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世襲制限をかたちだけ実施するための方法なんていくらもあるだろうよ

自民党の割とえらい人が、国会議員の世襲制限を唱えているらしい(参考)。「2009年度補正予算案を成立させると同時に、自民党も身を切っていると思われないと選挙には勝てない」という理由だそうだ。確かこの手の案は野党も出していたはずで(参考)、合意できるなら成立するんだろうが、もちろんそう簡単にはいかない。そうなれば自分にも火の粉がふりかかるはずの一番えらい人も反対してるし(参考)。

詳しいことは知らないが、国会議員の世襲化が進んでいるらしい。少なくとも首相に関しては、最近の人はほぼ政治家の家に生まれているそうで(参考)、まあ「家業」ってわけだ。もちろん当然そういう人たちも有権者から選ばれてるわけなんで、その人たちがそれで満足なら外から口出しすることもないのかもしれないが、問題意識を持つ人も多い。

というわけで、世襲議員がことのほか多い自民党としては、何か対策を打たないと選挙が心配、という人が出てくるのだろう。とはいえ、ことがことだけに、素直に「はい」と言う人は少ないはず。ある特定の家に生まれた人が政治家になれないというのは、ある特定の家に生まれた人だけが政治家になれるのと同じくらい法的に問題がありそうだし。ジレンマだ。いや困ったね。

・・・なんていうわけがない。わが国が誇る美風である「骨抜き」をもってすれば、こんなジレンマなどものの数ではない。かたちだけ世襲制限を実施したように見せかけて、実態はほとんど影響を受けずにすませることなんて、その気になれば容易にできよう。その証拠に、素人の私がちょっと30秒ぐらい考えただけで、このくらいの「実現可能」な案が浮かんでくるではないか。これなら、名も実もとれる。めでたしめでたし。

(1)選挙区がちがえばいいことにする
この意見はすでに出ている。最近は選挙区も小さいし、隣の選挙区でもいいことにしとけば、まあ誤差みたいなもんだ。「郷土の星」にはちがいないわけで、地盤は問題なく引き継がれよう。なんなら一族でその都道府県の全議席を占めてしまえ。

(2)連続して立候補しなければいいことにする
これもすでに出ている。親が引退して、子が同じ選挙区から出るというパターン。まあ1回間を空ければいいんだから、例の「コスタリカ方式」みたいなことをやれば楽勝(そういえば、コスタリカの選挙制度は正確には「コスタリカ方式」と呼ばれるものとはちがう、と聞いたことがあるな)。

(3)禁止する「世襲」を、親族と同じポストに就くことと定義する
要はことばの定義の問題だ。ちがうポストなら世襲とはいわないことにしておけば、首相になりたい人はめんどくさいかもしれないが、それ以外はなんとかなりそうじゃないか。大臣ポストなんてたくさんあるんだし、どうせどれだって似たようなもんだろ。「国会議員」はポストではなく地位であって、「予算委員会委員長」みたいなのをポストという、としておけばまあかぶるまい。

(4)「世襲」の判定基準とする「親族」を「一親等の血族」に限る
これも定義の問題。官僚の皆さんがお得意の立法テクニックを使えば、「特定親族」みたいな決め方をすることも簡単。一親等までに限っておけば、親族の範囲はずいぶん限られよう。どうせそういう家は親族内に政治家がたくさんいるだろうから、他の親族のところに行って引き継げばいい。

(5)「実力で勝ち取ればいい」ということにする
世襲がいけないのは、実力もないのに親の七光りなどで政治家になってしまうことだ、という考え方がある。もしこれをとるなら、じゃあ実力で当選したならいいじゃん、というのは有効な反論となろう。どうやって「実力」を証明するか。そうだな、自党からも対立候補を立てて勝ったらよし、とするのはどうか。これなら、あて馬として弱い対立候補を立てればいいし、有権者の人たちだって「察して」くれるだろう。あて馬になった候補には、どこか別のところで「恩返し」をしてやるとよい。

(6)他の家に養子に出せばいいことにする
他の家の子になれば世襲ではない、というのはまあある意味ストレートな解決策であろう。

(7)改名する
養子までやるのはめんどくさいよ、という向きには、「改名でおk」ぐらいですましてやる、という手もある。裁判所に認めてもらえるかどうかは事情によるだろうが、まあだめでも「通り名」を変えたり、「芸名」をつけたりするという「奥の手」があるぞ。ほら、いたじゃんそういう人。

(8)野党もやったらうちもやる、という
でもなあ、本当にやるのはいろいろたいへんだよなあ、ということもあろう。実際の政治では、「やるやるポーズ」というのは有効な戦術だ。これだな。一番簡単なのは、「野党もすべてやるならうちもやる」といういい方。確かに世襲議員が一番多いのは自民党だろうが、民主党にだっているわけで、本気でやろうとすればそれなりに抵抗もあろう。そうこうするうちになんらかの骨抜き策で与野党合意に至る可能性だってあるし、すったもんだしてるうちにうやむやにできる可能性だって小さくない。ポーズとして出してみる価値はある。

(9)憲法改正で対応する、という
「野党がやったら」だと本当になっちゃったら困るじゃん、という心配症な方もいるかもしれない。そういうときはこれ。憲法改正で対応する、といういい方はどうか。これまたそのうち実現しちゃうかもしれないけど、どうせ本当に憲法改正の話になったら、他にいくつか「爆弾」があるわけで、そっちで紛糾してるうちに、世襲制限なんて「小さいこと」はみんなきれいに忘れちゃうよきっと。へーきへーき。

(10)実施時期を「別途政令をもって定める」にしておく
そうはいってもなあ、それじゃあ本気にしてもらえないじゃん、という向きもあろう。そんな方にはこれ。これまた官僚の皆さんお得意の「寝技」。実施時期を「別途政令をもって定める」にしておくのだ。「重要なテーマなので慎重に検討を」とかいって、審議会つくって検討とかしてるうちに5年や6年はかるーくかかる。そのころにはもう、政令のことなんてみんな気にしちゃいない。「あれはどうしたっけ?」とかいってるうちにさらに10年や20年はたって、気づいたらもう「半世紀も前じゃん」てことになるだろうから、そのころには当初の趣旨なんて誰も覚えていなくて、「いつまでもやってたら無駄だからやめろ」って話になるって絶対。

というわけで、まあ損はなさそうだし、いっとく分だけいっとけば、というわけだな。がんばってね。

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Comments

・国民の生命財産を守るため
・お国の為に死んで来い

Posted by: | April 19, 2009 at 05:24 PM

他にも、子ではなく親の方の任期を15~20年に制限してしまうという手もあります。親子には25~30くらいの年齢差ができてしまいますので、例えば親が50から65まで議員を務めたあと、すぐ子が立てば35-40くらい。子が引退する頃、孫はまだ下手すれば20代です。

世襲が成功するのは「親の人脈」「後援会組織」の問題ですから、この2つがライバルの成長を阻害するほどになる前に世代交代させてしまえばなんとかなります。

それに、今だとある人が政治家を志してからそれなりの発言力を持つまで、大体20年くらいは過ぎているでしょうが、そんなに経てば社会のあり方も随分違っているでしょう。
この「センス・文化の新陳代謝が悪い」というのが(世襲も一因になってますけど)、悪影響を及ぼしている気がします。

ただ、これへの反対は世襲制限より強いでしょう(というか、強かった)けどね。

あとは、20年前のセンスで政治が動くことと、経験も人脈も未熟な内に要職についてしまうことのどちらがより悪影響があるか/補完が難しいかで決めればいいかと。
(後者は議員経験者をスタッフに抱える方向に行くか、参議院は制限外にして「顧問院」化すればなんとかなるでしょう。それもまた”骨抜き”の1つの形になるかもしれませんが)

Posted by: 劣 | April 20, 2009 at 12:21 PM

コメントありがとうございます。

さん
私が書いたのは、政治家の皆さんが自分の職と利権を守るための方法です。「お国の為に死んで」しまっては元も子もありません。それではいけませんねぇ。

劣さん、
私が書いたのはあくまで「一見対策をとったように見えるが実際にはぜんぜん対策になってない方法」です。ご提案いただいた方法では、ある意味対策に「なってしまう」ではないですか。これもいけませんねぇ。

Posted by: 山口 浩 | April 20, 2009 at 07:05 PM

まったくですね(苦笑)
自分の興味ある部分だけ目に入って、エントリの主旨を忘れる(政治制度)オタっぷりを晒してしまったようです。申し訳ない。

Posted by: 劣 | April 22, 2009 at 12:00 PM

劣さん
いえいえすいませんこちらの勝手な都合でして。

Posted by: 山口 浩 | April 24, 2009 at 12:08 PM

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