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January 07, 2010

首相の発信は公の色を帯びるから本心は語れない、という話

小ネタ。2010年1月7日朝日新聞の「天声人語」が、首相が始めたtwitterについて取り上げていて面白かった。要するに批判しているわけなんだが。


コラムは、首相が最近ブログ「鳩Cafe」とtwitter(@hatoyamayukio)を始めたことについて、「退職後に喫茶店をやる人」にたとえている。そういう気ままな暮らしに対する願望を持つ人は多いだろうと。とはいえ首相はまだ退職してないし、だいいちきわめて責任重大な激職だ。そんなひまあるのか、という批判をしたいようだ。昨日、自民党の加藤紘一議員が首相にtwitterを使うなといったとかいうニュースが流れていたが、それも引用しながら曰く:

ネットで発信し、国民との距離を縮めたいそうだ。だが、マスターの世間話と違って、どんな小声だろうが首相の発信は公の色を帯びる。これで本心は語れまいs。無愛想な店主のごとく、面白くもない言葉が並ぶだけだろう。
側近と相談して発するつぶやきに、政治の近さを感じる国民がどれほどいようか。

で、「気楽なカフェは「退職後」がふさわしい」と結んでいる。そう遠い先でもなさそうだし、とまでは書いてなかったが、まあそこは本題ではないので捨象。退職後の気ままなつぶやきを読みたいと思う人がどのくらいいるのかという逆のつっこみもあるだろうがこれも無視。

注目したのは、このコラムが、首相の発信は公の色を帯びるから本心は語れない、としている点だ。ほんとうに本心を語れないのかどうかは本心を知ってる本人に聞くしかないが、たくさんの人が注目する場では発言の影響を考えるだろうと思うのは自然。むしろそうであってもらわなければ困る(むしろ心配するなら誤情報の発信やリークによる影響のほうだ。技術的なトラブル、不正行為その他もさることながら、本人の不注意だってこわい)。当然側近と相談すべきだし、忙しいなら誰かに書いてもらってもいい。オバマ大統領だってそうしてたんだし。

Twitterはただの情報メディアであり道具だ。さまざまな使い方がありうるし、実際さまざまに使われている。公的な人や企業のアカウントでは、告知や情報提供、ウェブサイトへの誘導などが多いだろう。もちろん、それが有効かつ有益だと考えるからやるわけだし、フォローする側も、別に官邸の庭に何が咲いてるかとか、昼に何食べたとかみたいな話ばかり聞きたがってるとは限らない。リアルタイムな情報提供によって、活動に関心をもってもらうことができるかもしれないし、首相直接見てもらえる「チャンス」があると思えば、それなりに政治の近さを感じる人もいるだろう。このコラムを書いた人は、おそらくtwitterのアクティブユーザーではないのだろうが、朝日新聞がtwitterの公式アカウント(@asahi)をどんな目的で設置していてどんな効果があるのか、聞いてみたのだろうか。

こうしたリアルタイム性、インタラクティブ性は、マスメディアのほとんどには期待できない。少なくとも新聞にはない。つまりマスメディアだけでは情報の伝達手段としては不充分であるといわれたに等しい。そもそも、首相の発信は公の色を帯びるから面白くもない言葉が並ぶだけというのであれば、マスメディアの取材も同じだ。報道が「本心」、というか面白くもない大本営発表以外の情報を伝えることを目的としていないというなら、ぶら下がり取材などやめてプレスリリースを横流ししてればいいわけで、天唾以外の何者でもない。

自分たちを通さないからいやだという以外に、政権からの情報発信を疎んずる理由がどこにあるのだろうか。

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Comments

天声人語、今日は一段とお粗末でしたね。Twitter談義と藤井蔵相辞任を無理やりくっ付けて、着地で転倒。恥ずかしい。

Posted by: シマダ | January 07, 2010 04:48 PM

この記事の「首相」を「天皇」などに置き換えてみるとなかなか面白いことになるな、と思いました。「天皇に直接見てもらえる「チャンス」があると思えば、それなりに皇室の近さを感じる人もいるだろう」「自分たちを通さないからいやだという以外に、皇族からの情報発信を疎んずる理由がどこにあるのだろうか」云々。

Posted by: Yuu Arimura | January 08, 2010 11:47 PM

コメントありがとうございます。

シマダさん
昔はもっと、という論法はあまり使いたくありませんが。批判するなら切り口は他にもとたくさんあるのに、と思いました。

Yuu Arimuraさん
皇室はどうなんでしょうね。私は国民とともにあるという観点からあってもいいんじゃないかと思いますが、一方で選挙で選ばれる類の職種じゃありませんし、ある意味「遠さ」こそが価値の源泉とみる人もいるでしょう。ええとブログやってる方いませんでしたっけ。

Posted by: 山口 浩 | January 09, 2010 12:02 AM

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