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国立のマンガ喫茶、けっこうではないか

今日衆議院を通過した平成21年度補正予算案に、アニメや映画等、「日本ブランド」の振興のため、「国立メディア芸術総合センター」を建設する計画が含まれている。アニメ、漫画、映画等、いわゆるメディア芸術の作品を展示し、来場者数の目標は年間60万人。お台場が候補地で、建設費は117億円とか。当然ながら賛否両論のようで、民主党の鳩山由紀夫幹事長は「国立の漫画喫茶だ。大変な浪費で、ばかばかしい」と語った由(参考)。自身のウェブサイトで長いこと謎なFlashアニメを流してたお方とは思えない発言だが、議論の余地があるのはまちがいないだろう。

どれどれと思って、少しだけ中身を見てみる。

予算案を見てみる。歳出総額13兆9,256億円だが、予備費から8,500億円繰り入れたりしてるので、「経済危機対策関係経費」の総額は14兆6,987億円。この件は一般会計予算に入っていて、「(5)底力発揮・21世紀型インフラ整備」の「ソフトパワー強化・観光立国推進等対策費」で「文化・芸術支援対策費」31,481百万円の中に入るんだろう(資料)。内訳はこう。

独立行政法人国立美術館施設整備費 15,721
文化振興費 6,250
独立行政法人日本芸術文化振興会施設整備費 5,661
独立行政法人国立文化財機構施設整備費 2,101
文化財保存事業費 1,747

これだとどこにその117億円が入ってるのかよくわからない。で、文部科学省の予算資料「平成21年度補正予算(案)の概要」を見ると、合計金額は同じなんだけど内訳がちがってる。支出目的別と予算費目別とでちがうってことなんだろうか。

(9)文化芸術の振興-映画・アニメ等の「日本ブランド」の確立 315億円
①映画・アニメ等の「日本ブランド」としての文化芸術の振興 237億円
・国立メディア芸術総合センター(仮称)の設立 117億円
・映画フィルム等のナショナル・アーカイブ化 58億円
・地域文化芸術振興プラン(47都道府県)  47億円
・伝統文化親子教室(囲碁、将棋、華道、茶道など)、国宝・重要文化財(建造物)の防火・防犯設備の緊急整備 15億円
②文化振興のための基盤整備 78億円
・東京国立博物館東洋館改修
・国立劇場、新国立劇場設備整備など


まあいいや。とにかくこの中ってこと。少なくともこれだけじゃ、具体的に何が必要で何が必要じゃないかなんてことはわからない。で、その「国立メディア芸術総合センター」だが、個人的には、発想自体として悪くはないと思う。「国営の芝居小屋」だって「国営の画廊」(売ってくれないけど)だってあるわけだし(いや別に、永田町に「国営の動物園」があるなんて言わないよ?)、いちがいに否定したものでもなかろう、と。ま、ポップカルチャーに理解が薄いのは年寄りの常だし、野党としては与党の案に文句をつけざるを得ないんだろうし。

ただ、言いたいことはある。どうせ使うなら、より賢く使ってほしいと思うし。で、3つほど。

(1)「美術館」より「図書館」をめざせ
今の案がどんなものなのかよくわからないが、「芸術センター」って名前からして、「美術館」的なものを想定しているような雰囲気が漂っている。しかしむしろ、イメージとしては「図書館」、それも国会図書館のような感じで考えていくべきではないか。実際の美術館がどうなのかは知らないが、美術館というと、どうも「優れた芸術作品」を選んで収蔵していくという印象がある。しかし「メディア芸術」のようなものは、価値の評価があらかじめ定まったものばかりでは必ずしもない。今の基準で選ばれたら、漏れてしまうものが少なからず出てくるだろう。保存が間に合わず、消えてしまうものも出てくるはずだ(実際、もう消えてしまったものがたくさんあると思う)。これに対して図書館は、あくまでイメージだが、より幅広く収蔵していくような印象がある。特に国会図書館のような図書館は、あらゆるものを収蔵していくという方向性だろう。その意味で、「美術館」ではなく、ぜひ「図書館」的な方向で。「国営の漫画喫茶」よりは「マンガ、アニメ、ゲームの国会図書館」でひとつ。

(2)「ハコモノ投資」は最小限に抑えるべき
「国営のマンガ喫茶」かどうか別として、お台場のような場所(ある意味「聖地」だな)に、この分野で人が集まれる場を用意すること自体は必ずしも悪くないと思う。主に観光的な意味合いで。たとえばお台場には日本科学未来館という「国営のイベント喫茶」(失礼)もあるが、他にも類似の施設があるから重複して無駄だという議論はあっても、この種の施設を国として持っておくべきだという点については、さほど議論の余地はないのではないか。ただ、せっかくつぎこむ貴重な国費のかなりの部分が建設費に消えてしまうのはあまりにも惜しい。それだけ金があるなら、この業界のために使ってほしい先は他にも山ほどあるだろうし、むしろそこまで使わなくてもいいかもしれない。別に新しく建てなくてもいいんじゃないか?東京都に相談してみるといい。空いてる「ハコ」やしかたなく無理やり埋めてる「ハコ」などお台場にはけっこうあるんじゃないかな(ええと、確か近くに・・)。いえば喜んで空けてくれるだろう。事務所仕様で使いにくいかもしれないが、そのくらいは我慢してもらったらいいじゃないの。来場者は建物を見に来るんじゃないんだよ?

(3)既存の他の施設との連携を考えてほしい
特定の場所に大きな施設を作ると、他の類似の場所はどうするという問題がある。特に最近は、アニメやら何やらで町おこしみたいなところがたくさんあるだろう。それぞれ特色を出せばいい、というのはわかるが、いっぺんに見られないというのも不便だ。分散のメリットと同じように、集積のメリットもある。なんらかの方法で、同ジャンルのほかの施設との棲み分け、ではなく共存のしくみを考えてもらいたい。ネットを活用してコンテンツを相互利用できるようなしくみを作るとか、お互いの価値を高めるような方向性でうまく連携できないものか。保存も、デジタル技術をできるだけ活用して省スペース路線でいったほうがいいと思うな。幅広く収集し蓄積するという上記の趣旨からしても、すべてをそのままとっておくのはスペースやコストの面で難しかろうから、デジタルアーカイブとして残すものがあっていいと思う。


とりあえずこのへんで。基本的に、なんでもいいから金を使って需給ギャップを埋めさえすればいいという考え方にはあまり賛成できないが、これは将来に利いてきそうな気がする、ということで。繰り返すが、どうせ使うならせめてうまく使ってほしい。

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