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日証協にパブコメを出してみた

日本証券業協会が、「有価証券の引受け等に関する規則」を改正するとかでパブリックコメントを募集していたので、出してみた。一部で話題になっていた、個人投資家から出資を受けていると新規公開できなくなるっていうやつ。聞けば否定的なコメントが殺到して(当たり前だ)、改正の方針を撤回する方向らしいが、現時点でまだ発表されてはいない。

短時間でえいやっと書いたので、あんまりいいできではない(というか読み返してみるとうひゃあ!となるレベル)と思うが、一応。読むなら、磯崎さんのコメント(とかこれとか)がお勧め。

なんというか、最近こういうスジの悪い話があちこちでみられるような印象がある。劣化、とかいうことばは使いたくないのでいいかえると、「誰かに任せておけばいい時代」ではなくなりつつあるのではないか。「専門家」に任せてのほほんとしてるんじゃなくて、みんなで少しずつ、あちこちに首をつっこんで、わーわーいいながら、少しずつものごとを動かしていく、そういうものごとの決め方をする時代。となれば、あんまり詳しくないからとか、自分は関係ないからとかじゃなくて、どんどん声を上げていくべきなんだろう。

というわけで、恥ずかしながら。

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日本証券業協会 御中

私は、駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部において、ファイナンス及び経営学を担当する教員です。今回の改正案に対して、反対の立場からコメントいたします。

今回の改正は、ひとことでいって、有害無益です。その目的を達しないばかりか副作用のみ強力であって、改正を行うことにはとうてい賛成できません。

まず、「発行会社による募集又は私募を装った未公開株詐欺事案が後を絶たない」という主張は、正常に設立され、出資を受けて運営されている企業が大多数を占める事実を無視し、徒にごく一部の問題のみを取り上げて、その「解決」のためと称して、その他の多くの企業に大きな影響を与える規制を持ち出そうとするものです。いってみれば、包丁による殺人事件が起きたからと包丁の所持を禁止するという類の規制であって、目的に対して手段がマッチしていません。

そもそも、この規制では、その目的とするところの、「発行会社による募集又は私募を装った未公開株詐欺」を抑制ないし排除する効果はほとんど期待できません。確信犯でそうした犯罪を目論む者であれば、「適用除外」として指定される手法を利用して規制をかいくぐろうとするのは当然です。有価証券届出書等の書類提出を義務付ける条件についても、その気になれば偽造は不可能ではありません。また、役職員や親族からのみの出資である場合も適用除外となっていますが、これも、初めからだます気なら、雇用契約、役員の委嘱、あるいは養子縁組など、回避する方法はいくらでもあります。結果として、犯罪者がかいくぐることが全く不可能なほど厳しい条件をつけることは事実上きわめて困難なはずです。

にもかかわらず、この規制は、これから上場しようとする企業、その中には多くの有望なベンチャー企業も含まれるでしょうが、そうした企業の将来を閉ざすものとなりかねません。起業家が企業を興そうという際、友人や仕事上の知り合いといった、比較的近しい他人から出資を受けることはよくあります。こうした企業がその後順調に成長して上場できる規模に達した際、当初に個人投資家の出資を受けたからといって上場の道を閉ざされてしまっては、日本での起業は著しく困難なものとなってしまいます。当初からベンチャーキャピタルなどの出資を受けられればいいのでしょうが、日本のVCの実態はそんな状況ではないはずです。大部分を占めるはずの「善良」な企業は、詐欺を目論むような企業とはちがい、細工をして規制を免れようとは考えないでしょう。むしろ、有価証券届出書等の作成費用を負担できず、上場をあきらめてしまうかもしれません。

つまり、この規制は、規制したい対象ではなく、それ以外の善良な企業に対して資金調達を困難にさせる効果しかないということです。

この規制で守ろうとしている、詐欺の被害者は、多くの場合金融知識も充分でなく、詐欺話をそれと気付かずに応じてしまうような人々であると考えられます。こうした人々は、未公開株がらみだけではなく、上場株や債券への出資、あるいはその他の金融取引に際しても、数多くの詐欺事件や不適切な銘柄推奨の被害者になってきました。そのことは、日々投資家からの苦情に接しておられる貴協会が一番よくご存知のはずです。こうした「弱者」たちを被害から守るには、未公開株への出資を抑制するだけでは足りず、それは、今回提案されているような、効果のない規制とはちがったかたちでなされるべきです。それを行おうとせず、ただこれから上場しようとする企業にのみ負担を押し付けるのであれば、それは貴協会がその役割を放棄したことに他なりません。

今、日本では、起業をめざす人が少なく、経済の活力が失われつつある状況です。この期に及んで、起業をより困難にしようとする規制を導入しようとする考えは、まったく理解できません。本改正案を撤回し、真の意味で消費者を保護し、かつ経済の活力を損なわないしくみを一から検討し直されることを要望します。

2010年7月1日

駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部
准教授 山口 浩

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