雑誌目次をみる:「女性セブン」がtwitter特集を組んでいるので見てみた
IT業界の人が大好きなことばに「キャズム」というのがある。普及過程でアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある「溝」を指したもので、要するに広く普及していく方向へ向けた軌道に乗ることを「キャズム越え」と呼んだりする。となると、日常会話でも半ば冗談で、「○○が××したらキャズム越え」といった目安が語られることになるわけだが、「女性週刊誌が取り上げたらキャズム越え」はその典型的な1つだろうと思う。
その意味で、「女性セブン」2010年2月25日号がtwitter特集を組んでいることは注目される。久々の「雑誌目次をみる」シリーズ。
目次は小学館サイトに出てるので引用。
Twitter特集はまんなかへんの「今週の特集」のあたり。「“つぶやき”ブームを追跡!」とある。2つのパートに分かれていて、こうある。
Part I:なぜ、いまみんなツイッター?
Part II:オバ記者twitterデビュー!!
ちなみにそのちょっと左にある「達人のオススメ10店も ラーメンなう」はtwitterとは関係ないので念のため。で、どんな記事かなと読んでみる。
まずはPart I。おお写真が出ておる。勝間和代、広瀬香美、小池百合子、パリス・ヒルトン、叶姉妹。ふむこういう人選か。ありゃ?叶姉妹はtwitter使ってるのか?と思うと、こちらはAmebaなうの方。このあたりは「女性セブン」的にはまあどっちでもいいらしい。
「わたくしたちは時間があまりないので、立ち上げに時間がかかるブログよりもパッと短時間で利用できるところが便利なのです」
だそうだ。ふうん時間がないのね。記事中でコメントしてる専門家の皆さんはというと、「仕事で使える!Twitter超入門」の著者である小川浩さんと、東京大学大学院総合文化研究科教授の佐藤俊樹さん。短文なので気軽に書ける、堅苦しいルールのないところが楽、有名人の「普段」がわかる楽しさ、リアルタイム性などいいこといっぱいだが、依存症みたいになると危険、との指摘。まともといえばまともな話。メールでも同じ話あるよね?とか思うがそれはそれ。本題と関係ないが、小川さんは「ミクシィの場合は、お気に入りのページを訪れたらコメントを残さないと失礼になるなどのルールがありますが」と書いていて、そっちのほうが気になる。そうなの?そうなの?
それはおいといて。で、「問題」はPartIIの方。この「オバ記者」。アカウント名も「@obakisha」。なんつうかこの呼び名からしてどうよと思うが、まあこの世界ではこういうもんなのかな。「昭和、ど真ん中生まれ」とある。昭和は64年まであったから半分とすると32年?とすると50代前半といったところか。実年齢はともかく、文章がなんとも泣ける。いわゆる体験記的な記事なんだが、なぜか「オバ」というよりオヤジ臭が漂う。「週刊大衆」的な、とでもいおうか。こんな感じ。
「ツイッターって、ツイタテの平成語ですかい???」
「入力方法がわからなかったが、携帯・パソコンで困ったときにいつもするように、「もしやこれか?」とアタリをつけたものをぷっしゅ、ぷっしゅ法。」
「さて、しかしだな、心に浮かんだことを書き込めったって腹の中にはゴミしかはいっていないオバ。それをぶちまけたところで悪臭を放つだけだ。」
ともあれ、「ケータイは通話とメールくらい、パソコンも原稿書き以外は使わないオバ」記者の目線で、アカウント登録から入力のやり方まで、解入りで説明してくれてるし、初心者向けの知っておきたい用語集もちゃんとあるから、「オバ」読者の皆様もtwitterデビューができるだろう。こちらの記事にはあの津田大介さんがコメントしてる。
「ツイッターは、ブログとして日記的な内容も書けますが、チャットのようなリアルタイムでの会話も可能ですし、mixiなどのSNSのように友人やコミュニティー内の交流もできる、すべての要素を持っているサービスです。今後本格的にブレイクします」
と。そうか今後本格的にブレイクするのか。よかったよかった。とはいえ、カタカナに弱い「オバ」読者の皆様はSNSはわかるんだろうか。というかmixiはやってるんだろうか。今、オバ記者のページを見たらフォロワーは44人。興味ある方はフォローされたらよかろう。記事中にもフォローされて「ううぅっ。オバ、泣きそう」と感激した様子が書かれているから、きっと喜んでもらえるものと思う。
とはいえ、まだこれをもって「キャズム越え」というのはちょっと早いかも。今はまだ「新しい珍しいもの」扱い。これがふつうに取り上げられるぐらいになって初めてアーリーマジョリティに食い込んだ、といえるのではないかな。発売直後とはいえまだ「オバ記者」のフォロワーは40人台なわけだし、今後増えはするんだろうけど、それほど急激にとはならない気がする。
あとは余談。久々にこのジャンルの雑誌を見たので、せっかく「雑誌目次をみる」シリーズなわけだし、他の記事も少しカバー。いろいろ面白いところはたくさんあるんだが、1つだけ、スピリチュアル関係からメモ。
「宝くじ高額当せん者が教えるお金持ちへの道5か条」
ベタな、あまりにもベタな。「大金を手にする人にはみな同じような共通点があったのです」と。すでにして電波ビンビン。さてその5か条とは何かというと、「開運コンサルタントの金木満氏」(すごい名前だね)によればこう。
(1)継続は力なり
「当たらなくても継続することが当せんへの道」
(2)夢のお告げ
目覚めた後も、強く印象に残るような夢を見たときは、宝くじ購入の絶好のタイミング」
(3)家族愛、先祖への感謝
「山田さんの当せんは夫婦愛の結果」
(4)占いの活用
「願望は心で描いているだけでなく、口に出して人に聞いてもらったり、紙に書き出したほうが、実現の可能性が高くなります」
(5)当せん後の反動
「人には生まれながらに「運の器」があり、容量以上の幸運を手にしたときは、反動で不幸になる」
いやなんともはや、なんだが、まあそうなんだそうだ。参考にしたい方はすれば、という話。それはいいとしてこの金木氏、「金融王のJ.P.モルガンに「小金持ちは占星術を信じない。だが、大金持ちは活用する」という言葉があります」と語っていらっしゃる。ぐぐるとそれらしい記事がいくつかヒットするんだが、ほんとにこんなこと言ってるの?どなたかご存知の方原典を教えていただきたく。いや別にそうだからといってどうということもないんだがね。ニュートンだって占星術を信じてたわけだし。
ちなみにこのほかにも、「カリスマ風水師 直居由美里さんが指南 引っ越し&インテリア風水」なんて記事もあるし、付録として「景気の二番底も、友人や家族との人間関係トラブルも 「切り抜ける」開運切り紙」なんてのがあったりして、スピリチュアル関係コンテンツは定番のよう。けっこうじゃないの、信じる者は救われるよ、きっと。
日本雑誌協会データによれば「女性セブン」は発行部数47万部。これに週刊女性と女性自身を合わせれば計約120万部。まあマジョリティといえばまちがいなくマジョリティの人たち。どなたかがtwitterで光文社の「VERY」に出てくる専業主婦志向の女性をある種の典型的女性像と書いていたような記憶があるが、あれはあこがれを含んだ典型なわけで、典型というならむしろこちらのほうなんだろうなあ。誰かネット上に神社とかスピリチュアル系のサイトとか作って、ブログに貼れる「ブログ炎上よけお守り」とか、twitter用の「風水アイコン」とか売ったらいいんじゃないかな。コピー品は罰当たるよ、とかいえばコピーされにくそうだし、半端なコピー防止技術より効きそう。
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