「戦国の六等星」発刊について
戦国時代の備中(今の岡山県)にいた戦国武将の話。なんでまた私が、という話はまえがきにちょい詳しく書いたのだが、要するに第一著者である娘の卒論に私があれこれ加筆して本にしてみたもの。したがってフィクションではない。ある意味、卒業祝い的な部分もないではないが、この題材と内容は実際面白かった、ということが大きい。
三村元親は一般的にはあまり有名ではないが、戦国ファンなら知っててもおかしくない程度には知られていると思う。天正二年(1584年)に突然隣国の毛利氏に叛き、あっという間に亡ぼされたという、正直あまりかっこよくないかたちで歴史に一瞬だけ名を残し、そして消えていった(ちなみに滝口康彦著『鬼哭の城』(新人物往来社)には備中兵乱をテーマとする短編小説が載っている)。
とはいえ、周辺には織田信長やら毛利輝元やら小早川隆景やら、あるいは宇喜多直家やら大友宗麟やら浦上宗景やらといった、有名どころ、そこそこ有名どころの武将がぞろぞろ登場する(村上水軍の話もちょっとだけ出てくる)から、超マイナーというほどマイナーは話ではない。今やってるNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の登場人物たちもたくさんいる。実際、三村元親はどうも、官兵衛とほぼ同世代であったらしい(生年不明なので正確にはわからないけど)。官兵衛に関連する話は、補遺として末尾に付け加えてみた。
「備中兵乱」として知られるこの戦いに、もう少しちがう側面があったんじゃないか、というのがこの本のテーマだ。要するに、謀反というより、リストラされそうになった中間管理職の抵抗、みたいなことだったんじゃないか、という見立てだが、それをいろいろな側面から検証していく、という内容。もちろん学部生の卒論に畑違いの私が手を入れたものだから専門家の皆様の研究とは比べるべくもないが、逆に自由な立場で視点を広げてみた。備中兵乱を、海を含む水上交通の面と、製鉄という側面からみているものは、これまでの研究ではみたことがないように思うので、それなりに面白いのではないかと思う。
一次史料(当時の文書等)を(原文ではなくテキスト化したものだが)たくさん使っているせいもあって、字数でいうと13万字ぐらいあるからちょっとした単行本程度の分量はあるが、史料を除いた本文部分だけだと10万字を切ると思う。織田信長みたいな有名武将ではないので三村元親の肖像画みたいなものは残されていないが、「国立国会図書館デジタルコレクション」や、最近公開された京都府立総合資料館の「東寺百合文書WEB」なんかから、当時の文書や地図の画像を一部使わせてもらっている。
参考までにだが、三村元親の本拠であった備中松山城は、現存天守を持つ山城としては最も高い所にある。標高でいうなら、最近「天空の城」として有名になった竹田城よりも高い。今残っている城郭は江戸時代のもの(これも重要文化財だったりするけど)なので、元親の時代のものは石垣の一部とかほんのわずかしか残っていないが、季節によっては竹田城と同様、雲海に浮かぶ姿がみられるようなので、行ける方はぜひ行ってみるといいと思う。
というわけで、ご興味のある方、よろしければぜひ。
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Comments
失礼します。
岡山県在住の森と申します。
岡山県地域の戦国時代史について学んでおります。
標記御著書は大変な労作とお見受けいたしますが、Kindle本ではなかなか拝読叶いません。紙ベースで読ませていただけるようになる予定というのは…ないでしょうね(汗)。
Posted by: 森 俊弘 | June 22, 2014 08:10 PM
森さま
コメントありがとうございます。ご著書、論文等を参考文献でいくつも挙げさせていただいておりまして、いや恐縮至極です。本文にも書いた通り私自身は素人ですし娘の学部卒論がベースなのでお恥ずかしいできだとは思いますが、ご笑覧いただけるなら光栄です。紙の書籍にするには若干の作業が必要で(kindle本は縦書だとルビが入らないのですべてカッコ書き担っている等)ただいまその作業を進めております。オンデマンドで出せるようになればと考えておりますので少々お待ちください。
Posted by: 山口 浩 | June 23, 2014 08:23 PM
丁重な御返事をいただき恐縮です。
見出しからすると論点が多岐に亘る労作と
お見受けいたしました。
その日を楽しみにお待ちいたします。
それでは。
Posted by: 森 俊弘 | June 27, 2014 10:25 PM