「もえOL」お仕事探し1カ月半の「神展開」を追う!
最近局所的に話題になったAneCan2010年5月号の特集「4月→5月のもえOLお仕事探しの1ヶ月半コーディネート」。「もえOL」が勤務先企業の倒産から次の仕事を見つけるまでの1カ月半の着回しコーディネート、というふれこみ。1カ月半で次の仕事が、という点もさることながら、そのいきさつが神展開らしい、というのでどれどれと見てみた次第。
一応念のため書いておくが、「もえOL」は別に「萌え」なのではなく、押切もえさん演じるところの、AneCan的に理想のOL像、ぐらいの意味だろうから誤解なきよう。押切もえさんに萌える人には(いるなら)どっちでもいい話だが。
リンク先にある目次で見ていただければわかるが、このコーナーは仕事服の特集「緊急指令 目指せ!働くコンサバNo.1」を構成する3つのコーナーのうちの1つ。こういう雑誌にも倒産みたいな話が出てくるとは、という文脈で話題になったわけだ。ちなみに「激動のもえOLを支える基本ワードローブ」は計20着。これを着回して1ヵ月半もたせるというわけだ。これだけありゃ1ヶ月半どころか3年ぐらいいけるんじゃないかと思う私はそもそも読者不適格ではあるのだが、まあそこはおいといて。
まずは「もえOL」のプロフィール。もちろん押切もえさん自身ではない。いわゆる「非実在OL」ってわけだな。
東京生まれの東京育ち。幼少のころから負けず嫌いの頑張り屋さんで、時に真面目すぎるのが玉にキズ。青山にある大学に在学中、短期留学を経験し、英語力には少し自信アリ。持ち前のアクティブな性格&英語力が生かせる会社で働きたいと、欧米のアウトドア用品会社の日本法人に務める28歳。学生のころからずっとつきあっているカレ、正弘は大手通信会社勤務。そろそろお互い結婚も視野に入れているのだけれど…。
だそうである。いかにもいかにもな設定。もちろん架空の話だが、なんか妙にリアルなあたり、どのあたりをイメージしているのかちょっと気になる。「青山にある大学」はわかりやすいね。あの大学があるのは実際には「渋谷区渋谷」なんだが、まあ、こまけぇこたぁいいんだよ。「欧米のアウトドア用品会社の日本法人」ってのは何だろう?やけに具体的だが、まさかパタゴニアとかじゃないよね縁起でもないとか思ったのが、これについては後にわかることになるのでそこで書く。「大手通信会社」は、たぶん例の3社のどれかなんだろうが、AneCan的にはやはりNかKのどっちかじゃないかなあ。ともあれ、だ。で、ストーリーはこう始まる。
―第1章― それは突然やってきた…!
4/15
う~ん!今週もあと2日★
頑張るか~ってPCを開けたら、
全社員向けに社内メールが。「報道のとおり、
明日で日本法人は業務停止になります」って。
やばい、人生最大のピンチの予感!
文章だけだと危機感があるんだかないんだかわからないんだが、写真では押切もえさん扮するもえOLが口元を押さえて「うそでしょ!?」とショックの表情。曜日からみて今年のカレンダーに沿ってて、木曜の朝なわけだが、「明日」で業務停止ってずいぶん急だよねえ。いきなりロックアウトとかされちゃうパターンだろうか。退職金なんか出ないかもな状況。
「報道のとおり」とあるわけだから報道が先に出てたんだろう。こういうケースもままあるんだろうなとは思いつつ、でもだったら報道を先に見とけとか思わなくもない。まあアウトドア用品メーカーの撤退なんかはマスメディアで報道されない可能性も高いだろうし、「もえOL」としては朝のニュースとか見ないっつうこともあるのかな。というかこの「もえOL」、およそアウトドアっぽく見えない服だったりもするんだが、まあいいか。
全部紹介するのも何なので飛ばし飛ばしでいくと、4月16日はショックで1人やけ酒、17日は荷物の搬出、となっている。
4/18
気分転換に正弘とデート。
カラ元気にふるまっていたら、
最後のデザートで突然指輪が!
「結婚しよう。もえはず~っと
頑張って働いていたし、少し休んだら。
俺が稼ぐよ」って正弘。優しすぎる!
ここで正弘くんまさかのプロポーズ。男気を見せる。しょっぱなからなかなか都合いい展開。とはいえ現実にも、解雇を機に結婚みたいな話はあったりするのだろうな。さてどうするもえOL。と思うひまもなくその翌日。
4/19
倒産&プロポーズで身も心も大混乱!
結婚も幸せな選択なのは重々承知の上
だけど。そんな矢先、知っている番号
から着信が!取引先のおじさんだ!
さらにここで、なんと「取引先のおじさん」がいきなり手をさしのべてくれるのだ。あしがながいかどうかは知らないが、さすがみんなに愛されるもえOL。しかしそれで終わる話ではない。
4/20
求職申し込み&失業手当の申請のため
人生初のハローワークへ。
初めてのことだらけ&この場にいる
現実に、思わず顔がこわばる~~。
「もえOL」もハローワークへ行くわけだ。とはいえ「こわばる」という割に「~~」だったりして危機感はなきがごとし。写真でもスーツっぽい服を着ているのだが、あくまで顔はにこやか。で、4月21日は気晴らしで友人の落語家の落語を聞きに。どんなときでも余裕を忘れない「もえOL」。「萌え」どころか驚嘆すべき胆力ではないか。
4/22
連絡を頂いた、取引先の
おじさまを訪問。「君は愛想
もいいし、仕事もできる。
うちに来ないか?」って!
いきなり「雇いたい」との申し出。よほど有能、なのかもしれんが、どっちかっていうと、もうモテモテやね、という印象。いつのまにか「おじさん」が「おじさま」に変わっていることに注意。このあたりの距離の取り方が「愛想もいい」との評価につながるのであろう。うむこれは大事だな。
で、4月23日はタロット占いへ行き、24、25日は「近場のパワースポット」へ一泊旅行。失業中に3日間もスピリチュアルに過ごせるのも豪胆な「もえOL」ならではのことなのであろう。まさに大物である。とはいえこの間に「おじさま」への答えを考えているようではある。こんな金使っていいのか?という不安は後に現実となる。
4/26
答えを先延ばしにするのも
失礼と、取引先のおじさまへ。
「自力で就職先を探します。
お心使い本当に感謝しています」
おお。おじさまのお誘いを断ってしまわれる。あまりに都合のいい申し出に何か危険な匂いを感じ取ったのだろうか。写真では「ほんの気持ちですが」とのキャプションつきで虎屋のようかんの紙袋を持っている。おじさまへのお礼だろうか。引きつつ次へのつながりを確保する橋頭堡。まさに鉄壁の人づきあい。
4/27
おじさんの優しい言葉を
励みに頑張ろう★と思ったら
先日エントリーした会社から
連絡。急きょ、明日面接っ!
可能性がなくなると「おじさま」からまた「おじさん」に戻るわけね。なんかわかりやすい。「先日エントリー」は20日のハローワークでのことだろうか。他に転職サイトに登録していたのかもしれない。急きょ、というが、どういう条件で探したのだろうか。よくわからんが実情はどんなものなんだろうか。
4/28
新卒以来、初めての面接!
でもまさかの噛み噛みで
志望動機も上手に言えず撃沈。
しゃべりには自信あったのに。
ここまでが神展開かどうか別として、少なくともここは「噛み」展開。「もえOL」にも挫折はあるのだな。意外に現実的。で、まさかの失敗にもえOL、どうするかと思えば、4月29日はまたしても気分転換。今度は買い物でプチ贅沢。「たまにはこういうのもね★」とか書いてるが、実際のところ、倒産から2週間の間に6日も「気分転換」しているわけで、「たまには」というのは表現としていかがなものかと思う。
4/30
1週間じっくり考えた末…
「正弘、ごめん。プロポーズは
うれしいの。でも仕事がないから
結婚するみたいで、今はイヤなんだ」
おお。プロポーズも断ってしまわれる。
さすが「負けず嫌い」さん。逃げないわけね。
「今は」が重要。ちゃんと次に含みを残す。これぞもえOLの真骨頂。
ここで「もえOL」第1章は終わる。現実は甘くないよというあたりを見せたところで、実用記事「姉レディのための転職・再就職講座」(「姉」は○で囲まれてる。というか「姉レディ」って何)がはさまる。情報収集の仕方、履歴書の書き方、面接での受け答えなど一般情報の他、写真はスタジオで撮れ、応募職種によって写真を使い分けろ、男性が多い会社はスカートをはけとAneCan的な「実践」転職ノウハウも満載。実際に転職した方の例も紹介するなどまさに懇切丁寧。
で、「もえOL」は第2章へ。
―第2章― 決断、その後…!
「…!」と緊迫感を高めておいて、いきなり連休。5月1日は友人の結婚式、2日は実家でグダグダ、3日は読書?4日はボクササイズと就職そっちのけ。5日に入ってやっと翌日のA社面接に備えて練習。このA社が本命であるらしい。28日の失敗面接は「ならし運転」だったわけね。うむ。わかっていらっしゃる。練習のお相手はご存知優しい正弘くん。熱愛である。
5/6
前回よりは志望動機を伝えられたけど、
正直、好印象かどうかは微妙…。
帰り際の公園でお弁当を食べつつ、
ひとり反省会…。はぁ、切ない~
切ないそうである。優雅な「もえOL」も公園で弁当食べたりするのね。でもほか弁とかじゃないのはいうまでもなし。で、5月7日は元同僚とランチ。こちらの方はスムーズに転職先が決まった、と。しかしまあ、「ランチ」で1日終わるというのは、なんとも優雅な生活であることよ。で、8日は次回面接を待ちつつ次の応募先を探し、9日は再び友人の結婚式、10日は英語のお勉強と。しかしこの時期に結婚式が2件たて続けとは、間が悪いというか何というか。しかも5月9日は仏滅。4日なら大安だったのに。今はあんまり気にしないのかなあ。
5/11
気持ち新たに受けたB社の一次
面接帰り、着信が!「木曜日に
二次面接にお越しください」って、イエイ!
うむ。2社めもあっさり二次面接へ。だんだん神展開っぽくなってきたぞ。盛り上がるかと思いきや、違った方向へと盛り上がる。5月12日はストレス発散のため友人とカラオケ。「女のコって忙しいんです」だそうである。ストレス発散で忙しいとは、いやうらやましいではないか。
5/13
絶対受かりたいA社の二次面接。
なのにふた駅前くらいからお腹
がキュルキュルしてる気が…。
うそでしょ、お願い落ち着いて!
大事な面接を前に、怒涛のごとく押し寄せる苦難、もえOLがんばれ!
といった体なんだろう。どこか平和な感じがしてしまうのは私の偏見だなきっと。
5/14
なんとか持ちこたえた昨日のお腹、
じゃなくて面接!外出がてら
ATMに寄ったら、悲しい残高。。
節約の二文字が頭をよぎる~!
しかし失職1ヶ月もたつとやはり厳しくなってくるらしい。というか、だったらあの1泊旅行とかやめときゃよかったのに、と思うがそういうものでもないんだろうもえOL的には。そういいながら翌日は、
5/15
元同僚たちと、楽しい
バーベキューパーティ★
前の会社の備品らしきものを
見かけた気がするけど、
ぜ~んぶ気のせい気のせい!
ほんとに忙しい方である。節約はどうしたんかい。しかしそれよりここで気になるのは、「前の会社の備品らしきものを見かけた気がするけど、ぜ~んぶ気のせい気のせい!」というくだり。会社倒産時の什器備品消耗品類の処分については「さまざまな方法」があるから、社員が持っていたとしても必ずしも変ではないんだが、それはそれとしてちょっと待て。なぜここで元同僚とバーベキュー?前の会社の備品?何か唐突なような…?
・・・これだ!つぶれた元の職場ってのはきっとキャンピングガスあたりをイメージしてるんだな。フランスのアウトドア用品メーカー。ランタンとかコンロとかが知られてるけどアウトドア用品全般やってる。フランスのこっち方面の製品はデザインとかが独特でけっこうファンがいるみたい。コールマンの子会社になったのだが、知らないうちに日本市場から撤退していたらしい。これ書いた人、何か関わりがあったんだろうか。
で、金欠のほうはどうしたかというと、
5/16
マネーの危機を解消すべく、
お気に入りのアイテムを
リサイクルショップへ。
かわいいコにもらわれてね(涙)
売っちゃうわけだ。といっても例の着回し20アイテムじゃない。もっとたくさん持ってるのだね。もえOLのお古なら別のところに、とか書いちゃいかんね。いかん。で、5月17日には姪っ子のベビーシッター。18日には友人が出産。これでまた物入り。さあ大変、と思ったら、ここで神展開。
5/19
すっかり諦めかけていた
A社から最終面接の連絡が!
来週の月曜日に社長との
1対1の面接とのこと。
緊張するけれど、ここまで
きたら絶対に受かりたい!
あとはベストを尽くすだけ!
最初に本気で受けた第1志望でいきなり最終面接へ。ベストを尽くすために何をするかというと、5月20日に近所の氏神様へお参りに行き、21日には別のC社の面接のあと友人と気分転換でバーへ。22日はデートで遊園地。ほんとに気分転換が得意な方で。しかし手持ちの服を何点か売るだけでこれだけ金を作れるとは、いったい何を売ったんだろうか。・・ともあれ23日はヨガで明日の面接に備える。
5/24
緊張の社長との最終面接!
何を聞かれるかと思いきや、
経歴と志望動機で後は雑談。
これは、どうなんでしょ~?
「どうなんでしょ~?」と聞かれても困るが、まあ最終面接だとこういうのもけっこうあるかもしれない。もえOL的には不満だったらしいが。
5/25
昨日の手ごたえが微妙なので、
C社の筆記試験へ!
あれ?あの面接官、
もしや私より若い…!?
3社め。面接担当者が自分より若いぽいことに相当ショックのようすのもえOL。微妙なお年頃である。5月26日は前の会社の同僚たちとご飯会。仲良しなようでたいへんけっこうだが、他はほとんど就職先が決まりつつあると焦りも。
しかし心配ご無用。何せ神展開だ。
5/27
着信、と思ったらA社から!
「採用です。さっそくですが6月から
働けますか」。待ち焦がれた言葉、
ついに!やっと!聞けました!
おお!採用決定。めでたいめでたい。「!」の連発にもえOLの喜びようがあらわれておる。これでリラックスできる、とばかりに5月28日は友達のホームパーティ、29日には正弘くんとデート、30日には両親をディナーに招待。行ったのは「両親が大好きな代官山のイタリアン」と。金ないんじゃなかったのか、などという無粋なつっこみはすまい。なんたってもえOLだ。また何点か服を売ればそのくらいの金は出てくるんだろう。で、その次は一気に6月30日に飛ぶ。新しい職場ですでに1ヶ月経過。
6/30
風通しのいい社風、活気あふれる
オフィスはイメージどおり!
プロポーズも取引先のおじさんの
お誘いも断ってしまったけれど、
自分が信じる道を進んで…良かった!
断ったにはちがいないが切れたわけじゃない。仕事も恋も、というわけで、まごうことなきハッピーエンド、である。ここまでの経過をまとめておこう。
・解雇を知った日から次の採用が決まるまで:43日
・うち気分転換:20日
・応募した会社:4社
・採用を申し出た会社:2社
・就職した会社:第1志望
・プロポーズしてきた男:1名
うむ。想像してたほどものすごい「神展開」というほどでもないような気もする(ほら、来日中の欧高級ブランド女社長がもえOLの着ていた服を気に入って『うちに来なさい』とか、そういうのを期待してたわけだよ)が、全体としてみればやはり神展開といっていいんだろう。もちろんそのあたりは作ってる側も意識されてるようで、「姉レディのための転職・再就職講座」には「転職レディの就活事情って?」というコラムがある。アンケート結果らしいのだが、「再就職まで何社受けましたか?」に対しては、再就職までに5~6社受けた人が52%、2~4社の人が28%と。で、退社から再就職までかかった日数については平均132日、中には1年近くかかる人も、と。もえOLはその1/3の日数で決めてしまったわけで、最初に本気で受けた第1希望にそのまま採用という意味でもこの特集、よくあるアレでいえば「※ただし『もえOL』に限る」といった注釈を要するところだろう。
ことわっとくが、別に押切もえさんやAneCanに文句とかあるわけじゃない。コトラー的にいえば、こういう雑誌はおしゃれアイテムを紹介してはいるものの、これによって売っているのは「お店や商品の情報」ではなく「あこがれ」だ。こんなふうだったらいいのに、というあこがれ。その意味で、もえOLという非実在OLが解雇から転職へ至る「修羅場」でもおしゃれにすごしているさまというのは、はるかに重い現実に直面していたり、その不安にさいなまれる実在のOLさんたちにとって一種のよりどころとなるんだろう。いろいろつらいことも多かろうがぜひがんばっていただきたい。まあ、そもそも132日間の着回しとかいうと夏服どころか秋用の服まで入れなきゃいかんしな。
ともあれけっこう楽しめた今月号のAneCan。それぞれのシチュエーションでもえOLがさっそうと着こなすファッションの数々はぜひ雑誌のほうでお確かめいただきたく。
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Comments
いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
Posted by: 履歴書の書き方の見本 | August 09, 2010 11:03 PM
履歴書の書き方の見本さん、コメントありがとうございます。
アクセスは増えましたか?
Posted by: 山口 浩 | August 21, 2010 11:23 AM
つっこみうけます。
Posted by: yy | January 03, 2011 04:44 PM