「綾鷹茶会」というのに行ってきた
綾鷹、というお茶のブランドがある。私はこれを日本コカ・コーラ㈱が展開するペットボトル緑茶のブランドとして知っていたわけだが、もともと「綾鷹」というお茶があったらしい、というのを、先日参加したブロガーイベントで知った。AMNで募集していた「綾鷹茶会」というやつ。ふだんは実に貧しい食生活をしているわけだが、実はひそかにおしゃれなグルメブロガーになりたいという野望を抱いているせいで、こういうイベントにはついふらふらと迷い込んでしまう。毎回あえなく撃沈してるんだけど(前回の撃沈はこれ)。
2014年3月17日(月)に開かれたこのイベント、会場は明治記念館。ふつうに立派な宴会場である。さすが日本コカ・コーラ㈱、ぜいたくである。会場はこんな感じ。当然ながら、私以外は皆、おしゃれなグルメブロガーの皆さんである。思い切りアウェーである。
今回のイベントは、「綾鷹」のボトルが新しくなったので、という趣旨らしい。確かに新しいボトルは、まんなかあたりにくびれができていて、容量も525mlと少し増えている。
ちなみにこれが前のボトル。
ボトルを新しくしたというのは、当然ながら何らかの理由があったのだろう。こちらを見ると、「綾鷹」はペットボトル緑茶飲料の中ではけっこう好調であるらしいが、さらにてこ入れをしたいということだろうか。これは一消費者としての実感だが、こういうところで「売れている」「人気」と書かれている割には、コンビニなどの店頭でいまひとつ目立たないような気がする。テレビなどのCMでも目立つのは伊藤園とかサントリーとかだ。
「なぜ「綾鷹」が売れているのか? ヒットの秘密を探る」(BusinessMedia誠 2012年10月31日)
「好きなペットボトル入りのお茶系飲料ランキング」(FastAsk2013年12月16日)
その意味で、ブランドとしての知名度や人気をもっと上げたいと思っているのだろうなあ、と想像する。実際、このブロガーイベント以外にも、「綾鷹」に関してけっこういろいろな手を打っているようだ。どうも、一連のマーケティング施策で力を入れているのは、「綾鷹」を生み出した上林春松本店やその伝統を打ち出すことと、その象徴として、代表である上林秀敏氏を前面に立てることであるようにお見受けする。
「2013年「日本全国綾鷹試験」キャンペーン1月21日(月)から開始」(日本コカコーラ㈱プレスリリース 2013年1月21日)
「「綾鷹」が誕生するまでの道のりを楽しく体験できる「綾鷹 人生ゲーム」、無料公開」(日本コカコーラ㈱プレスリリース 2013年7月18日)
「「綾鷹」と三谷幸喜監督 映画「清須会議」がコラボレーション 三谷監督と上林代表出演のTVCM&WEBムービー「急須会議」を公開」(日本コカコーラ㈱プレスリリース 2013年10月23日)
「コカ・コーラ「綾鷹」×『へうげもの』の大型タイアップ始動! まずは「綾鷹茶会大喜利」にご応募をば!!」(モーニング公式サイト 2014年3月19日)
何しろこの上林家、足利義満の時代から将軍家の庇護を受けていた御茶師であったというから、14世紀にまで遡る。永禄年間から宇治で茶商を営み、織豊時代を経て徳川将軍家からは宇治代官、茶頭取を拝命している。その上林家の当主となればこの方、お茶の世界ではエリート中のエリート、ということになるんだろう。
で、第十代のころ、天保年間に幕府には内緒で作られ、一般に販売されたお茶の名が「綾鷹」だったという。今私たちが飲んでいるペットボトルの「綾鷹」は、その名を継いだものであったわけだ。現在、上林春松本店でも「綾鷹」という名の煎茶を売っている。見ると「誕生いたしました」って書いてあるから、この名の商品を復活させたということなのかもしれない。
ともあれ、そういう背景を持った「綾鷹」を楽しもうというこのイベントであるわけだが、まずはおいしいお茶の淹れ方実習。ここでは件の「綾鷹」の茶葉を使う。これ。
上林春松本店のオンラインショップだと170g×2缶で3400円とある。高級品というほどではないが、なかなかのお値段である。少なくとも私がふだん飲んでいるお茶の約3倍だ。とはいえ、茶葉だけで決まるわけではもちろんない。お茶というのは、きちんと気を使って淹れないと、きちんとおいしくならないのである。で、教わった通りに淹れてみると、これが正直な話、ペットボトルの「綾鷹」より数段おいしい。味の傾向は似ているのだけど。
ふむふむ。というわけで、次に行われたのは、お茶の合組体験。合組というのは、要は茶葉のブレンディングだ。さまざまな個性のある茶葉を組み合わせて望む味に仕上げる。参加者がそれぞれ自分の好みの合組でオリジナルのお茶を作ろうというわけだ。
上林秀敏氏の説明で面白かったのは、「人は茶に『いつもと同じ味』を求める」という話。で、安定した味を作るために、ブレンディングが行われる。用意されたのは、5種類の茶葉。この時点ですでに複数の茶葉がブレンドされているそうだが、それぞれ個性が分かれている。これを組み合わせて望む味を作っていくということらしい。
まずは茶葉そのものの香りを確かめる。文字通り茶葉をざくっと握るのである。ふだんこういうことはしないので、これはなかなか勇気がいるが、思い切ってざくっとやる。鼻に近づけてふんがふんがと嗅いでみる。確かにそれぞれ個性がある。何やらメモ用の紙が用意されているので、一生懸命思い浮かべて書いてみるのだが、どうにもうまくいかない。こういうときに味を語ることばが全然出てこないのは、ふだんの食生活の貧しさゆえということなんだろう。敗北感に打ちのめされる瞬間である。
気をとり直す。次に、湯を注いで、再び香りを確かめる。
今度は茶葉をよけて、茶の色や味を確かめる。味は器のお茶をスプーンですくって口にふくむ。色も味もちがっているのが面白い。この中では緑色に近いものの方がまろやか系、茶色に近いものの方が荒茶っぽい味だった。
で、以上をふまえて、どの茶葉をどのくらいの比率で組み合わせるかを考える。といっても、素人に難しいことができるわけはないから、まあ適当にやるしかない。私はふだん飲んでいる荒茶に近い味を出そうとしてそっち方向のものを多めに、それ以外はある程度均等に分ける感じで考えた。
で、参加者それぞれの合組が出揃ったところで、上林秀敏氏が各グループから1つを選んで目の前でブレンドしてくれる。この動作がなかなかきれいでかっこいいのである。
最後は、自分たちのグループから選ばれたオリジナルブレンドの茶葉と、上林秀敏氏が同じ5つの茶葉からブレンドしたものとを飲み比べる。上林氏のは、最初に飲んだ綾鷹に近いまろやかな味。さすがにプロはちがうよね、という感じ。
というわけで、なかなかに楽しいイベントであった。私の合組は採用されなかったわけだが、後で聞くと、全員分のブレンドを実際に作って送ってくれるらしい。お金のかかったイベントだなあと思うが、日本コカ・コーラ㈱のマーケティング予算から考えればこのぐらいは楽勝、なのかもしれない。実際、「綾鷹茶会」と題したイベントがこれから全国で開催されるらしいし(今みたらもう始まってる)。私が参加したのはそれを広めるためのブロガーイベントだったということなんだろう。
「茶道楽は身上潰す」とよくいうが、実際お茶というのは贅沢をすればきりがないわけで、いつもこんなふうにいいお茶をていねいに淹れて、という生活を送るのは、少なくとも私には無理だ。とはいえ、私たちがふだん飲んでいるペットボトルの「綾鷹」も、少し振って、沈んでるにごり成分を混ぜてから飲むとよりおいしくなる由。実際、やってみたら味が少しちがったのでお試しあれ。というかこれまで見逃してたけどボトルにそう書いてあるんだよね。
基本的に味にはうといので、これまでペットボトル緑茶飲料に関して特段の好みはなかったんだが、こういうイベントに参加すると多少なりとシンパシーが生じるので、これからはお茶を買うときに「綾鷹」を見つけたら選ぶ、ぐらいにはなった。実際おいしいし。とはいえ他のブランドのイベントに参加したらまた変わるかもなので、そういうイベントがあったらまた参加するかも。
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