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5年

東日本大震災から今日で5年。被災地でも、そうでない場所でも、震災にちなんださまざまなイベントが開かれている。毎年この日はめぐってくるわけだが、やはり5年というと、特別な思いを抱く人は少なくないだろう。

この間、さまざまなものが変わり、そして変わらなかった。復興が進んだなあと思う人も、全然進んでないじゃないかと思う人もいると思う。

一方、震災の記憶が風化してしまうと危惧する人たちも増えてきた。メディアではさかんに取り上げてるようにも思うが、どうもおざなりというか、はっきりいえば、一定の図式にあてこんで問題視してみせるだけのものや、「今年も桜が満開です」と同じような季節ネタにされちゃってるものが少なくない。ああいうのばかり見せられてるとさすがに飽きるので、ああ「風化」というのはこういうことなのかというのを実感する。伝えないから風化する場合だけではなく、変に伝えすぎるから風化する場合もあるのだ。

よかれと思ってすることが、期待とは逆方向の効果をもってしまうことというのはよくある。よいとされるものと悪いとされるものが、実は同じものの両側面であることは珍しくない。そんなことを思いながら、5年めの今日を過ごしている。

「進まない復興」というのも、似たような側面があるように思う。遅々として進まない現状にいらだつ人、あきらめて他の土地に移っていく人、復興を見ることなく仮設住宅でなくなっていく人など、復興の遅れでつらい思いをしている人たちの問題がさかんに取り上げられる。心痛む話だ。政府や自治体は何をしていると憤る人も多い。

それらを否定したり反論したりするつもりは毛頭ない。

とはいえ逆に、もし復興がものすごいハイペースで行われていたらどうなっていただろう、とも想像してみる。震災直後は津波対策への関心が今とは比べものにならないくらい高かったから、東日本の海岸線は高さ15メートルの防潮堤で覆いつくされていたかもしれない。原発事故による放射性物質飛散の影響が現在ほどよくはわかっていなかったから、被災地にもどった方々が抱く放射能への不安も今よりはるかに強かっただろうし、風評被害もはるかに厳しいものになっていたかもしれない。保存に向けた取り組みが行われている多くの震災遺構も軒並み撤去され、跡形もなくなってしまっていたかもしれない。

何より、震災からの復興が急速に進んでいたら、地域社会の衰退という大きな時代の流れにどう対応していくのかをじっくり考える機会は、ほとんど奪われていただろう。いうまでもなくそれは、震災以前からはっきりと見えていたものだった。もちろん、力のある自治体もあるだろう。復興支援で企業や工場を誘致できた自治体もあるだろう。しかしそれらは多数派ではなく、かつ、持続性のあるものとも限らない。一方、復興や防災対策でインフラに金をかければ、その後の維持管理コストも増えていく。

復興にあたっては、今後この地域の人口が急速に減少していくいことを前提として考えなければならない。元の市街地やコミュニティをそのまま元に戻すだけではおそらくだめで、縮小に耐える「組みなおし」が必要となる。新たな環境になじみにくい高齢者をどうするかといった問題もあるが、一方で長期的に持続可能な地域づくりの構想も必要だ。震災直後の「熱い思い」だけではカバーできない、さまざまな問題がある。

そしてそれらを冷静に考えられるようになるには、一定の期間を必要とする。多くの人を苦しめてきたこの5年は、同時に、この問題に対して冷静に考える余裕をもたらす5年でもあった。もちろん、悪い影響はないに越したことはないし、よい影響はもっと享受したい。それらが同じ「5年」の表と裏である以上、いい方だけとるといったことは難しいが、工夫は必要だしある程度は可能だろう。5年たったからこそできる議論もある。

メディアの皆さんには、ぜひ、多様な情報発信をお願いしたい。「事件は現場で起きている」みたいなセリフがあったかと思うが、その現場が会議室である場合も少なくないだろう。「進まない復興」「苦悩する住民」みたいな絵も必要だろうが、震災を忘れないために必要な情報は、そればかりではないはずだ。

それから、今は「あの震災後」という認識の人が多いだろうが、「次の震災前」でもある。政府には、次のときにはもっとうまくやってほしい。そのために私たちが知りたい、知るべき情報は、東北の被災地にだけあるのではない。

以上、「あの日」から5年経った日のメモ書き。さて会議へ。

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