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July 26, 2010

男はつらいよ指数を国際比較してみる

自殺問題を論じるときに、自殺者の数や人口に対する比率を使ったりするわけだが、男女の比も重要なポイントかと思う。男性の方が高いというのはだいたいどこでも共通してるのだが、比にはけっこうな差がある。というわけで、自殺率の男女比をとって、それだけで国際比較をしてみた。「男はつらいよ指数」というのは若干ふざけた印象かもしれないが、もちろんふざけているわけではない。自殺率については以前にもちょっとだけとりあげたことがあって、そのときに使った用語。久しぶりにデータを見たので書いてみたという話。

本気でやるなら、もっといろいろやるべきことはあるんだろうが、ここではとりあえず、高い順に並べてみるだけ。

元データはWHO。「Suicide rates per 100,000 by country, year and sex (Table)」。元の表をみていただければわかるが、調査年が国によってかなり開いてるのでその点ご注意。ちなみに日本のデータは2007年のものらしい。

で、この男女別の自殺率データを使って男女比を出し、DIV/0と0の国を除いて高い順に並べたのがこれ。一応、一部の国をハイライトしてみた。

これでみると、この中では日本はまあ低い方に入る。自殺率そのものについていえば高い方に入るというのはご存知の方が多いと思う(参照)が、男女差は国際比較上では小さい方というわけで、相対的にみて男があんまりつらくない国、ということになるんだろうか。これに対して欧米諸国は日本より高いところがけっこうある。逆に、アジア諸国では日本より低い国も多い。

興味深いのは、どうも地域的にクラスター化、とまではいわないが、比較的近い国の指数は似る傾向があるようにも思われる点だ。この点は、全体の自殺率についてもいえる。このページの「Map of suicide rates」をみると、地理的に近い国の自殺率は似通っている傾向があるように見えなくもない。よく自殺に関しては、社会・経済・政治的な要因がいわれるわけだが、これらの中には、地理的に近くても大きく状況のちがう国が含まれているはずだ。文化ももちろん関係するはずで、その影響なのだろうか。おそらく専門家はきちんと分析してるんだろう。ここでは「塗り分けたみたいになってるねえ」ぐらいで止めとく。

ちなみに年代別にみるとどうなるかというと(参照)、こう。

      M    F   M/F
05-14  1.5   0.4  3.75
15-24  22.0  4.9  4.49
25-34  30.1  6.3  4.78
35-44  37.5  7.7  4.87
45-54  43.6  9.6  4.54
55-64  42.1  10.6 3.97
65-74  41.0  12.1 3.39
75-      50.0  15.8 3.16

それほど世代によって差は出ないようだが、若い方が指数が高めに出る傾向がありそう。あと、過去50年でみると、世界的にみて指数は上昇傾向にあるようだ(参照)。これも国ごとにやるともっといろいろわかるだろう。

だから何だというほど深い意図はない(実際に男がつらいのかどうかを論ずるつもりもあんまりない。本気でやるならもっといろいろな要素が必要なはず)が、強いていうなら、いろいろデータみていると意外なことがわかったりするね、というぐらいの話。ことがことだけにつっこみづらかったりするが、思い込みやムードだけではいけないよね、と思う。特に最近は、そういうムードを使って主張を通そうとする人たちがけっこういたりするような気もするので。

※追記
ちょっと最後が食い足りない感じなので書き足す。自殺率は近年、非正規雇用だとか経済の先行きだとかいろいろな問題の「象徴」として「活用」されてるわけだが、その中にはなんだか都合よく「つまみ食い」してるようなものがあるような気がする。たとえば、日本の自殺率が高いことをもって社会の失敗のようにいう人がいるが、日本の自殺率が世界平均より高いのは60年前でも同様だったのであって、単純にレベルが高いことだけでは昨今の経済社会情勢が原因とはいいがたい(しかも、地理的に近いところは自殺率の水準が似てるとなれば、なんらか文化的要因があると考えるほうが自然だ)。もちろん、2000年以降日本の自殺率は上がってるわけだが、女性の自殺率はこの40年ほどの間ほとんど変化していない。男性の自殺率上昇が全体を引き上げてるわけだ(あと、個人的には、日本の自殺率トレンドの変動幅が妙に大きいのではないかという気もしなくもないのだがよくわかんないのでおいとく)。一方、世界全体では、この50年間で、男性も女性も自殺率はゆるやかに上昇しているわけで、少なくとも日本の女性に関しては、問題は過去と比べて必ずしも悪化してるようにはみえない。別に女性の自殺が問題でないとはいわないが、少なくとも、ごっちゃにした議論、我田引水の議論はどうかと思う。

ちなみにこちらの資料をみると、「なぜ女性の自殺率が男性より低いのかを説明しようとする人はあまり多くはありません」とあるから、あまり研究者の関心を引かないテーマらしい。

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Comments

 こんにちは、はじめまして。興味深く拝見させていただきました。全体的に乱暴な分析をなさっているようにお見受けしますが、特に気になる部分を指摘させて下さい。

>単純にレベルが高いことだけでは昨今の経済社会情勢が原因とはいいがたい

 たかだか2万人台を前後していた自殺者数が世紀末を境にして急に3万人の大台を突破するようになったこと(いわゆる「98年3月ショック」)を文化的な要因に回収して論じる方が無理があるような気がします。自殺者数が高止まりする背景に文化的な要因があることは否定し難いですが、実態として社会・経済的な要因が自殺者数の増加に明確に寄与している以上、それを文化的要因で覆い隠すことは欺瞞であり、自殺者対策の障害になり得ます。

>あまり研究者の関心を引かないテーマ

 自殺者対策を目的とするNPOグループ『ライフリンク』によれば、国内において男性の自殺者数が多いのは、景気悪化に伴う家計苦を自殺による保険金でファイナンスする傾向があるためとしています。実際、主要な自殺者層は、中小零細企業を経営する中高年だそうです。

【参考リンク】
http://www.lifelink.or.jp/hp/statistics.html
http://www.lifelink.or.jp/hp/Library/whitepaper2_3.pdf

Posted by: 渡波 | July 26, 2010 10:34 PM

こんな話もあります。
> http://honnosense.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/kenichiromogi-d.html

メディアが困窮者を必要以上に叩き過ぎると言うのと、育児放棄が本来多重勤労と賃金安価のためなのが、報道はパチンコとかのイメージをまん延させている、という話、そして、ここのブログの自殺に関しての末尾コメントで、メディアはデータではなくイメージを強調と言う話、なにか歪みがくっきり見えてきそうです。

件の記事の、官がメディアをコントロールしていない、という部分は検察の関係があるので、私には違和感なのですが、そのほかの、セーフティネットが正しく機能していない、とかの部分はかなり印象としても同意できる内容です。

本エントリーの自殺の日本の高さと重ねると、少し社会全体のセーフティネットの拡充を考えなければならないかと思いました。
引用もとの記事にもありますが、セーフティネットを拡充しても、その労働者が返す税金の方が段違いで大きいです。

Posted by: luckdragon2009 | July 27, 2010 12:51 AM

コメントありがとうございます。

渡波さん
文章を読んでいただければわかると思いますが、私は社会・経済問題が存在しないとも日本の自殺率は問題でないとも書いていません。ただ、事実をふまえれば、それ以外の要素もあるとみるほうが自然だいうことを書いているだけです。ものごとを情緒的に曲解して単一の原因に帰したあげくにあげつらうような態度は、問題の解決にはとうていつながりません。
そもそも、2万人台の自殺者を「たかだか」と言い放つ発想は私には到底理解できかねます。

luckdragon2009さん
セーフティネットの問題は大きいですね。「金」で解決できる問題は少なからずあるはずです。ただ、破産のような本来利用可能なしくみをうまく活用できないのは、問題がそればかりではないことも意味しているように私には思われます。精神的なセーフティネットについてはあまり詳しくありませんが、一部の熱心な方々だけに任せておけばすむ問題というわけではないのかもしれないなとぼんやり考えています。

Posted by: 山口 浩 | July 28, 2010 12:03 PM

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