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August 17, 2009

選挙公示後のブログ更新についてお役所に聞いてたらい回しにされた件

先日、twitterでのつぶやきが選挙運動にあたるかどうか、みたいな話題で一部が盛り上がっていたが、twitterもウェブサービスの1つなわけで、特殊な扱いになるわけがない。とはいえ、そもそも何がいけないんだっけ?というあたりを確かめたかったので、ちょっと聞いてみたら、見事にたらい回しにされたうえにうやむやにされた。ま、こうなるだろうとわかった上でのことなんだが、見事な官僚的対応が面白かったので書いておく。

もちろんこれは個人的に照会して個人的に受けた回答を自分側の記憶をもとに再現したものなので、これが絶対に正しいとか主張するものではない。これを信じて何かやって摘発されても私は関知しないので念のため。関心のある方は自分で聞いてみるといい。たくさんの人がいっぺんに電話してきたら大変だろうけどねえ。

Twitterと選挙について、民主党の逢坂誠二前衆議院議員が総務省に聞いた結果というのをブログに書いている。文章はリンク元をご覧いただくとして、結論はもちろん「現在、お尋ねのツイッターは選挙運動のために使用することができません」と。

で、ここで関係する法律として総務省が挙げたのが公職選挙法第142条と第146条。前者は候補者側の話だろうから、政党や政治家と関係ない私は主に第146条関連ということになる。

(文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
第146条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第142条又は第143条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
2(略)

ふむ。この文章だけからすると、「公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名」を表示しなければいいのか?と読めなくもない。

しかしだ。総務省は、選挙運動期間中のホームページの更新についてこんなこともいってる。

(選挙運動期間中のホームページの更新について)
選挙運動期間中のホームページの更新自体が直ちに公職選挙法に違反するものではありませんが、記載した内容によって、その内容が選挙運動のために使用されるものと認められる場合には、同法第142条の規定に、その内容が選挙運動のために使用するものと認められない場合であっても、候補者の氏名等を表示したホームページを更新する行為が選挙運動のために使用する文書図画の頒布の禁止を逃れる行為に当たるときは同法第146条の規定に、それぞれ抵触することとなります。
いずれにしましても、個別の事案がこれらの規定に抵触するかどうかについては、個々具体の事実に即して判断されるべきものです。(総務省選挙部選挙課)

要するに、「認められる場合」が何かがよくわからない、というのがポイント。

そこでまず、おおもとに聞いてみた。総務省自治行政局選挙部(tel:03-5253-5111(代表))。で、回答はというと、一般論として

選挙運動期間中のホームページの更新自体が直ちに公職選挙法に違反するものではありませんが、記載した内容によって、その内容が選挙運動のために使用されるものと認められる場合には、同法第142条の規定に、その内容が選挙運動のために使用するものと認められない場合であっても、候補者の氏名等を表示したホームページを更新する行為が選挙運動のために使用する文書図画の頒布の禁止を逃れる行為に当たるときは同法第146条の規定に、それぞれ抵触することとなります。
いずれにしましても、個別の事案がこれらの規定に抵触するかどうかについては、個々具体の事実に即して判断されるべきものです。

見解のまんま。かつ棒読み。じゃあってんで、あらかじめ用意しておいた7つの例文を挙げて、こんなのはどうだ?こんなのはどうだ?と食い下がってみた。こんな感じの。

(1)日本の農業もがんばってほしい。
(2)日本の農業振興政策をさらに充実させるべきだ。
(3)日本の農業振興政策をさらに充実させる一環として、○○政策が必要だ。
(4)日本の農業振興政策をさらに充実させる一環として、○○党が唱える○○政策が必要だ。
(5)日本の農業振興政策をさらに充実させる一環として、○○党が唱える○○政策が必要だから、私は○○党に投票する。
(6)日本の農業振興政策をさらに充実させる一環として、○○党が唱える○○政策が必要だから、みんな○○党に投票しよう。
(7)○○党に投票しよう。

しかし相手も当然ながら手ごわい。

仮定の質問には答えられません。

と。じゃあ、具体的にブログに書いてみるから判断してくれといったら

全体をもって判断するので、個別の記載事項について違法かどうかを判断することはできません。

さらに食い下がると「お気持ちはよくわかりますが」とはいうのだが、立場上それ以上いえないのだろう。でも何をやったらだめなのかわからないものに対して罪を問うというのは憲法違反ではないか?みたいな理屈をこねてみたら、めんどくさくなったのか、

私たちには個別事例について適法違法を判断する権限はありません。

と逃げにかかった。じゃあどこが管轄なの?と聞いたら「捜査機関」というので「警察」かと聞いたら否定せず。こういう場合は検察のほうがいいのかもしれないが、警察の人のほうが話しやすそうな気がしたので、とりあえず警察ということにして話を進める。でもネットだから全国だし、どこに聞けばいいの?と聞いたら、

まずはお住まいの場所の警察に聞いてみては。

と。じゃあってんで、次にかけたのが警視庁総合相談センター(#9110、または03-3501-0110)。用件を話したら住所を聞かれて、そういう話はその所轄警察署に聞け、といきなり門前払い。刑事課の知能犯係が担当であると。

で、所轄署の刑事課知能犯係にかけてみた。同じ質問をしたら、「なぜここに聞く?」と。でも経緯を説明したら事情を察したらしい。所轄の方はこうやって仕事を押し付けられることがよくあるんだろうな。質問に対してはやはり、

仮定の質問には答えられません。

同じ対応なので、同じように具体的にブログに書いてみるから判断してくれといったら

全体をもって判断するので、個別の記載事項について違法かどうかを判断することはできません。

とこれまた同じ答え。ただ、この人は中央の方々と比べて話しやすそうだったので、もう少しつっこんでみた。常軌の例文をまた挙げて、これどうだろう?これどうだろう?と聞いてみた。あまり言いたがらないのだが、さらに問い詰めると、この中では(1)(2)あたりまではシロだが(3)ぐらいになると怪しい、ということらしい。(5)(6)(7)は完全にアウト。(3)~(4)あたりがグレーだが、あくまで全体で判断するので場合によっては、と。でも全体ってどこかわからないじゃんどこで違法かどうか判断するの?となおも食い下がっていたら、

その記載を読んだ方がどう判断するか、ということも関係してくる。

と。なに?じゃあ読み手が決めるの?それって、読み手から通報があったら対処するってこと?と聞いたら、「そういうこともある」と。じゃあ「警察が通報されないで動くってことはあるの?」と聞いたら「お答えできない」と。さらにいろいろつっこんだのだが、「一概にいえない」「場合による」「全体をみて総合的に判断」で押し切られた。

まあこれも本来答えられる話じゃなかろうとは思う。ただ、警察が独自に動いて選挙違反を摘発なんていうのはあとあといろいろめんどくさいことになるのはわかりきってるから、要するに基本的には通報ベースで動くってことなんだろうな。そうはいわないけど。話していてなんとなくの印象だが、警察の人の関心は、主に否定的な表現に向かっているようだ。こちらが何度も「ブログ」とことわっているのに最後まで「掲示板で」とか言ってたので、典型的には2ちゃんねるでの誹謗中傷のようなものを念頭においているらしい。通報ベースで動くとすれば、それも当然のことだろう。てことは、昨今の犯罪予告の事例じゃないが、「匿名」でやってたって安全じゃないってことだな。

というわけで、当初の予想通り(私が答える立場だったら同じように答える)、見事に敗れ去ったわけだが、少なくとも、何が罰せられるか事前にわからないというのは非常にまずいと思う。法律に抵触するというのは、現行法の規定を前提にした話なので、法律を変えれば状況は一変する。政治家の皆さんぜひよろしくお願いしたい。

ちなみに、ネットでの選挙運動について、楽天が出した公開質問状に対して、自民、民主の両党の答えがここで比較されている。どちらも積極的な方向、ととらえられなくもないが、ちがいが3つ。自民党は誹謗中傷対策に力点をおき、メールの利用を除外し、現行公選法の文書図画、郵便や電話に対する規制との整合性をとるべきとしている。これに対し民主党は、メールも含むあらゆる手段を解禁すべきとしている。私としては、適切な範囲の誹謗中傷対策は必ずしも悪くない(現行法で不足とも思わないが)と思うが、少なくとも、現行公選法の規制をそのまま維持することを前提とした議論にはちょっと賛成しかねる。現行法は、頒布に金のかかる手段を前提として、公平のために頒布量そのものを規制しようというもので、ネット時代にはまるで合わないからだ。


※2009/08/20追記
はてなブックマークに「裁判所に聞けよ」「いや選管だろ」みたいなコメントがあるのでひとこと。裁判所はそもそも具体的な事件に対して判断を示すところなのでこの種の問い合わせには答えない。選管については総務省に「どこが違反かどうかを判断するのか」と聞いた際に「選管ではなく捜査機関」との見解を得ている。

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Comments

官庁に電話で質問しても、想定された答え以上のものは出てきませんよね。電話先の官僚さんは「質問関連の法案にそれなりに明るくてたまたま手が空いてた人」でしかないし、そうでなくても発言に対して責任の取りようがないですから、解釈や見解は述べられませんしね。

じゃあどこに訊けば…というと、日本では訊く先が用意されてないという罠。

Posted by: はむ | August 17, 2009 04:10 PM

はむさん、コメントありがとうございます。
もちろん、しくみは承知の上で聞いています。公務員に限らず民間企業でも、こういう問い合わせにはこういう答え方をするでしょう。お互いにものわかりが悪いふりをして丁々発止やるわけですね。
要するに、こんなあいまいな法律おかしいよね?という主張をしたかったわけですが、警察の方の答えがおもいがけず「懇切」で、少しニュアンスがわかりました。まあ、グレーな発言は日本中で数限りなく行われるわけで、全部取り締まるわけにはいきません。あくまで自己責任、という前提ですが、ちょっと何かやったぐらいでどうこうということにはならなそうな気もします。いわゆる「みんなで渡ればこわくない」の類かもしれません。
もちろん、法改正で抜本的に解決するのが王道と思います。結果がどうあれ、政治家の皆さんには選挙後遅滞なくやっていただきたいと期待しています。

Posted by: 山口 浩 | August 17, 2009 10:50 PM

罪刑法定主義からするとありえない状態ですね。

やってみたいと思っても個人の楽しみでやるわけにはいかないことですから、読んでいて楽しい記事でした。

世界ではTwitterにノーベル平和を…という話でもめているところもあるのに、日本ではこれか…と思うと情けない話です。若者に選挙に行ってほしいのであれば早く解禁していただきたいものです。

Posted by: Shuji | August 31, 2009 10:59 PM

Shujiさん、コメントありがとうございます。
これで若者が選挙に行くかどうかはわかりませんが、言論の自由の観点から、ということでなんとかしてほしいと思います。

Posted by: 山口 浩 | September 01, 2009 12:46 PM

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