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September 07, 2009

新党結成をめざす皆さんに党名のご提案を10ほど

やや出遅れ気味だが賞味期限切れとも思えないので書いとく。「みんなの党」結成はまさに衝撃だった。いや政治的な意味合いとかもいろいろあるんだろうが、なんといってもこの党名だ。党名というと主義主張を党名につけるのが「常道」かと思っていたところに、この党は「みんな」ときた。結党宣言を見ると、

我々は、特定の業界や労働組合に依存することなく、一人ひとりの国民に根ざした政党、「みんなの党」を結成することとした。この、しがらみのない立場から国民本位の政治、改革を断行し、真の「国民政党」たらんと決意している。

とあって、これ自体はまあわかる。とはいえ、ひらがなでしかも「みんな」という柔らかいことばを使ったことは実に新鮮だ。親しみやすいし、呼びやすい。しかし、この党名でさらに注目すべきは「の」だろう。ええと文法はよく覚えていないのだが、「の」は助詞、にあたるのだろうか。助詞の入った党名というのは、寡聞にしてこれまで聞いたことがない(その昔、「ベ平連」という団体があって、正式名称は「ベトナムに平和を!市民連合」だった。名称のつけ方としてはまあこれと少し似てるな。ただ、「ベ平連」は長すぎて正式名称で呼ばれることがあまりないだろうが、「みんなの党」は略すのが難しいからこのまま呼ばれることになるんだろう)。仮に自由民主党が「自由」で「民主」的な社会をめざす党だとしても、「自由民主の党」ではなく「自由民主党」であるわけで、その意味でこの党名はまさに画期的なものといわざるを得ない。

この「革新」は、政党名というニッチな世界に新たな可能性を開いた。ひらがなでいいんだ、「の」をつけていいんだ!となれば、政党名の可能性は一気に広がる。というわけで、今後新党を結成したい政治家や政治家志望者の方のために、政党名を例によって10ほど考えてみることにする。もちろん、いつもどおりの「ネタ」なので真に受けないように。

ちょっとだけ調べたのだが、政党名に特段の規制や基準がある、ということでもないらしい(詳しい方ご教示を)。とはいえ、党名に「党」が入ってないというのもどうかと思うので、とりあえず、必ず「党」という字は入れる、という前提でいく。

威勢のいい党名

(1)政権与党をめざす党

略称はどう考えても「政権与党」「政権党」「与党」となるだろう。いや実に縁起がいいではないか。一応「めざす」がついているから、うそをついていることにはなるまい。あんまりうるさいことを気にしなければ、非常に幅広いバリエーションが考えられる。たとえば、

(2)衆参両院で過半数を占める党
(3)国民の間で絶大な支持を受けている党

などが考えられよう。実態が伴わないとなかなか恥ずかしそうだが、まずは形から入るという発想もある。「新党」とかいってもう新しくない政党もあるし。ま、ここは大言壮語乙、ということでひとつ。


長い党名

(4)地方分権と財源移譲を進めて地方を活性化すること、中選挙区制の復活と電子投票の実現で政治を国民に近づけること、天下り禁止と公共事業の改革を通して資源配分のメカニズムを抜本的に変革すること、負の所得税の導入によって社会福祉と国民経済の活性化をはかることなどを通じて、真の国民主権を実現し、社会的公正と経済的自由の両立をめざす党

これは寿限無方式。アイデアのポイントは、党の政策目標を党名に織り込んでしまうということだ。「自由」だの「民主」だのといった抽象的なことばでなく具体的な政策が党名に織り込んであれば、簡単には破れなくなるのではないか。政党の公約やらマニフェストやらがなんとも軽い口約束になってしまっていることに辟易している国民の中には、こうした党名を「潔い」と考えてくれる人がいるかもしれない。政策が変わったらどうする?そんなの簡単。党名を変えちゃえばいい。実際、政党ってのはけっこう頻繁にできたりなくなったり名前を変えたりしてるんだから、別に毎年名前を変えたってさして影響なかろ。どうせ選挙のとき以外はだれも覚えてないだろうし(あ、それじゃだめか)。


わかりやすさ最優先の党名

(5)この党に投票しようよ

スーパーなどで必ずレジ脇の棚に置かれている商品で、「ママこれ買って」みたいな名のものがあるが、あれだ。「党」が最後に来なければならないという決まりはない。「新党○○」という党名はすでに定着しているわけだし。

これもバリエーションは豊富に考えられよう。たとえば、

(6)私が支持する党
(7)この党に投票すっ党

とか。そういえば、米オバマ大統領の公式ウェブサイトのURLは「my.barackobama.com/」。大統領選当時は「mybarackobama.com/」だったかと思うが何やらいろいろあったらしい。いずれにせよ直訳すると「私のバラク・オバマ」。なんかちょっと(6)と似てるね。(7)は九州限定。


ネガキャン系の党名

(8)○○党にだけは投票しないぞ

「○○」の中には「自民」「民主」「社民」「共産」など、具体的な党名を入れる。ふつう政党というのはなんらか自分たちの主張があって、それを推進するためにそのことばを党名に盛り込むのがふつうだろうが、それに限ることもない。他の政党を否定するかたちでしか自党の主張を表現できない党というのはあるし、他の政党を否定するかたちででしか支持政党を決められない有権者もけっこういたりするから、そういう人たち向けにはこういう党名のほうがわかりやすかろう。

このバリエーションとしては、攻撃対象が政党以外、というものが考えられる。この場合、どこかに「党」と入れとかないと政党とわかってもらえないからご注意。たとえば「○○だけは許さないぞ党」みたいにするのがオーソドックスか。「○○」には「日教組」でも「中韓」でも、「靖国」でも「ネトウヨ」でも、「マスゴミ」でも「カスラック」でも、「児ポ」でも「ゆとり」でも、お好きなことばを。


特定の趣味嗜好を持つ人々を狙い撃ちする党名

(9)べ、べつにうちの党に投票してほしくなんかないんだからねっ

あまりに少数派だとなかなか難しいが、ある程度まとまった支持層が期待できる趣味嗜好というのがあろう。小選挙区制ではなかなか難しいが、そういった方々を狙い撃ちにする党名も考えられる。この党の場合、党の公認キャラクターが成否を握るだろう。コメだって納豆だってパッケージデザインで売れる時代だ。ぜひ名のある方に絵を描いてもらうとよい。「投票してもらう」という点からすれば、たとえどんなに幼く見えても設定年齢は25歳以上とすることが必須。キャラクターボイスもつけないとまずいだろうな。マニフェストは毎月電撃文庫からは書籍スタイルで、角川エンタテインメントからはCDやらDVDやらで発売するのがよろしかろう。当然、イベントなんかもやるといいよ。本格的にやるなら、声優の事務所と契約して候補者の紹介も受けると。うまくすればこれで企業献金に依存しないでいけるかも。

バリエーションをいちいち挙げるのもどうかと思うが、さまざまな嗜好の人向けのものがあろう。メジャーなあたりでは「犬党」「猫党」「甘党」「左党」なんかどうか。「鉄党」「猫耳党」「メイド党」もまあ基本だな。「織田信長党」「伊達正宗党」みたいな感じなら特定の地域の振興にも支持を得やすいかも。「ムー党」なら与党(というか党代表夫人)との連携も期待できようし、「やおい党」ならまちがってUFO好きも入ってくれるかもしれない(そういえば「UFO党」ってのもあったよなあ。与党と連立とか組まないんだろうか)。「ウホッ!いいお党こ・・」とか「お兄ちゃん党ずっと一緒だからね」とかだとちょっとアングラな雰囲気が漂っちゃったりするかもしれないが、まあ深いことは気にせず。ちゃんとライセンスとれば「SOS党」とか「NERV党」とか、「ソレスタルビーイング党」とか「黒の騎士団党」とかもできるかな。とはいえ「なが党は俺の嫁」みたいところまでいくと、やれ「ミサ党は俺の嫁」とか「能党かわいいよ能党」とかみたいにどんどん細分化していって議席確保は難しくなりそうだな。あ、あと、「Perfume党」も相当な支持を得られそうだが、党内派閥間抗争が激しくなりそうなのでちょっとお勧めしにくいな。


隠れた鉱脈を掘り起こす党名

(10)支持政党なし(別名「無党」)

支持政党を聞く世論調査はさまざまあるが(たとえばこれ)、まず例外なく、最も多い意見は「支持政党なし」。ということは、これこそが最大勢力ということになる。これを狙わずしてどうする。そこでこの党名。「支持政党なし」という党を作れば、この党の支持者は「無党派」となるわけで、つまりこれだけで世論調査で一気に最大勢力に躍り出るではないか。

この党の場合、最大の問題は、支持政党なしの人たちが選挙のとき実際に「支持政党なし」に投票してくれるかというとそうはいきそうもないという点だ(党名がこれだったら比例代表で勘違いして書いてくれるかな?)。困ったね。略称を「  」、つまり空白と決めれば、「白票は自党への投票」と言い張ることもできる(?)かもしれない。白票というのが実際どのくらいあるのかよく知らないが、ニコニコ動画のアンケートでは3~5%だったらしいから、地域が集中してれば議席確保も夢ではないかもしれない。政治不信が募れば募るほど勢力が増すという「逆張り」政党だ。


まだまだ他にもいろいろ考えられるがこのへんでやめとく。権利は主張しないのでご希望ならぜひお使いいただきたく(本当にいたらすごいね)。衆議院総選挙は終わったが、政治はまだ続くわけだし、むしろこれからが本番、といったところだろう。そのスジの皆さんの奮起・奮闘を期待しつつ。



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Comments

はじめまして。

山口先生、この案面白すぎです。
Fa党(Fate)なんてあったら
間違いなく投票です。

総裁はあの人がイイナァ。。。。

Posted by: ふじぽん | September 08, 2009 12:33 AM

ふじぽんさん、コメントありがとうございます。
よく知らないのですが、Fateってエロゲでしたっけ?大食いのキャラが出てくるようですが、総裁にしたい「あの人」ってその人のことですかね?

学生さんでしょうか?
ならば、ということで少しだけ「先生モード」でマジレス。この文章はもちろんネタですが、隠しテーマは「現在の各政党は民意を適切に反映したものになっているか」です。今の二大勢力はいずれもあらゆる政治的志向の政治家が同居する「政策の百貨店」となっており、事実上「政策の選択」ではなく「政権の選択」のみを迫られる結果になっていないか、という批判があります。こう考える人にとって、民主党政権の誕生は一通過点に過ぎず、大規模な政界再編が求められる、というわけですね。
もう1つは、現在の選挙制度が地域によって有権者を区分するしくみとなっていることについての疑問です。地域社会が人々の生活の基盤になっている以上当たり前ではないかという意見もあるでしょうが、一方でこの区分が制度制定時の技術水準に縛られているという見方もあります。現代の技術なら、別の区分方法もあるのではないかと。この問題は、少数派にとって特に重要ですね。
そんなこんなを考えるきっかけになってくれればと思っています。

Posted by: 山口 浩 | September 08, 2009 03:46 AM

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