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岡田斗司夫氏の定義により晴れて「非モテ」と認定された件

しばらく前に「モテ・非モテ」みたいな議論がネットでさかんに行われていたように思う。その当時は議論に参加しようとはあまり思わなかったのだが、その大きな理由の1つは「何がモテ・非モテなのかわからない」だった。いろいろな人がそれぞれに定義をしていて、その定義の混乱が白熱する議論のほとんどを作り出しているように見えたので、それに参加するのはあまりに不毛だと思ったわけだ。「非モテ」の人が集っているらしい「非モテSNS」を見ても、「非モテとは=モテない人たち」としか書いてなくて、これじゃ何もわからない。そうこうするうちに時間もたち、すっかり忘れていたのだが、久しぶりに思い出した。岡田斗司夫氏が2010年1月23日付朝日新聞「be」の「悩みのるつぼ」欄で「モテ」に関するきわめて明快な定義を示していたからだ。

この件については、それより前に「岡田斗司夫のゼネラル・プロダクツ」で紹介されていて、それで読んでみたという経緯。質問はリンク元でご確認いただきたいが、要するに「33歳の会社員女性」が「スキがない」といわれ、それが「モテない」原因と悩んで、どうしたらいいかと聞いているわけだ。で、これに対して岡田氏が「モテ」戦略を伝授しているんだが、それに先だって、「モテ」に対して明確な定義を与えている。質問者の女性の関心は「モテない」原因に関係すると思われる自身の「スキのなさ」にあったのに対して、まず「モテ」とは何かがわかってないとだめだ、といっているわけだ。正しいアプローチであろう。

で、「モテ」とは何か?岡田氏はまず、一般的に考えられていそうな「素敵な男性が次々と言い寄ってくる状態」という定義を否定する。じゃあ何かというと、「男に自分を口説かせるようにしむける行動の成果」であると。つまり「待ち」ではなく「攻め」、「状態」ではなく「行動」に着目しているわけで、これもまた非常に適切な考え方のように思われる。しかし岡田氏の論考はここでとどまらず、「モテ」をより具体的に定義している。すなわち、

友達以上、恋人未満をキープしてください。そういう男性を3人以上作りましょう。
おぼえておいてください。この状態が「モテ」です。

であると。つまり、「モテる」とは「友達以上、恋人未満の男性を3人以上キープしていること」だ。うむ。これが正しいかどうかについての判断は私にはいたしかねるが、少なくとも非常に明確で、かつ直感的に納得がいくある種の「相場感」がある。で、この状態で「常に新規開拓を続け、より良い人があらわれたらチェンジ」を1年間続けろ、と。そうこうするうちに見る目もついて、「それなりの水準」の男性をゲットできるであろう、と。問題は実行可能かどうかだが、この点でも岡田氏の戦略はまず「見た目が標準以下」で「中身の良い男」を選べと明快。むやみに無理めの「素敵な男性」を狙うよりよほど現実的だ。とにかく、「スキ」なんてものを気にしなくてもいいということにはなる。記事には小見出しで「『スキ』考えるより『モテ』戦略を」とあるが、まあそういうこと。

「標準以下を」のくだりで、「婚活」の提唱者である中央大学の山田昌弘氏のことばを思い出した。山田氏は婚活にいそしむ女性たちに「がんばるほど目は肥え、理想は高くなり、現実は遠のく」と喝破(2009年10月17日朝日新聞オピニオン欄)している。曰く:

経済学者ほどには人間に合理的行動を期待してはいないつもりだったのですが、女性の理想の結婚に対する執着は、予想を超えていました。あるフリーター女性は『いつか希望の結婚相手が現れると信じてます。私、くじに当たったことがないから、結婚相手には当たる気がする』と真顔で言うんです。MBA資格を持ちながら仕事を探している30代半ばの女性は『すぐにでも結婚したい』と訴えましたが、条件は『年収1千万円。周りの人はみんなそうだったもん』。

岡田氏のアドバイスは、こうした女性たちにも向けられたものだろう。男性の外見と収入にどのくらいの相関があるのかは知らないが、どちらにせよ、高すぎる期待が行動を妨げ、望む結果から遠ざけるというわけだ。

ともあれ。上記の定義をこのまま裏返すと、男性の「モテ」とは、「友達以上、恋人未満の女性を3人以上キープしている」状態と定義される。これにしたがえば、「モテ」とはかなりハードルの高い状態といえよう。1人の男性に女性が3人群がってるという状態が誰にでも実現できるものではないということは誰にでもわかる。どのくらいかは想像がつかないが、仮に平均から2シグマくらい離れた上位5%、ぐらいならありうるだろうか。

男女どちらの場合でも、この定義では世の中の大半の人が「非モテ」となるはずだ。晴れて私も「非モテ」の仲間入りが確定したことになる。先日多数の隠れモテ会員を強制退会させたという「噂」も出ている「非モテSNS」に入れてもらえるだろうか。いや別に入りたいとは思っていないんだが。

とはいえ、岡田氏も自覚しておられるが、この回答、男性、特に自らを「非モテ」と考える男性、そうでなくても「3人」の側にいて「チェンジ」されるかもしれない立場の男性には、必ずしも歓迎されるものではないだろう。女性の皆さんも、もし男女逆の立場であれば同様のご意見になるのではないかと思う。ちょうど、「岡田斗司夫のゼネラル・プロダクツ」のほうでも、岡田氏が「自分なりの回答を」と書いておられたので、ちょっとだけ考えてみる。

相談者が「スキ」と「モテ」について聞いてきたから岡田氏はああ答えたのだろうけど、本来、ほとんどの人にとって「モテ」は最終的なゴールではないのではないか。この相談者もおそらくそうだろうが、山田氏によれば「未婚者の9割は結婚したいと思っている」のだそうで、だとすれば相手は3人もいらない。「見る目」を養うという趣旨なんだろうけど、それが望む結果から遠ざかることにつながるというのは山田氏ご指摘のとおり。結果としての「チェンジ」ならともかく、最初から「チェンジ」を志向するのはちょっとどうかと思う。ともかく、結婚がゴールで、それをぜひとも実現したいと思うなら、3人キープの状態を1年も続けなければならない理由は、私には理解できない。

「行動」が重要だというのはまったく同意だが、それにもう1つ加えるなら、むしろ「最初の1人でいいじゃん」ぐらいの覚悟というか割り切りというか、そういうものが必要なんじゃないかな。失敗したらそのときにやり直せばいい、ぐらいの感じ。その意味では「理想の相手」幻想こそが「敵」なわけだ。もちろん「基準を落としてまで探したくない」という方はそうすればいいだけのこと。あ、あともう1つ、忘れちゃいけないと思うのは、相手に対して「圏内」通知を出し続けること、つまり「候補者」であると伝えることだ。現代は失敗への恐れが非常に強い人々が多いようなので、それを取り除いてあげるのは、「最初の1人」を見つけるにも、「3人キープ」するにも、けっこう有効ではないかと思う。それを「スキ」と呼ぶなら、「スキがある」ことは重要ということなんだろうな。


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Comments

先日はどうもありがとうございました(ぺこり)。

ここに書かれてあること、私の研究分野(笑)とかなり重なるのですが、山口さんがおっしゃっていることも、岡田さんがおっしゃっていることも、私の経験やサンプルから判断して、たぶんそのとおりのように私には思えます。

この分野については、近いうちに私も掘り下げて、まとまったものを書いてみたいと思っていますす。たいへん参考になりました。

ちなみに、この定義によれば、私も非モテでございます(笑)。

Posted by: マダム・ロセス | January 25, 2010 12:08 PM

マダム・ロセスさん、コメントありがとうございます。
おお、この分野もマダムのご専門でしたか。セレブを落とすに飽き足らず、一般人までもターゲットにされるとは。マダムの薫陶を受けた超肉食系ハンター女子の面々が野に放たれれば、世の草食系男子などは一撃必殺でありましょう。少子化問題解決のためにも、「チェンジ」はぜひ少し控えめに、とご指導いただければ幸甚に存じますハイ。

Posted by: 山口 浩 | January 26, 2010 05:16 PM

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