餅の個別包装に警告メッセージが入っていない件
手短に、いろんな意味で「なにをいまさら」な件。最近、思い立って(というか、安売りしてたので)切り餅を買ったのだが、外装パッケージの袋には当然、警告メッセージが入っている。こんなふうに。
調理されたもちを「急いで」お召し上がりになると、手や口内を「やけど」したり、「喉につまらせ」たりしますので、ご注意ください。
赤い字で目立つように。でも調理方法など他の記載内容と同じ大きさの字で。ふうんまあこのくらいするよな。と思ったところであれ?と思い出したことがあって。
別に目新しい話ではない。こんにゃくゼリーに関する例のあれこれに際して、よくもちが引き合いに出される。ここでも何度か取り上げた。よく「もちのほうがはるかにたくさんの人が食べているのだから事故が多いのは当たり前」とか「もちが危険であることはすでに広く知られているからもう対策は不要」とかいう人がいて、それを「こんにゃくゼリーは規制すべきだがもちは規制すべきでない」ということの理由に使っているのだが、絶対数が多いということ自体が問題だという視点が抜け落ちていていかがなものかと思う。はるかにたくさんの人が食べているがゆえにその問題は重要なのであり、危険であることを知られていながら依然として被害が絶えないということにはそれなりに重い意味がある。
かといって「もちの販売を規制すべき」とか思っているわけではない。逆に、こんにゃくゼリーも、もちと少なくとも同程度に考えてはどうかといいたいだけだ。
どういうことかというとだ。たとえば国民生活センターのサイトには、2009年1月8日付のこんにゃくゼリーに関する調査結果があって、こう書いてある。
3.表示及び販売
* 外装パッケージの表面に大きな警告絵表示等が、また裏面には大きく取り扱い等が記載されていた。
* 「子どもや高齢者は食べない」や「凍らせないこと」についてはほとんどのメーカーで表示されていた。
* ミニカップのフタ部分に新規の警告表示をしているメーカーは1社のみであった。
* 販売店での警告表示や販売場所については、菓子と一緒に警告表示もなく販売されているところも見られた。
で、この件を新聞はこう伝えている。
「こんにゃくゼリー:警告表示の改善進まず」(毎日新聞2009年1月8日)
ミニカップ入りこんにゃくゼリーによる子供や高齢者らの窒息死事故が相次いでいる問題で、農林水産省が製造・販売業者に求めていた警告表示などの改善策が大半の業者で徹底されず、形状や大きさなどもほとんど変わっていないことが8日、国民生活センターの調査で分かった。同センターは「子供や高齢者が窒息死する危険性は依然否定できない」と引き続き注意を呼びかけている。
外装パッケージには大きく警告メッセージと絵が出ているが、中の個別包装にはない、ということを、メーカーの対応が充分ではないという意見の根拠としている。さて、ならば件の切り餅はどうなのか。繰り返すが、私が買った切り餅は、外装の袋の裏側にしか注意表示がなく、かつ大きな字ではない。個別包装にはなんらの警告メッセージもない。
こんにゃくゼリーよりもはるかに多くの人々にとって潜在的なリスクであり、現実にはるかに多い件数の事故が発生しているという事実をふまえると、国民生活センターが、こんにゃくゼリーと比較して、もちを「不当」に軽く扱っている、逆にいうと、こんにゃくゼリーを「不当」に重く扱っているということにはならないだろうか。
ちなみに、「のどにつまりにくいもち」という商品は存在する(以下参照)が、ほとんどのもちはそうではない。昔の切り餅に比べて今の切り餅がのどにつまらせにくくなっているかどうかは知らないが、目だった改良がなされたという話は聞いたことがない。
とはいえ。
別に販売を規制すべきだとは思わないが、餅の警告メッセージはもう少し考えてもいいと思う。こんにゃくゼリーみたいに「高齢者、幼児は食べるな」というのもあんまりだし、警告ぐらいにしとけばというわけ。個別包装にはイラストでも入れたらどうかと思って、恥ずかしながらなぐり描きしてみた。こんな感じの。
もちは温めるとやわらかく、伸びやすくなります。
ゆっくり、よくかんで食べてください。
のどにつまらせると危険です。
最悪の場合、窒息することがあります。
恥ずかしいのでこのへんで撤収。
以下は当然、うそのニュース。本気にしないように。
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Comments
こんにちは。
私も蒟蒻ゼリーと餅の違いを考えていたのですが、餅を冷蔵庫から出してそのまま口に入れる人はかなりのレアケースかと。つまり、焼かずに、煮ずにということです。
蒟蒻ゼリーは、冷蔵庫から取り出して、そのまま口に入る手軽さが有ります。さらにゼリーのような形状が、蒟蒻を食べるという意識を消し去って、ゼリーのような食べ方をしてしまう。
蒟蒻ゼリーのパックには、「これは蒟蒻です」と3回唱えてから食べてください、とかの表示の方がいいかも。
Posted by: 井伊田竹篦 | February 13, 2009 10:48 AM
井伊田竹篦さん、コメントありがとうございます。
こんにゃくゼリーに関しては、「最悪の場合、死亡事故に至るケースがある」みたいな、もっと過激な警告メッセージを出してもいいかもしれませんね。たばこみたいに。
あと、よくDVDなんかでありますけど、「このパッケージを破ることにより、あなたは、以下の条項に同意したものとみなします」みたいにするとか。むしろ免責条項として書いておくのがいいのでは。
Posted by: 山口 浩 | February 14, 2009 09:47 AM
この件は初めて聞きました(すいません、検索したら、ずいぶん話題になっているのですね)
餅はそのまま食べないので最終的には煮たり焼いたりする「調理するものの責任」となるから、餅という「素材」をつくるものの責任は小さいのではないかと思います。
蒟蒻も「こんにゃくぜりーのもと」という商品がありますが、それを販売した者の責任はあまり問われなかったことから、そんなことを考えました。
Posted by: Amygdalus | February 14, 2009 10:54 AM
Amygdalusさん、コメントありがとうございます。
その理屈は、たとえばフグのように、調理のしかたによって食材としての性質が大きく変わるようなものでしたらあてはまると思うのですが、もちのように、一般的な調理では食べものとしての性質が変わらないものにはあまりあてはまらないと思います。
もちに関する最も簡単な説明は、もちをのどにつまらせる被害はたくさん生じているものの、みんなが経験上「そんなの自己責任だろ」とわかっているし、関係者が多くて影響が大きくなりすぎるのでマスメディアも煽れないし政治家も話に乗れない、といったところかと思います。
「こんにゃくゼリーの素」については、商品自体がほとんど知られていないからじゃないですかね?どうでしょう?
Posted by: 山口 浩 | February 14, 2009 01:35 PM