明日ニコ生をやるので告知
明日、2011年6月12日(日)17時より、ニコニコ動画内「駒大GMSちゃんねる」にて、ニコ生を行うことになっている。今期、震災の影響で大学のスケジュールが変わって、授業回数確保のためにe-learningをやれというのを逆手にとってやってしまおうというもので、一応大学の正規の授業だ。せっかく休みの日にやるので、少しふだんとはちがうことをと思い、「映画におけるフラッシュマーケティング」というテーマにしてみた。要するに、いわゆるクーポン共同購入サービスだ。映画に関しては「ドリパス」というサービスがあるが、その運営会社である㈱ブルームの五十嵐社長をゲストにお迎えする。
この件については、ゼミ公式ブログ「こち駒」にも少し書いているので、勝手に「併せて読みたい」に推奨しておく。
※録画映像を追加。
以下、おそらく授業ではあんまり話さないであろうファイナンスっぽいあたりをメモ書き程度に少しだけ。
この種のクーポン共同購入サービスは、一定の購入者がいなければ購入契約自体が流れてしまうという点で、リアルオプション性をもっている。映画館側からみれば、デジタルオプションとコールオプションを組み合わせたようなペイオフ構造、個々の購入者は、映画館とは反対側のデジタルオプションということになる。間に入るドリパスは、映画館売上の一定割合をとるとすれば、映画館とほぼ同じでより薄いペイオフ構造を持つことになろう。
当然ながら、このリアルオプションは契約によって作り出されたものだ。典型的な金融のオプションと異なるのは、もともとあるペイオフをゼロサム的に分割するのではなく、ゼロから新しいプロジェクトを作り出すということだ。だから、誰かが得をすれば他の誰かが必ず損をするという関係にはない。
ここでポイントになるのは、興行側にも配給側にも、そして間に立つドリパスにも、本件による追加の固定費がほとんど発生しないということだ。映画のフィルムはすでに現物があるから、改めて作る必要はない。興行側にしても、最近はほとんどがシネコンになっていて、イベントが成立しなくてもそれほどダメージはない。もし映画がデジタル配信されるなら、さらにそのコストは下がるだろう。
また、購入者も、購入申し込みをした後で、イベント成立となって初めて代金決済が行われるというのは、クレジットカードの機能を使わなければ事実上難しい。つまり、契約によって成り立つといっても、それはこの契約をリアルオプションたらしめるための技術的な裏付けがあって初めて可能になっているということだ。その意味で「ドリパス」のビジネスモデルは、「金融・契約・情報の技術の新たな融合」という私の研究テーマを体現しているようなもので、だからこそたいへん興味深いわけだ。
ちなみに、フラッシュマーケティングといえば、例のおせち事件の某社を思い浮かべる人も多いかもしれないが、おせちの場合は、実際に料理を申し込まれた数だけ用意する必要があり、そのロジがうまく回せなかったがためにああいうトラブルに発展したとみることもできる。いってみれば、販売規模に思ったほどの柔軟性が存在しなかったわけだ。その意味で、フラッシュマーケティングのリアルオプション性については、やはり事業領域によって若干の差があるとみるのが適切だろう。映画のようなコンテンツビジネスは、少なくともデジタル化が進んだ現在の状況を前提とすれば、比較的向いている方ということになるのではないだろうか。
というわけで、もともと「ドリパス」には興味津津だった私としては、今回の件はいい機会。当然、理屈と実際はちがっていて当然なので、そこらへんも含め、いろいろお聞きできればいいと思う。
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