「朝9時から仕事」について
昨日あたりから、ツイッターのTL上で「朝9時始業なら8時半に来るのが当たり前」だとか「そんなのおかしい」とか、そういった関連の話題がけっこう上がっていて、何だろうと思っていた。確信はないが、ひょっとしたらこれの関係なのかもしれない。
昨日朝、区民の方から、「始業時間の9時ぎりぎりに出勤してきている区役所職員がいるが、民間企業なら9時始まりなら8時半には出てきて準備をしているものだ」とお叱りを受けました。改めて、職員にこのことを伝え、自分たちの行動が市民の目でどう見えるか、見つめ直してもらおうと思っています。
— 城東区長 吉村 浩さん (@furusato_JOTO) 2月 13, 2012
この方、大阪市城東区の区長さんらしい。今注目の大阪市だが、この方が件の市長さんとどういう関係なのかは知らない。ともあれ、一応私も民間企業経験者だし、少し思うところはあるので、ちょっとだけ書いてみる。
この種の話をするときにすぐ労働法を持ち出す人がいて、それはそれで理屈として正しいんだろうが、そこには正直あまり関心がない。詳しくは知らないが、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれた開始時刻が起算点になるんだったか。9時始業として、9時ぎりぎりに来たとしても、9時に「使用者の指揮命令下」に入れる状況なら、まあ文句をいわれる筋合いはない。件のツイートで「区民の方」が問題視した状況がどうだったか知らないからなんともいえないが、もし「使用者の指揮命令下」に入れる状況でなかったとしたら、よろしくないということになろうか。
とはいえ、労働法やら就業規則がどうかは別として、始業時刻って実態はもっと柔軟にとらえられていることの方が多いのではなかろうか。もちろん職種その他にもよるだろうが、出退勤時刻自体はきちんと決まっていても、その管理はある程度の幅をもって行う方が自然だ。「仕事」を始める時刻を厳密に守らなければならない職場は少し余裕をもって始業時刻を設定しておくべきだし実際そうするだろう。そうでなければ、まあそれなりに常識の範囲で、だ。正直、たまたま何かの事情で遅れて始業10秒後に着いたら「ハイ遅刻!ペナルティ」みたいになる職場や、始業1分前に課長が打ち合わせに部下を呼んだら「時間外労働の職務命令ですか」とか言い返されたりする職場は居心地がかなり悪いと思う。というわけで、法律の話は専門家の方々にお任せしておく。
ここでいわれていることの本筋はむしろ、働く者としての心構え、みたいな話だろうと思う。税金で食べている公務員に対して、区民が「もっとまじめに仕事に取り組め」と要求しているわけだ。そういう文句を言う人はしばしば「一時が万事」論みたいなのが好きだったりするから、「朝ぎりぎりに来るのは心がたるんでいるからだ。そんなことではだめだ」みたいな主張なのかもしれない。
個人的な経験だが、新入社員だった当時の上司は比較的時間にうるさい人だった。9時ぎりぎりに来ると、「9時は会社に着く時刻じゃなくて仕事を始める時刻だ」と言われた。その上司はほとんど残業せず、まわりが仕事をしててもすぱっと帰る人だったので、それはそれで一貫した態度だったといえる。部下である私にも「早く帰れ」と言ってくれてはいたが、私はあまり従わなかった。
当時の私自身は、少しちがう考えだった。当時の会社は残業が当たり前で、残業料が必ずしも全額払われてない場合もあったから、一応従いながら「だって残業だってしてるんだし、少しくらいいいじゃん・・」と思わないでもなかったが、それより、「自分の仕事はかけた時間でなく内容で評価されたい」という考えの方が強かったかもしれない。実際、朝ぎりぎりに来る人は意欲が低い、とは限らない。いい仕事をするためには時間をかけても惜しくない、と思っていたわけだ。
まあ、だからといっていい仕事ができていたかというと、必ずしもそうではなかっただろう。時間がかかっていた時点で、あまり効率的ではなかったこともわかる。今となっては、当時の上司も、どうせたいして仕事できない新入社員なんだからせめて「朝からはりきる」ポーズでもして職場を活気づけろという趣旨で言ってたのかな、ぐらいに考えている。朝っぱらから城東区役所に来ていた人も、そういう気持ちだったのかもしれない。
あるいは、何か面白くないことがあって、誰か反論してこない相手に文句を言いたい気分だったのかもしれない。役所の窓口業務は外部の目に触れる場所にあるわけで、そういう苦情を受けやすい職種ということにはなるんだろう。税金から給料もらってるのは事実だし、職員として、いらぬ苦情を受けて仕事のじゃまをされないように気をつけようよ、みたいな話と考えれば、それほど抵抗感なく受け入れられるのではなかろうか。ならば、「8時半には来い」というのも、文字通り受け取って騒ぐよりは、「まあそのくらいの気構えで」ぐらいに考えておけばいい。
というわけで、この手の話はあまりおおげさに考えすぎない方がいいと思う。区長さんとしては気になるらしく、その後こんなことをツイートしてるけど。
公務員が市民感覚を持ち意識を変え行動するのは当然のことです。市民の目で見てどう映るか、立ち位置を変え見つめ直さないといけません。私も昨年区長になり、新たな気持ちで見て、区役所周りがポイ捨てのゴミで見苦しく、区役所に来られる人を気持ち良く迎えたいと思い、毎朝の清掃を始めた所です。
— 城東区長 吉村 浩さん (@furusato_JOTO) 2月 14, 2012
「朝8時半に来い」と言った区民の方は「区役所のまわりを掃除しとくのは当然だ」とも言うのかもしれない。ただ、事情は知らないが、常識的に考えて、区役所のまわりでゴミをポイ捨てする人は、区役所の職員ではなさそうだ。「区民の皆さんもポイ捨てはやめましょう」ぐらいは言ってもバチは当たらないんじゃないかと思ったりするが、そうも言えないんだろうな。大変だな、というあたりで、オチのない話、終了。
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