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「痛みを分かち合う」について

先日、野田首相が大学生向けのイベントで、来年度の国家公務員新規採用数を7割削減するという件について「痛みを分かち合おう」と説いたという報道があった。それについてはゼミのブログ「こち駒」の方にネタ的に書いたのだが、あちらはやや若い人向けに書いている部分があるので、書き足りなかったことをここにちょっとだけ吐き出しておく。

「こち駒」の記事を見る

「こち駒」の方で私は、この政府方針に関して「冗談じゃない」というスタンスで書いた。そういう意見の人は少なからずいるようで、ツイッターなどでも「何が「痛みを分かち合う」だ」といった書き込みをよく見かける(私もした)。

ただ、「民間企業はこんなことやらない」みたいな意見もどこかで見かけたので、それについては異論を書いておきたい。景気が悪いときに新規採用を絞るのは、それが賢明な判断かどうかは別として、民間企業でもふつうに行われることだ。理想はどうあれ、少なくとも現在の制度や慣行の下では、少なくとも政府のような主体が既に正規雇用されている職員をどんどん解雇するといったことはかなり困難であるわけで、給与を引き下げたり早期退職制度を導入したりするのと併せて新規採用を絞ること自体は、スジ論としてはおかしいと思うが、ある意味現実的な判断といえなくもない。

あと、定期採用の数を年度によって大幅に変えると人事運営に支障が出ることがしばしばあるが、よしあしはともあれ現時点において年功序列型人事運営の色彩が強い国家公務員においては、その弊害がより強く出るであろうということはいえる。とはいえ、短期的であればまあ決定的な問題ということでもなかろう。

今回の話が大きな反響を呼んだのは、7割という数字がかなり衝撃的であり、かつ、定年後の再雇用に関する報道とほぼ同時期に出たために、非常に悪い印象を与えたということなのではないか。いまどきの学生は既に、政治家たちが年寄りの方ばかりを向いていて、自分たちのことを考えてくれない傾向があるということをよく知っている。法で求められた対応とはいえ定年者の再雇用を行うと同時に新規採用を絞ったら、誰だって若年層にしわよせしていると思うだろう。この状況で「分かち合う」などということばを使われたら、怒る人が出てくるのはむしろ当然だ。これほど空疎に聞こえる言葉もない。

とはいえ、同時に、「分かち合う」とか「身を切る」みたいな考え方ばかりが蔓延するのは、それはそれで問題があるようにも思う。佐々木俊尚さんが新著「当事者の時代」で指摘している「マイノリティ憑依」と表裏一体の考え方だ。極端な話、何かやるたびに官僚や政治家の給与やら歳費やらを減らしていったら、早晩ゼロになってしまう。「お互い様」を主張しあう前に、「適切な水準」に関する議論があってしかるべきだろう。そしてそれは、公務員すべて十把一からげ、政治家はみんな同じ、みたいな乱暴な主張から導かれることはない。めんどくさい、ややこしい議論をていねいに積み重ねていく必要がある。分かち合うべきなのは「痛み」というよりむしろ、そうした「めんどくさいこと、ややこしいこと」なのではなかろうか。

なにしろ就職関連ではいろいろな問題が錯綜していて、何か1つをどうにかすれば全て解決!みたいなうまい話はない。政府や政治家、役所だけでなく、就職活動をしている学生にも、企業にも、それぞれ責任を負うべき部分はある。もちろん大学にも大学教員にも。だからといって、部外者が口をだすべきではないといいたいのではなく、自分も当事者だという意識をもって議論に参加すべき、ということになろうか。主に大学生を意識して書いた「こち駒」の方の記事で「選挙に行け。話はそこからだ」みたいな結論になってるのも、一応そういう意図だったりする。

特にオチがある話というわけでもないので、本日ここまで。



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Comments

山口浩様

 今回と前回のエントリにおきまして、右カラムのレイアウトが崩れている原因は
本文最後の「Evernoteにクリップ」直後に表示されるはずの「Glow!」ボタンのJavaScriptコードが
途切れていることが原因かと思われます。たいへん僭越ではございますが、修正をお勧め致します。
 記事内容に無関係のコメント失礼致しました。

Posted by: ろんじんネット | March 24, 2012 at 10:37 PM

ろんじんネットさん、ご指摘ありがとうございました。
さっそく直しました。いかがでしょうか。
最初にちゃんとチェックしておけば、という話ですね。失礼いたしました。

Posted by: 山口 浩 | March 25, 2012 at 12:48 AM

山口浩様

 実は弊サイトにはブログエントリのHTML文書構造に異常があると機能しない部分がありまして不具合が発生しておりましたが、おかげさまで解消いたしました。(本来は前回エントリのときに気づくことができるべきなのですが、システムの不備により発見が遅れてしまいました。)
まことに恐縮です。迅速な修正ありがとうございました。

Posted by: ろんじんネット | March 25, 2012 at 07:54 AM

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