今最もアツい雑誌『ゼクシィ』における、きわめて正しい婚姻届の使い方
先日、ツイッターで『ゼクシィ』2012年10月号が話題になっていた。「妄想用婚姻届」が付録についている!と。そのときは、「結婚を現実には考えない層に雑誌を売るためか」とか「結婚しようという意欲を高めるために妄想をかきたてるのは正しい」とか言ってたんだが、気になって買ってみたら全然ちがってた。そしてこれはきわめて正しい!と思ったので少しだけ書いてみる。たまにやる「雑誌目次をみる」シリーズ。
本題の「妄想用婚姻届」に行く前に、まずは全体について。まあ情報誌なんで分厚いのはある程度予想してたんだが、アマゾンで注文したら電話帳かと思うぐらいのずっしりしたやつが届いた(首都圏版)。本誌1500ページ超。これに別冊が3つ、別添付録が1つついている。まさに圧巻。バブル期の『週刊住宅情報』の首都圏版もかなり分厚かったが、紙質がいい分、あれよりはるかに重い。内容も幸せムード全開だし、いまどきこれだけアツイ(いろんな意味で)情報誌が他にあるだろうか。
というわけで、まずは『ゼクシィ』2012年10月号の目次をご紹介。
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式直前に超忙しくならない結婚準備“本命”ダンドリ
結婚式の「あるある勘違い」ランキング
Myベストが見えてくる♥
はじめてのドレス選び 4step
式直前カップル
愛と怒涛の1週間リアルレポート
特別なゲストをおもてなし
プレ招待状「Save the Date」を贈ろう
結婚式の「ケチるな危険」警告35
笑顔咲き誇る♥ 最旬ブーケカタログ50
あなたに一番似合うマリッジリング30
はじめての会場見学うっとりレポート
奥深き 親衣装の世界
花嫁エステから始まる「新しい私」
インテリアショップ情報
結納・顔合わせ・婚約式情報
ドレス・和装・メンズショップ情報
ブライダルエステ・ヘアメイク情報
ブーケ・会場装花・押し花情報
写真・ビデオ情報
ペーパーアイテム・演出情報
ギフト情報
ホテル・式場情報
挙式会場情報
二次会会場情報
プロデュース会社情報
綴じ込み付録1
世界にひとつのアイテムが、誰でもカンタンに作れます♪
たった3つの材料でできる!結婚式の手作りBOOK
綴じ込み付録2
誰でもうまくコントロールできる法則を伝授♪
予算オーバーしない!結婚式費用の見積りBOOK
別冊
ずっと記念になる婚約指輪・結婚指輪が欲しい
ふたりのための婚約指輪&結婚指輪BOOK
別冊
レストランウェディングBOOK
別冊
BRIDAL FAIR BOOK
別添付録
くまのがっこう 可愛すぎる♥ジャッキーのキッチンタイマー
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…ふう。
あまりのテンションの高さにもうお腹いっぱいだが、ちょっとだけコメントしておく。最初の特集記事「式直前に超忙しくならない結婚準備“本命”ダンドリ」は、要はちゃんと事前にいろいろ準備しとかないと直前にバタバタして大変だよというお話。まあそうだよね。とはいえ実際にはそうはいかないことが多いわけで、その少し後に出てくる「式直前カップル 愛と怒涛の1週間リアルレポート」をみると、やっぱり最後の1週間はバタバタになっちゃってたりする。というわけで、理想は理想として、実際にはいろいろ大変ということだね。
「プレ招待状「Save the Date」を贈ろう」というのも面白い。たしかにこれも、日が合わなくて来れない人とかいるわけで、きめ細かい配慮とはいえる。でもこれ、ほんとに絶対来て欲しい大事な人だったらメールとかで事前に聞くよねえ?わざわざ紙で出す必要があるんだろうか・・・とか考えちゃいけないのだな。なんたって結婚式なのだ。「一生に一度」かどうかは別として、「一生の大事」ではあろう。特にこの雑誌がターゲットにしているであろう妙齢女子の皆様にとっては「センスのいい私」を演出するまたとない機会。ゆめゆめおろそかにはできないのだ。
あと、個人的に注目したのは「親衣装」のコーナー。とうとう親の衣装まであれこれいわれるようになっちゃったわけね。基本的に本誌では、衣装については花嫁98%:花婿2%ぐらいの配分(※主観による)ぐらいの比でしか出てこない。まあ新郎が何着てるかなんてぶっちゃけ誰も見てないしね。という印象でいたのだが、ここではちがう。男親の服装がおおよそ3割ぐらい(※これまた主観)取り上げられてる。とにかく新郎の服装に対する冷遇っぷりとは一線を画す注目度だ。
これは・・と思ったが、考えてみればまあわからなくもない。これはどうみても、「花嫁の父」対策だ。「花嫁の父」は、新婦とはちがう。手塩にかけて育ててきた娘をかっさらわれる人という、結婚式における特別な役割がある。泣いてみせたりしようものなら、来場者も感動の嵐!というわけで、いってみれば、花嫁の最高の引き立て役なんだね。となれば花嫁としても、この大事な場で父に、あの謎な冠婚葬祭オールOKの黒いスーツみたいなどうでもいい礼服で来られたのではかなうまい、ということか。記事で取り上げられてるのは洋装で、昼ならモーニングかディレクターズスーツ、夜ならタキシード、カジュアルな式ならブラックスーツ、なんてところ。定番ともいうべき紋付袴はない。まあそんなのはわざわざここでとりあげんでもいいということか。
本誌の方はまあこんな感じ。さて本題の婚姻届について。これも本誌の綴じ込み付録っぽくなってる。
夫婦になるHappy、♥♥2倍増し
提出用ホンモノ婚姻届 & 妄想用にんまり婚姻届
だそうだ。なんで「happiness」じゃなくて「Happy」なんだろうとか思わなくもないがそういう細かいことはおいとく。要するに、2つついてて、うち1つは本物、もう1つは本物じゃないということだ。本物の方については、知ってる人も多いだろう。2人の名前、住所、本籍、父母の氏名、婚姻後の姓、新しい本籍、同居開始日、新婚・再婚の別、同居前のそれぞれの世帯のおもな仕事と夫妻の職業なんかを書いて、本人と証人の署名。もちろん実際に使える・・はず。届け出る自治体の名は書かないといけないけどね。実際には、その自治体の役所で書類をもらって書くのがふつうだろうが、手元に同じものがあるというのはそれはそれで盛り上がるものがあるんだろう。
では「妄想用にんまり婚姻届」の方はいったい何だろうか。実物を見るまで、本物の婚姻届と同じ様式で、自分と相手(妄想の対象)との婚姻届を作ってニマニマする目的かと思ってたんだが、そうじゃなかった。ちゃんと「使い方」の説明ページがあって、こう書いてある。
「夫婦になるワクワク感を高めよう」
つまり、実際に具体的な「相手」がいて、「合意」がちゃんとできてるっていう前提なのだ。「あの人と結婚できたらいいな」と妄想をふくらますためではないのだ。このあたり、私はそもそもこの雑誌のターゲットを見誤っていたと認めざるを得ない。ターゲットは、「決まった人」なわけであって、結婚そのものを妄想してる人ではないのだね。
「リア充ばくはつ(ry」みたいな怨嗟の声がネットのあちこちから聞こえてくるような気もするがそういうのは無視してよく見てみる。作りはけっこうリアルで、いかにもお役所向け届出書っぽいんだが、項目がちがう。
日付欄には、「付合(つきあい)開始)」、「結婚申出(プロポーズ)」、本物の婚姻届の提出予定日を書くようになっている。で、新姓で名前を書く欄。これ地味にインパクトあるんじゃないかな。自分に名前に相手の苗字をつけて書く、みたいなのは子どものころとかもきっとやったんじゃないかな。それから相手の呼び方、自分はどう呼ばれたいか、理想の朝食やら休日の過ごし方やら、毎日のキスの回数(なんぞ)、夫婦での決まりごと、家事の分担、老後の過ごし方など。
つまり、この「妄想用にんまり婚姻届」っていうのは、結婚後の生活を具体的にイメージさせるだけじゃなくて、それを2人が共同で書き上げることで、結婚後の生活について、2人があらかじめ話をする機会を提供しようというものであるわけだ。これはきわめて正しいアプローチといえるのではないだろうか。ある意味、最近聞くようになった、いわゆる「結婚契約書」に似た性格を持っているといえるかもしれないが、それよりずっと気軽だ。「結婚契約書」というとちょっと構えてしまう人も、「妄想用にんまり婚姻届」なら冗談めかしてわいわいやりながら、比較的素直に、2人の将来について話をするきっかけになるのではないか。それで、本物の婚姻届もついてるから、地に足のついた話も必要だよねってことに気づかされる。なんて正しい「婚姻届」の使い方だろう。うーむ、これ考えた人、すごい。
結婚に関しては、妙に小難しい理屈を振り回したり、やっかみやら何やらを込めてあれこれぐだぐだ言う人がけっこういたりするわけだが、こういうシンプルだけど強い思い、みたいなものを大事にするところから始めた方がいいのではないか、と思う。もちろん、夫婦別姓ガーとか事実婚ガーとかいう方はそうしていただければいいわけで、別にそれを否定するものでもない。「俺の嫁は次元が違う」という向きはもちろんそれなりに。それぞれが好きなようにやればよい。少なくとも、『ゼクシィ』のこのアツさ(複数の意味で)をみれば、結婚という形式に魅力を感じる層の人がそれなりにたくさんいることはわかるし、そういう人たちを応援するのは悪いことじゃないよね。
というわけで、「決まった」皆さんはぜひ、この「妄想用にんまり婚姻届」でわいわいやりながらニマニマしていただきたい。決まってない皆さんも、もし決めたいなら、「勇気」を奮い立たせるために「妄想用にんまり婚姻届」を壁に貼っとくといいかも。
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Comments
全然関係ない話ですが、そろそろ日本でも選挙が近そうですが、数年前まで貴殿が一生懸命追いかけていらした予測市場のshuugi-inについては、もう追っかけるのはやめたんでしょうか。
生徒にまで呼びかけて扇動していた頃の熱意はどこに行ったのでしょうか?
政治的立場ではなく、ネットの可能性を学問的に追う立場としては、今回も動向を追いかけるべきではないのですか?
Posted by: べっちゃん | September 01, 2012 01:56 AM