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ボルドーワインでグルメブロガーになろうとして玉砕した話

ブロガーにもいろいろな種族がいるのだが、ひそかに憧れているのがグルメブロガーだ。もともと舌が貧しいので、ジャンクフードでもできの悪い料理でもそれなりにおいしく食べられてしまうのだが(それ自体基本的に幸せなこととも考えているが)、おいしいものを食べてそのおいしさが適切に理解できたら、そしてそれを的確に伝えられたら、とも思っている。それに、グルメブロガーの方々から漂う「人生満喫してる感」がなんともうらやましいのだ。あんなふうになりたいのだ。

というわけで、AMNから食べ物関連のブロガーイベントのお知らせをいただくとついふらふらと申し込んでしまうのだが、2012年10月23日に参加したのはこれまでで最も場違いなイベント。「バリューボルドー2012発表試飲会」。結果見事に玉砕してきたのだが、まあもちろんおいしいにはおいしかったのでそのあたりを少しだけ書いてみる。

行ってきたのは、ボルドーワイン委員会 (C.I.V.B.)の企画・主催で行われた、「バリューボルドー2012」の試飲イベント。「バリューボルドー」というのは、1000~3500円ぐらいのボルドーワインからプロの皆さんがブラインドテストで「品質と価格に優れた」ワイン100本を選んだというものらしい。毎年やってるようなのだが、2012年版のお披露目が行われたというわけだ。

基本的に、こういう発想は悪くないと思う。確か、日本人のワイン消費量は人口1人当りで年間2リットルぐらいだったかと思う。これがフランスだと年間52リットル、イタリアは45リットル、ドイツは25リットル。アメリカは9リットルというわけで、それらと比べるとだいぶ少ない(OIV)。成人1人当りだと約2.5リットル。全アルコール飲料消費(数量ベース)のうち概ね3%がワインだが(日本ワイナリー協会)、日本人のアルコール飲料消費自体が減少傾向にある。一方で、ワイン産地としては、最近はアメリカだのチリだのオーストラリアだのがどんどん存在感を増している。特に低価格帯のワインはそうだ。その意味で、ボルドーの皆さんには「押され気味」という自覚があるらしい。

つまり今は、潜在市場はけっこう大きいと思われているのになかなか市場が伸びない。ボルドーワインのいい点である「よりどりみどり」が「たくさんあってどれがいいかわからない」、「高級イメージ」が「高そう」といった具合に、よろしくない方向に働いてしまっている。そこで、お手頃な価格でおいしいとプロが太鼓判を押したものを、こんな味でこんな料理に合うよというお勧めつきで売りだそうというのが「バリューボルドー」ということになろうか。たいへんけっこうなことである。

イベントが開かれたのはマンダリンオリエンタル東京。なんとも私には場違いな空間である。なんせドレスコードまであるのだ。変な格好していくと入れてもらえないかもしれないのだ(まあ、ふだんどおりの格好で行っても入れてもらえたわけだが)。まずは何やら小さめの部屋に通される。どのくらい場違いかというとこのくらい。ここにブロガー15人ほどが集まったわけだが、うち男性は私を含め2人のみ。女性のグルメブロガーの皆さんは互いにお知り合い同士で、何やら楽しげに近況報告など交わしておられる。既にアウェー感満載である。
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イベントはというと、「ボルドーワイン公認講師でありバリューボルドー2012審査員でもある、田崎真也ワインサロン支配人、元場章人氏によるブロガー向け特別ミニレクチャー」なるものがあり、そのあと、「バリューボルドー2012」の中から白ワインと赤ワインを1種ずつテイスティングするという流れ。この元場さんという方がまた女子受けしそうなイケメンさんで、登場したとたん女子グルメブロガーの方々のテンションが一気に上がったものだから、寂寞感はいや増すばかり。いや、ミニレクチャー自体は面白かったんだよ?ヘンリー2世の時代にボルドー一帯が英国王の領有地であったことがワイン産業の発達を促した話とか、別に「お城」じゃなくてもシャトーって呼ぶ話とか。
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テイスティングしたのはこの2本。いずれも2010年。白はシャトー・ラ・ローズ・デュパン。下に貼った楽天の価格だと1680円。ちょっと緑っぽい色。さわやかめでちょっと草っぽい香りがする。いただいたブックレットによると牡蠣なんかと合うらしいが、個人的にはかまぼことかちくわみたいな海の練り物系に合いそう。赤はムートン・カデ・ルージュ。楽天価格は1260円。メルロー多めらしく味がしっかりつまってる感じで、どの味が強いというんじゃなくてバランスがとれてる。記憶が正しければ元場さんはハンバーグとかと合うみたいに言っておられた。確かに合いそう。個人的にはそこにとろけるチーズとか載せたい。フライドポテトとか添えたい。バゲットとか欲しい。

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シャトー・ラ・ローズ・デュ・パン...

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価格:1,680円(税込、送料別)

ムートン・カデ・ルージュ [2010]Mouto...

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・・・・・。
ええと、ワインの評価っぽく見えるだろうか。
グルメブロガーになれただろうか。
大丈夫かな。わかってないとかいわれないかな・・・。

正直いうと、こういうあれこれがめんどくさいのだ。もちろん、それぞれ合う料理があって、うまく合わせるとよりおいしくなるのはわかる。でも、考えるのめんどくさいのよ。少なくとも、ワイン選びのセンスのよしあしをあれこれ言われるのは嫌だ。いいじゃん適当で、とか思っちゃうのよ。ちゃんと作られてて、きちんと保管されてたワインなら、どれもそれなりにおいしいじゃん。グルメな皆さんはいろいろ言うかもしれないけど、ボトル500円のやつだってけっこういけるよ?前に飲んでおいしかったからまたこれ、でもいいし、こんな料理に合いますよっていわれたらそうなんですかといって飲めばいい。いいじゃんたかが飲み物なんだから。

・・・なんてことを書いちゃいかんのだが、このあたりがグルメブロガーになれない理由なんだろう。とはいえ、まじめな話、私に言わせれば、ビジネスとしてのワインの本当の「敵」は、このグルメ志向、というか教養主義っぽく思われてるあたりなんじゃないか、と思うことがある。実際にそうかどうかは別として、ワインっていろいろめんどくさくて堅苦しいと思わせる何かが、人をワインではなくビールやチューハイに、あるいは日本酒や水割りに向かわせるのではないか、と。

まあ、そういう話はともかく。

もちろん、試飲したワインはおいしかった。確かにこの値段でこの味なら文句はない。で、ふむふむと唸ってたら、今度は別室で行われてるプロ向けの試飲会に参加させてもらえるらしい。こちらでは、「バリューボルドー2012」の100種類全部を試飲できる、と。もちろん100種類全部飲んでたらとてももたないわけだが、いろいろ選んで試せるのはうれしいではないか。

試飲会場の入口はこんな感じ。ずらりと並んだ瓶が壮観。

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中はこんな感じ。もらった冊子の説明を読みながら、「○○番」と言うとそのワインを試飲できるしかけ。あとは体力勝負、というか体内のアルコール分解酵素の皆さんの奮闘に期待するのみ。ほんとのプロなら試飲といっても全部飲まないで吐き出したりするのかもしれないが、素人としてそんなまねはできない。お百姓さんとお天道様に申し訳が立たない。

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試飲したのはこんなあたり。個人的には赤の方が好きなので、赤中心に。白は、これまであまり飲む機会がなかったデザートワイン系を試した。

シャトー・マルテ・レゼルヴ・ド・ファミーユ2009
これはメルロー100%。すごくはっきりした強い味。冊子にはハード系チーズと、とある。悪くなさそう。でも個人的には、ビーフシチューとかもよさそうな気がする。どろどろのすっごく濃いやつ。もちろんチーズもいっっしょに。

シャトー・レグリーズ・フュ2010
これは割と軽くてさっぱりめ。カベルネ・ソーヴィニョンが多めであるせいらしい。新じゃがに合いそうな赤はないかなあと相談して教えてもらったもの。うむ。わかるわかる。ベーコン、じゃなくてハムとかといっしょにするともっといいかも。女性が好きそうな赤、という言い方もあるかな。


カステルノー・ド・スデュイロー2007
甘い。この手のものはふだんほとんど飲まないので、へえこういう感じなのかあ、と。冊子によるとフォアグラに合うそうなんだけど、個人的にはこれはこのワインだけ飲むのでいいんじゃないかなあ、とか。小売価格2625円だそうで、この値段で飲めるんだねソーテルヌ。

シャトー・ドーフィネ・ロンディロン2002
こちらは先ほどのやつよりは甘くなくて、少し洋なし、というかメロンっぽい味。合わせるんならフルーツ系のケーキみたいなやつがいいかも。

あともう何種類か試飲したはずなんだが記憶にない。最後の試飲を終わったころにはもうそうとう頭がぐらぐらしていて、さすがに限界と撤収を余儀なくされた。他のブロガーの皆さんはまだまだお元気に試飲を続けておられて、グルメブロガーになるには酒にも強くなければならないということがよくわかった。案の定というか、やはり玉砕に終わった次第。というか、どんな料理と合うみたいな話をしようってときに酒だけ飲んでもよくわかんないよねえと思ったりもする。いやご招待いただいた身で言えた義理ではないんだが。

帰り際にワインを1本いただいた。いたれりつくせりである。最初に試飲した、シャトー・ラ・ローズ・デュ・パン2010。試飲のとき感じた直感にしたがって、ちくわと笹かまぼこと合わせてみた。けっこう合うと思う。ちょっと草っぽい香りが練り物にぴったり(※感想には個人差があります)。・・・自分はそう思うというだけなので、別に人には勧めないが。

ともあれわかったこと。ワインの味って、個々に飲むとあんまりよくわからなくても、比べて飲むとけっこうわかったりする。そういうのを楽しみたいという場合は、複数のワインをちょっとずつ飲めるような仕掛けがあるといい。店ならグラスでいろいろ試せるだろうけど、それでも何杯も飲むのは大変。となると、今回のイベントみたいな試飲をさせてくれる店があるといいのかな。ごく少量ずつ出してもらって、いろいろ試せて、で、横ではそれらに合う料理も売ってる、みたいな店があったら。というかイベントでやってもいいよね。チケット制とかにして時間内試飲し放題みたいな。

以上、グルメブロガーになろうとして玉砕した話、終了。



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Comments

いいねとつけようと思いましたが、ボタンが無かったのでコメントしました。
フランスに限らず安いワインは余る傾向にあるので、こうしたイベントが必要なのでしょう。
100種類も試せるとは素晴らしいイベントですね。
次回、白を開けるとき、ちくわ、笹かまを試してみようと思います。

Posted by: サンディ | November 06, 2012 at 02:00 PM

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