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August 23, 2015

Bigger! Louder! More teeth!

今年の夏はハリウッドの大作もいろいろ公開されて楽しい。その中には当然、「ジュラシック・パーク」のシリーズ最新作「ジュラシック・ワールド」も含まれる。この手の映画が大好きな山口としては見逃せないのである。

というわけで、手短に感想など。以下多少のネタバレあり。

映画の内容については改めて紹介するまでもない。恐竜が出てきて人が食われるがどうにかして収める。基本的にはそれだけだ。王道のこのパターンを飽きもせず繰り返しているわけだが、もう少しまじめに説明すると、第1作でティラノサウルスとヴェロキラプトルが暴れまわってプロジェクトが挫折したコスタリカの孤島が、いまや新たな資本によってみごとなテーマパークに生まれ変わり、多くの観光客を集めるに至ったものの、そこでまた・・という流れだ。

本作の見どころは、私見だが3つある。1つめはやはり、恐竜といえばこれ!の大型肉食恐竜。第1作ではティラノサウルス・レックスが務めたこの役回りだが、今回の主役はインドミナス・レックスなる新種。新しく発見されたのではなく、遺伝子操作で作られた正真正銘の新種。なんでそんなもの作ったのかというと、劇中のセリフを引用すれば、

"bigger, louder, and with more teeth"

を人々が求めるから、だそうである。実際のところ、こういう発想は実にアメリカ的だと思うが、まあわからなくもない。少なくとも、人々(これはアメリカ人に限らないだろう)が恐竜映画に期待するものといえば、やはり"bigger, louder, and with more teeth"であろう。そうしたシビアの観客の視線は、大ヒットとなった1993年の第1作から97年の第2作、2001年の第3作にかけて、興行収入が落ち続けていることにもあらわれている。以下はWikipedia先生調べによる世界興行収入。

1993 ジュラシック・パーク $914,691,118
1997 ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク $618,638,999
2001 ジュラシック・パークIII $368,780,809

第1作では1頭だったティラノ(原作小説では2頭だったように記憶している)を第2作では2頭に増量してサンディエゴの街で暴れさせてみたものの迫力がいまひとつ足らず、第3作では新キャラのスピノサウルスを投入したもののティラノとの差別化にいまひとつ成功せずというわけで、彼らとしてももう1作作るにはさらなる"bigger, louder, and with more teeth"が必要だったのだろう。

とはいえ陸上生物の大きさには自ずと限度があるわけで、本作では分類上恐竜ではないものの、大きさではティラノやインドミナス・レックスを上回る巨大海生爬虫類モササウルスも登場する。インドミナス・レックスも一撃で噛み殺す大きさ。まさに"bigger, louder, and with more teeth"を地で行くのである。こんなのまで見られるなんてまァなんてお得だこと。

2つめの見どころは、飼いならされたラプトル戦隊。第1作から集団で狩りをするなど社会性に優れたヴェロキラプトルだが、第3作ではグラント博士との間でかろうじてコミュニケーションが成立するようになる。そして本作の主役、オーウェンはなんとラプトルたちを手なずけ、自らを彼らの群れのリーダーとして認識させることに成功してしまうのである。

たとえばこのシーン、動物園の飼育員たちの琴線に触れたようで、多くのパロディ画像がネットに公開されているらしい。

本編ではもっとダイレクトにオーウェンとラプトルたちのコミュニケーションが描かれる。号令一下ラプトルたちが敵に向かって走り出すさまは壮観。今回のラプトルたちは、人間が演じた動きをモーションキャプチャーで恐竜の動きに変換しているそうで、人間と意思疎通するラプトルたちの「知性」ある動きがかわいくすら感じる。

そして3つめの、そして最大の見どころ。それは何といっても、ウー博士の再登場だ!

・・・ウー博士に注目している人はそれほど多くないだろうが、彼こそ第1作のジュラシック・パークから恐竜の復活を手掛けてきた人物であり、そして第1作の登場人物の中でただ1人、同じ人物役で本作に出演しているのだ。演じているB.D.ウォンのインタビューはこちら。

ウー博士が開発した恐竜復活技術は、他の生物の遺伝子を組み込むことで絶滅した恐竜を蘇らせるというものだったが、本作ではそれがさらに「進化」して、新種の恐竜を「設計」し作り出すことに成功している。倫理的な問題も満載だろうが、それらを一切無視してずんずん研究を進めていく部分、意図に反した結果となってもまったく反省しない部分など、このシリーズ全体を流れるテーマの1つである、科学の危険な側面を体現する人物といえる。

しかも、原作では第1作にあたる「ジュラシック・パーク」の時点であっさりヴェロキラプトルに食われて死んでしまうウー博士が、映画では端役ながらしぶとく生き残ったのである。本作でももちろん死なず、むしろ本作では全体のキーパーソンとなっている雰囲気すらある。パークに危機が迫ると観光客そっちのけでいち早くヘリで脱出してしまう。実にすがすがしいくらいの極悪人ではないか。

そして、ウー博士が生き残ったということは、続編の可能性がまだあるということを意味する。そもそもこのシリーズでは、最初のジョン・ハモンドによるジュラシック・パーク計画が挫折した後も、DNA操作で復活させた恐竜を使ったテーマパーク計画は脈々と生き続け、その事業主体を変えながら、とうとう巨大パークのオープンにまでこぎつけた。この飽くなきビジネスへの執念が、本作で描かれた程度の失敗でとだえようはずもない。何十人食われても、何度でも甦るさ!恐竜パークは人類の夢だからだ!というわけだ。すなわちそれは、今後もさらなる工夫を重ねながら、"bigger, louder, and with more teeth"の方向性で、恐竜映画も作られ続けるであろうことを意味する。実に見上げたフロンティアスピリットである。

きっと次作では、さらに大きく狂暴な恐竜が出てくるのであろう。次の次の次くらいには全長50メートルで口から放射能の青い光を吐く恐竜あたりが登場するのであろう。ラプトルたちは完全に飼いならされ、次の次の次の次くらいにはミュータント化して忍者の技を使うようになるか、「あ!やせいの ラプトルが とびだしてきた!」みたいなときに小さなボールを投げてつかまえたりするようになるのだろう。ウー博士さえいれば何でも可能なのである。ウー博士万歳なのである。

というわけで、ウー博士に再会できて大満足の本作。スティーヴン・スピルバーグ先生の次回作にもご期待ください、なのである。

万が一そういう状況がお望みでなければ(私は大好きだが)、まあそろそろ、このシリーズはこのへんにしとくのがいいのではないかな。ジュラシック業界にはすでに伝説の怪作が目白押しなのだし。

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