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September 23, 2009

チベットの「生き仏」、ビデオゲームで煩悩を払うの巻

「活仏」と呼ばれる人がいる。いわゆる「生き仏」として認定された人のこと。Wikipediaをみると「チベット仏教の教義上において、この世の衆生を教え導くために、如来、菩薩の化身として現世に姿を現したとされるラマ」とあって、正しい定義かどうか私にはわからないが、まあそんなものなんだろう。転生すると信じられていて、先代が亡くなると予言に基づいて後継者を見つけるのだったと思う。あのダライ・ラマも活仏の1人であるわけだが、そのダライ・ラマ、その次にえらいパンチェン・ラマに続く第3位にあたる活仏である「カルマパ17世」が、ビデオゲームを絶賛してるらしい。

この「カルマパ」というのはチベット仏教の「カギュ派」の最高指導者にあたる由。ちなみにダライ・ラマやパンチェン・ラマは「ゲルク派」。

ネタ元はThe Times of Indiaの「'Video war games satiate my feelings of aggression'」という記事。どうやら、この方がDelhiを訪問された際にインタビューを受けたということのようだ。

で、この方がゲームについてどう語っているかというと、こう。

Q: "Is that why you play war games on your play station because many might say it's inappropriate for a Buddhist monk dedicated to peace to play war games?"

A: "Well, I view video games as something of an emotional therapy, a mundane level of emotional therapy for me. We all have emotions whether we're Buddhist practitioners or not, all of us have emotions, happy emotions, sad emotions, displeased emotions and we need to figure out a way to deal with them when they arise."
"So, for me sometimes it can be a relief, a kind of decompression to just play some video games. If I'm having some negative thoughts or negative feelings, video games are one way in which I can release that energy in the context of the illusion of the game. I feel better afterwards."
"The aggression that comes out in the video game satiates whatever desire I might have to express that feeling. For me, that's very skilful because when I do that I don't have to go and hit anyone over the head."

ふむ。「emotional therapy」ときたか。生き仏にもいろいろ感情はある、ときには息抜きやら気晴らしやらが必要なときもある、ビデオゲームですっきりすれば人に当たらずにすむ、といったところのようだ。ふうん、生き仏にも煩悩があるんだねえ、とまあ考えてみれば当たり前のことに妙に納得。

もちろん、人々からはこの件あまり評判がよくないらしい。なんせ「play station」で「war games」だそうだし、立場上いろいろ差し障りがあるだろう。ご本人はインタビュアーから「But shouldn't meditation take care of that?」と聞かれて「No, video games are just a skilful method.」と答えている。冴えたやり方、ということだろうか。ともあれ、ゲームには瞑想では得られない価値がある、と認めているわけだ。こうなれば日本の仏教界でも、などとは私の立場上差しさわりがあるので書かないが、ゲームを考えるときに、教育上いいか悪いかといった視点とはちがったところで、娯楽として許容されるものかどうかという考え方があるのではないか、ぐらいには書いてもよかろう。ほら、体とか教育とかに悪いとわかってても許容されてる娯楽っていろいろあるじゃん。

ここらで記事を少し離れる。まあこの「生き仏」が生き抜きやら気晴らしやらを求める気持ちはわからなくもない。知っている方も多いと思うが、カルマパ17世は、本名を「Ogyen Trinley Dorje(ウゲン・ティンレー・ドルジェ)」というのだが、1985年6月26日生まれの現在24歳。公式サイトに写真が出てるが、まあ若者だ。活仏と認定されたのは1992年。チベットは中国領になってるわけで、認定以来中国政府の庇護と監視の下に置かれていたわけだが、2000年にインドへ亡命した。14歳のときだ。それ以来現在に至るまでインドのDharamsala(ダラムサラ、つまりダライ・ラマの亡命政権の本拠地だ)で暮らしている。当然ながら、自由に外出できるような身分でもない。ちょっと想像を絶する境遇だが、ストレスがたまりそうな環境であることはまちがいなかろう。

今回のデリー訪問の意図ははっきりとは書かれていないが、おそらくダライ・ラマ14世が2009年11月にインド北東部アルナチャルプラデシュ州への訪問を検討している(参考記事)という話と関係があるだろう。ここにはチベット仏教の聖地があるんだが、同時にインドと中国の両国が領有権を主張している土地でもあって、いわば国境紛争の現場だ。当然ながらこれは中国を刺激する。インド側はこの問題をあまり大きく取上げていないようだが、中国側はそうではない。カルマパ17世の動きは、この問題に対する国際社会の関心を高めて中国を牽制する、といったあたりなのかもしれない。

インタビューではもちろん宗教者らしく冷静な受け答えをしているが、やはり内心はいろいろあるんだろうな、と勝手に推測。となると、戦争ゲームでストレス解消!というのも、ほんのちょっときな臭く聞こえてしまったりもするんだが。

ここでやはり気になるのが、その「生き仏」様がお好みの「war games」って何だろう?というあたり。PS、と書いてあるがお金持ちだからやはりPS3なのだろうねえ。となると、最近ではたとえばこんなあたり?


「生き仏」が「この種」の煩悩を持っているかどうかわからないが、もし持っているとすれば、さらによろしくなさそうだから、早急にこのゲームで解消するがよろしかろう。


※追記
ビデオゲーム以外にも、この生き仏様、iPodでヒップホップを聴くのがお好き、ともある。ご本人の言い訳が面白いのでぜひ原文にてご確認を。土地柄、iPhoneが使えるのかどうかは知らんが、ネット環境はあるんだろう。twitterとかやってたら面白いのに。

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