« みすず学苑、オカルトへ走る | Main | 衆院選予測サンデー毎日20110306 »

February 22, 2011

「自己責任論」の国際比較

小ネタ。シノドス・ジャーナルに「不満との共生、もしくは「無縁社会」の新たな自己責任論」と題した文章を書いたのだが、それを書いている途中でちょろっと調べて、結局使わなかったものがあるので、せっかくだからここに置いとくことにする。その文章はタイトル通り、いわゆる「自己責任論」についてのものだったわけだが、そもそも日本人は自己責任論好きなのか?というあたりが気になったので、World Value Surveyをちょっとのぞいてみたらちょっと意外だった、という話だ。

世界価値観調査のサイトで面白いのは、簡単な分析がオンラインでできることだ。指標や対象国、時期なんかを選んで表にしたり、グラフにプロットしたり。いろいろ遊べるので、よろしければぜひ。

一番新しい2005-2008年調査データをみてみると、関連しそうな項目として、たとえば「公的扶助を請求することに対する是非の意識」といった項目がある。自己責任論でよく問題になるのは公的な保護を与えるかどうかみたいなあたりのように思われたので、まずこれ。これに、「ものごとを決めるのは運命か自己のコントロールか」という項目を加えてプロットしてみたのが次の図だ。運命論なら公的保護もしょうがないけど自分で決めるなら自己責任だよね、というような意味で。

これでどんぴしゃ、という項目ではないような気もするが、まあそれなりに雰囲気がわかるかも、と思ってやってみただけの話なのであらかじめ念のため。実際の回答は数段階に分かれているのだが、それに度合いに応じた数字をあてはめ、それぞれの国の平均値を計算して使っている。調査項目は国によって微妙にちがうので、この2つの項目を調査している国だけを集めてみた。

Jikosekinin02

図中に国名を全部入れるとごちゃごちゃするのであまり入れなかったが、元データはこれ。

見てわかると思うが、全体として、あまり大きな差はない。想定としては、運命が人生を決定づけると考えるなら公的扶助を受けることを是とする度合いが高かろうというわけで右下がりの相関かなと思っていたのだが、あまりそういう傾向はみられない。これはまずちょっと意外。

日本はどちらの項目でも中庸というか、まあ極端な数字ではない。というか先進国は総じてほぼ似たあたりにごちゃっと固まっている。日本はフィンランドやドイツなどとほぼ同等の位置にあるし、アメリカとも比較的近い。中国は日本と比べて公的給付受給を是とする度合いが高いが、一方で人生は自己のコントロールで決まるとする考え方は日本と同程度だ。

もちろん、平均ではなく、それぞれの選択肢を選んだ割合、つまり分布自体を比べてみるとそれなりにちがいがある(ちなみに、公的給付を受けることを全くよしとしない、と答えた人の割合でみると、日本はドイツやフィンランドなどより高く、アメリカより低い)。これはここには出してないが元データでお確かめいただくといい。一応、軽くカイ2乗検定とかやってみたら、日本は韓国や中国などよりも、アメリカやフィンランド、ドイツなんかに近い感じっぽい。もちろん、この程度の論拠で言えることはあまり多くないだろうが、とりあえず、よく対極的な国としてとらえられるアメリカと北欧などの国が割と近いところなんかは、ちょっと意外な感じがする。イタリア、オランダ、スイスあたりで「公的扶助受給の是非」で非とする度合いが非常に高いのだが、これは何だろう。

あと、最近話題のエジプトは、これでみると、人生が運命で決まると考える傾向が突出して強い。別にイスラム圏だからそうだってことでもなくて、トルコやインドネシアは日本の方に割と近いし、イランは中国のすぐ近くだ。ヨルダンなんかもっと「コントロール」寄りだし。一方、エジプトに近いのはモロッコ。こちらも王権の制限を求めるデモとか起きてるけど、共通要因があるのかどうかは想像つきにくい。宗教のせいということでもなさそうだし、政権交代の有無や、資源や、1人当たりGDPなんかもいまいち関係なさそう。ちゃんと分析すれば出てくるのかもしれないけど、そこまで手をかけるネタでもなさそうなので、ふうんそうなのか、ぐらいでとめとく。ただ、少なくともエジプトについては、こういう価値観からみて、自分たちで勝ち取った今回の「革命」の意義は大きいのかもしれない。

というわけで、国による価値観の差があったりなかったりはけっこう面白い。もっと見たら、もっといろいろわかりそうな気がするのだが、もとより使い回しの小ネタなので今回はここまで。


|

« みすず学苑、オカルトへ走る | Main | 衆院選予測サンデー毎日20110306 »

Comments

あれ!アメリカって日本より公的扶助を受けることを是とする度合いが高いのか!!公的健康保険とかみてたら、日本の方が高いのかと思っていました(それとも自分の理解が間違っているのかな?)。

Posted by: のひ | February 27, 2011 02:47 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「自己責任論」の国際比較:

« みすず学苑、オカルトへ走る | Main | 衆院選予測サンデー毎日20110306 »