信じやすいのではないかと思う。


インターネットにおける行動と心理―バーチャルと現実のはざまで」(A.N. ジョインソン著、三浦麻子、畦地真太郎、田中敦訳)

この本は持ってるんだが、こういうテーマで関心を呼ぶあたりをバランスよく取り上げていてよい。ちょっと前の本だが、変化の激しい分野であるにもかかわらず、今読んでもそれなりに新鮮だったりする。


ケアする人だって不死身ではない―ケアギヴァーの負担を軽くするセルフケア」(L.M. ブラマー、M.L. ビンゲイ著 森田明子編訳)

考えてみれば当然なんだが、目からウロコ、だな。あと、「紺屋の白袴」的な意味合いでとらえると、こういう視点って、他の分野でも重要だと思う。


おしゃべりで世界が変わる」(川上善郎著)

「おしゃべりを100%活かすための本」とあるが別におしゃべりの人向けの本、というわけじゃない。「ぐちや悪口、うわさや雑談・・・・。これらはすべて世界を変える力を持っている」と。いやバイラルマーケティングの本じゃないよ?著者は「うわさ研究の第一人者」であるらしい。「世界が変わる」とはたいへんなパワーだ。ぜひおしゃべりで拉致問題を解決したり、ソマリア沖の海賊を撃退したり、地球温暖化を防いだり、石油に代わる代替エネルギーを開発したり、今私の目の前にある味付けを失敗した料理をなんとかしたりしてほしい。


恥の発生―対処過程に関する社会心理学的研究」(樋口匡貴著)

「恥」を研究する人たちがいるらしい。まあ考えてみれば当然なんだが。「これまでの恥に関する社会心理学的研究は、(1)恥の発生状況、(2)恥の発生因、(3)恥の下位情動、(4)恥への対処行動という4つの研究領域に分類される」そうで、その一連の過程を解明しようという本であるらしい。なんか「ドレミファ娘の血は騒ぐ」を思い出して、その4つの研究領域にあてはめてみたりする私はやはり根っから不真面目なんだな。


7つの能力で生きる力を育む―子どもの多様性の発見」(A.B. スクローム著 松原達哉、監訳、岩瀬章良編訳)

もうだめだ。子どもには7つの能力があるなんていわれると、あの「頭のとんがった子ども型のアイツ」を思い浮かべちゃう。頭の中には「そーらーをこーえてーラララほーしーのかーなたー」と歌が鳴り響いて。かといって、子どもが10万馬力だったり、マッハ5で空を飛んだり、どんな計算も1秒でできたり、60ヵ国語を話したり、1000倍の聴力を持ったり、眼がサーチライトになったり、お尻からマシンガンを撃ったりするわけではない(テレビ版のほう、ね。原作版の「人間の善悪を判断できる」ってのは子どもとしてはさほど「特殊」じゃないかもしれんがね)

この本でいう「7つの能力」は学力、創造性、巧緻性、共感性、判断力、モチベーション、パーソナリティ。著者の提唱らしい。それらをテストして、職業適性を論じるのだそうな。さまざまな評価軸を持つのはいいが、それを職業適性に結びつけるのってどうかな、と素人的には思う。「あなたはどの職業にも向いていません」なんていわれたらどうしよう?「テストの結果あなたは7つの能力すべてにおいて劣ってます」っていわれたらそれこそ救いがないような。これとは別でもいいんだが、一部の能力はテストしないで残しとかないといかんのではないかな。


まあ本日はこのへんで。皆さんが「あなたはアマゾンに飛びたくな~る、飛びたくな~る・・」と目の前でコインを揺らされてる気分になったかどうかはわからないが。

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Comments

いつも拝読させていただいてます。

個人的には、『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』(吉田寿夫)は応用するときに欲しい情報が書かれていないというイメージです。すごく基本的で簡単な手法なら問題ないと思います。

「しろうと理論」ってのは、例えば血液型性格診断みたいなものをいいます。科学的根拠に基づいていなかったり科学的には誤りであったりするけれど、一般に広く浸透している“科学”ですね。

ちょっと自分の専門に近い話だったのでコメントさせていただきました。

余談ですが、コメントにはメアドが必須なんですね。珍しいのでちょっと驚きました。スパムが怖いな~と思いましたが非表示なんですね。安心しました。

Posted by: フェイレン | February 22, 2009 06:34 PM

フェイレンさん、コメントありがとうございます。
ご教示ありがとうございました。吉田本はいい、というコメントがはてブにあったかと思います。目的次第、ということなんでしょうね。私は、学生さんにお勧めする本を探していたのですが、オーム社の「マンガでわかる~」シリーズぐらいかなーと思っていたので、お、これは!と期待しています。とりあえず買ってみようかと。
「しろうと理論」ってのは疑似科学みたいなやつも含む、ということでいいんですかね。説明文だと、実験よりもっと実際的な環境下で研究すべきだ、という方向性に見えたんですが、ちょっとちがうわけですね。
メアドの件はココログの仕様かと思います。今はコメント承認制にしているので必ずしも必要ないんですが、まあ何かあったときに連絡とれるのは悪くないとも思いまして。ダミーのアドレスを記入しておられる方も多いようです。

Posted by: 山口 浩 | February 22, 2009 09:07 PM

そうですね、吉田本がいいか悪いかは目的次第だと思います。統計の基礎にはちょうどいいかもですね。ただ、ちょっと応用的になると「テクニカルブック参照」という風に書いてますので詳しく学びたい学生には物足りないかもしれません。ちなみに僕の場合は、「『テクニカルブック参照』ばっかりやんけ。うおーっ」となって、結局『心理学のためのデータ解析テクニカルブック』(森 敏昭・吉田寿夫)を買ってしまいましたw

しろうと理論に関して、僕も件の著作は読んでいないので想像になりますが、しろうと理論研究は調査や観察研究のほうがよく理解できるよってことではないでしょうか。学者ってのは基本的にロジカルに考えるよう訓練されている(はずな)ので、学者の頭の中で考えた理論を実験で検証するというアプローチはしろうと理論研究には向かないということかなと思います。実際はわかりませんが。

Posted by: フェイレン | February 22, 2009 11:41 PM

フェイレンさん
「目的次第」という意味では、きわめて適切なタイトルがついた本ということですね。
対象が人間やら社会やらであれば、まずそれを観察するのは当然で、頭で考える理論もそれを説明するためのものですから、実態が合理的でなければなぜ合理的でないかを合理的に説明する理屈を考えるだけではないかと私は思います。
要は、理論を無批判に現実にあてはめて、現実のほうを曲げてしまおうという研究者がいるってことですかね。

Posted by: 山口 浩 | February 23, 2009 11:51 AM

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Tracked on February 24, 2009 10:32 AM

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